見出し画像

木こりという仕事

シーカヤックガイドとジオガイドと林業の3つの生業のうちの林業についてのお話です。
ガイド中のお客様との雑談の時、「なぜ伊豆で暮らそうと思ったのですか?」と同じくらい、「なんで林業をしようと思ったのですか?」とよく聞かれます。林業ってあまりなじみのない仕事ですよね。私も伊豆へ移り住もうと思う数年前までは自分が木こりになるとは思っていませんでした。

伊豆へ移り住むということを具体的に考えるようになったのは、東日本大震災とその復興ボランティアの体験からでした。

先の震災の時、私は埼玉の電子機器製造の工場にいました。精密機器が多く、製造ラインの点検や調整、また被災した部品メーカーからの供給が滞ったりと、すぐに再開は出来ませんでしたが、幸いなことに大きな被害はなかったです。
仕事がストップしていたこともあり、こんな時期だからこそ、何かできることはないかと考え、宮城県石巻市でカヌーガイドの知り合いが民間ボランティアデンターを運営していたので、復興ボランティアとして、通うことにしました。
復興ボランティアの話は長くなるので、また別の機会に書きますが、そのボラの仲間に木こりの方がいました。大きな柱や流木などの瓦礫を一瞬で切り刻み、持ち運べるサイズに。重機やユニッククレーンを操り、どんどん片付けていく、一人で何人分働いているのかと、そう、「木こりかっこいいい(笑)」と思ってしまったんですね。
復興特需で仕事が忙しく、休みがなくなり、ボラになかなか行けずということに何か納得できなくて、日本中(外国も)から集まったボラ仲間からいろいろな話を聞いたりして、もともと会社勤めは向いていないのをごまかして働いていたことを再認識したりと、そんなことを思い、退職することにしました。
ボラの続きで石巻に住もうかとも思ったのですが、それも一時的な感情かと。復興もある程度進んだら、あとは地元の方が頑張った方が良いように思います。
それじゃあ好きなところで好きな仕事をしようと思い、南伊豆へ移り住むことにしました。
木こりになったのは、そんなかっこいいい木こりに出会ってしまったのと、いつか自分の手でキャンプ場を作りたいという夢を叶えるのに、木こりという仕事は役に立つと思ったからです。
伊豆半島のどこで暮らそうかと考えながら、同時に自然の成り行きで林業をしようと考えていました。

林業をしてから知ったのですが(笑)、伊豆半島という場所は、実はあまり林業には適していません。
山が急峻で、林業に関わる全ての作業が、大変です。そのため、もともとそんなに林業が盛んな場所ではないのです。
戦後、国の拡大造林政策によって、杉の苗が植えられました。
当時はその苗が育ったら、売った金でみんなでハワイへ行こうなんて話していたそうですが、木材の輸入解禁から、国産木材価格は下落の一途。
育成にも手間とお金がかかります。途中で放置してしまった山もあります。

そんな土地なので木こりのなり手も少ないです。
そんな土地なので木こりになりたいと思ったら簡単になれます。森林組合や民間の林業事業体の門を叩けば、よほどのことがない限り雇ってもらえると思います。一人前に育ててくれる県の育成制度もあります。

放置され、忘れられた林も、気が付けば伐期を迎え、伐採しなければならない山もたくさんあります。
今の林業の主な仕事は間伐と皆伐と再造林(植樹)です。

仕事は大変です。3Kの2乗くらいです。
でも楽しい。景色もいい。お弁当も美味しい(笑)
そう思える人にしか出来ない仕事ですね。

よく斜陽産業と言いますが、伊豆の林業は斜陽を通り越して日没後です。
でも、最近はベニヤ板やCLTなど、需要は増えています。日はまた昇ることもあるかもしれません。

民間の林業会社に勤めて5年で独立し、シーカヤックガイドの仕事と共にフリーの木こりとして、主にカヤックの無い時期に森林伐採や、特殊伐採、樹木医の手伝いをしています。呼ばれれば日本全国へ行きますよ(笑)

画像:桧人工林の間伐枝払い作業の様子


この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?