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左下り観音の無頸(くびなし)観音

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福島県会津美里町の左下り観音には洞窟に安置された首の無い観音像があります。この観音像には不思議な言い伝えがあります。

延長年間(923~929年)頃、越後からの追手から逃れてきた者が、この観音堂に身を潜めていましたが、追手に捉まり岩上で首を切り落とされてしまいました。

しかし、追手はその首を持ち帰り主人の前に差し出すと、その者の首ではなく観音の石頸でした。首を切り落とされた観音は、その後「無頸(くびなし)観音」と言われるようになりました。

私は、この寂しげな雰囲気の観音像が見たく、はるばる和歌山県から福島県を訪れました。

当時、記録的な暖冬で、真冬の会津は雪も降らず、その代わりに雨が降っていました。この雨の中を駅からかなり離れた左下り観音へと歩いていきました。

ずぶ濡れになりながら観音堂にたどり着き、洞窟の観音像を拝ませて頂きました。洞窟はくり抜かれたようなトンネルになっていて、向こうの外から光が差し込んでいて、神秘的な感じがします。

無頸観音に模しているのか、観音像といっしょに小石が並べられています。昔の人の信仰のかたちがうかがえて非常に興味深いです。

切った首が偽物だったように、この暗闇の中に立ち、光の差し込んでいる空間を見ていると、現実か夢なのかわからなくなってきました。そんな神秘的な感覚を体験でき、遠路はるばるきた甲斐がありました。

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