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「自然死」は苦しいものではない…ムダな延命治療にはノーを言いなさい #2 大往生したけりゃ医療とかかわるな

3人に1人はがんで死ぬ時代。多くの人は、がんに対して不安や恐怖を感じているでしょう。そんなあなたに読んでもらいたいのが、50万部突破のベストセラーで、社会現象にもなった『大往生したけりゃ医療とかかわるな』です。昨年、肺がんで亡くなられた著者の中村仁一先生は、「死ぬのはがんに限る」「ただし、治療はせずに」と生前から語っていました。医療と死の常識がガラッと変わる本書、一部を抜粋してご紹介します。

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ご先祖はみんな穏やかに死んでいった

「自然死」は、いわゆる“餓死”ですが、その実体は次のようなものです。

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「飢餓」……脳内にモルヒネ様物質が分泌される

「脱水」……意識レベルが下がる

「酸欠状態」……脳内にモルヒネ様物質が分泌される

「炭酸ガス貯溜」……麻酔作用あり

詳しくは次の章で述べますが、死に際は、何らの医療措置も行わなければ、夢うつつの気持ちのいい、穏やかな状態になるということです。これが、自然のしくみです。自然はそんなに苛酷ではないのです。私たちのご先祖は、みんなこうして無事に死んでいったのです。

ところが、ここ30~40年、死にかけるとすぐに病院へ行くようになるなど、様相が一変しました。病院は、できるだけのことをして延命を図るのが使命です。

しかし「死」を、止めたり、治したりすることはできません。しかるに、治せない「死」に対して、治すためのパターン化した医療措置を行います。

例えば、食べられなくなれば鼻から管を入れたり、胃瘻(お腹に穴を開けて、そこからチューブを通じて水分、栄養を補給する手技)によって栄養を与えたり、脱水なら点滴注射で水分補給を、貧血があれば輸血を、小便が出なければ利尿剤を、血圧が下がれば昇圧剤というようなことです。

これらは、せっかく自然が用意してくれている、ぼんやりとして不安も恐ろしさも寂しさも感じない幸せムードの中で死んでいける過程を、ぶち壊しているのです。

しかし、患者、国民のみならず、医療者にもこの認識が欠けています。

病院で亡くなった遺体は「重い」

2011年2月の日本老年医学会において、食べられなくなった末期の85歳のアルツハイマーの患者に対して、どうするかの問いに解答した1554人のうち、すべてを控えて何もしないはわずか10%、胃瘻が21%、経鼻チューブ(鼻チューブ栄養/鼻から胃まで管を通して水分、栄養を補給する手技)13%、手や足からの点滴注射が51%と半数以上を占めたとのことです。

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そして、この手や足からの点滴注射は「患者にとって医学的に必要」との考えが38%、約4割だったという驚くべき報告をしています。専門である老年科医でさえも、このありさまです。

私たちは枯れかけている植物に肥料をやるでしょうか。万一、肥料を与えたとしても吸収しませんから、植物に害はありません。

ところが、人間の場合は違います。体内に“肥料”を別ルートから無理やり突っ込むわけです。いかに、死にゆく人間に苦痛と負担を強いているか、想像に難くないでしょう。

年配の葬儀社の方に聞くと、「昔は年寄りの納棺は、枯れて亡くなっているので楽だった。しかし、今、病院で亡くなった人の遺体は重くて大変だ」といいます。最後の最後まで、点滴づけ、水づけですから、いわば“溺死”状態。重いのは当然といわなければなりません。

では、年寄りの“枯れる”時期は、正確に判断できるのか、ということになります。枯れかけているように見えても、“肥料”をやったら持ち直すことが間々あるではないか。たしかに、がんと異なり、年寄りの“枯れる”時期の見当は、つけにくいことは事実です。

でも、たくさんの“自然死”の年寄りを見てきますと、何となくわかるように思います。いいかげんな勘というのではありません。今、病院などでは、栄養障害改善のため、医師、看護師、薬剤師、栄養士などの多職種が集まって栄養サポートチームをつくり、患者の栄養改善に努めています。

その際に使用する栄養評価方法のうち、主観的包括的評価法(SGA)で、高度栄養障害の部分を転用させてもらうのです。

具体的には、食が細って、食事量が減り、その結果として体重減少(1カ月に5%以上、3カ月で7.5%以上、6カ月で10%以上)があり、歩いていた状態が歩けなくなったり、立つことができた状態が立てなくなったり、ちゃんと坐れていた状態が身体が傾いてしまうというように、日常の生活動作に障害が現れてくることなどです。

これは、血液検査データなどから想定する客観的データ評価法(ODA)に比べ、より簡便でどこでも行えるという利点があります

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大往生したけりゃ医療とかかわるな 中村仁一

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