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Ф(¨ )創作にキク絵本( ..)φ⑦『ダニエルのふしぎな絵』

絵を描くのは好きですか? 空想遊びは好きですか?
どちらも好き! という方に、今回の絵本は、特にお薦めかもしれません。第七回は、何を描いても不思議な絵になってしまう少女のお話、『ダニエルのふしぎな絵』をご紹介します♪


ほるぷ出版公式HPより

<基本情報>

タイトル:『ダニエルのふしぎな絵』
作:バーバラ・マクリントック
訳:福本友美子
出版社: ほるぷ出版
※現在、絶版です

<あらすじ>

ダニエルは絵を描くのが好きな女の子。
カメラマンのお父さんと、二人っきりで暮らしています。

ダニエルが描くと、いつもの風景も、通行人も、たちまち不思議な光景に大変身! 帽子をかぶってドレスを着た猫だったり、道に浮かぶ大きな魚だったり……。
そんなダニエルの絵を、お父さんは苦々しく思っている様子。
でも、直そうとしても、全然だめなのです。

ある日、お父さんが病気になって、お金がすっかりなくなってしまいます。
どうにかしないと! と、カメラをかついで街に出たダニエルでしたが、失敗続きで落ち込んでしまいます。
そんな時、優しい女の人が、声をかけてくれます。

ついていくと、なんと、その女の人は、画家でした。
それも、ダニエルが描くような、不思議な絵をたくさん描いていたのです!

<感想>

自分にとって大事なことが、人にわかってもらえない。特に大人たちに。
そんな経験をしたこと、ありませんか?
この物語の主人公ダニエルは、とっても素敵な絵を描く女の子です。
空想の翼を広げて、目に映るものをそのまま描くのではなく、自分というフィルターを通して、一味違った情景を描き出すのです。
でも、カメラマンのお父さんには、その個性が理解できません。

カメラは、目の前にあるものを正確に映し出す道具。
今でこそカメラマンの個性を生かした芸術的な写真作品も評価されていますが、この物語の舞台は、恐らく19世紀頃のこと。目の前の風景を正確に写し取ることが、一番大事な役割だったのでしょう。

ダニエルは、一生懸命に自分の絵を直そうとしますが、うまくいきません。
それだけ彼女の個性が強く、きらめいていたのだということが、読者にはわかりますが、本人にとっては苦しいばかりです。
どうして私はこうなんだろう……。

ある時、病気になったお父さんの代わりにお金を稼ごうと、ダニエルは一大決心をして街に出ます。そのお陰で、とても素敵な出会いに恵まれます。

その出会いが彼女にどんな結末をもたらしてくれたのかは、ぜひご自身の目で確かめていただくとして。

私が創作にキク!と思ったポイント。それは、「他の人と違うところは、あなたの唯一無二な個性である」というメッセージを、この作品が雄弁に物語ってくれているところです。

創作をしていると、自分と他人の作品を比べて、落ち込むことがあると思います。あの人はこんなに上手なのに、自分はどうしてこうなのだろう、とか。人気の作品を真似て、ちょっとこうしてみようか、とか。

技術の面では、他の人を参考にした方がいいことも、あるかもしれません。
でも、作品の本質にあたる部分では、それは必ずしもいいとは言えないと思います。
どんなに真似ても、自分の中にないものは薄っぺらな表現しかできないし、他人が全然やっていないからといって、それが駄目だとも限らない。
むしろそれは、他の人が一切思いつかないような、あなただけの特別なアイデアかもしれないのです。

「好きこそものの上手なれ」「下手の横好き」
日本には相反するこんな言葉がありますが、どちらも行動の原動力は「好き」という気持ちであることがわかります。
これがないと、始めようにも始められない。これがあるから始めたんだ。
そういうものが、創作をする上では絶対に必要な核だと思います。

やっかいなのは、他人の目を気にして、その魂ともいえる核を抜いてしまうよう、悪魔が囁く瞬間があることです。
どうぞ耳を貸さず、己の道を突き進まれますように。
うまくいくとは限らないけれど、それがなかったら、もっとうまくいかないか、うまくいっても虚しいだけでしょう。

自分の「好き」を大事にするための勇気をもらえる、そんな本です。
良かったら、ぜひ読んでみてください!


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