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脳科学でわかった「涙を流す」とストレスはスーッと消えていく #3 悲しむ力

不登校生・中退生のための私塾、「リバースアカデミー師友塾」を主宰する大越俊夫さん。著書『悲しむ力 深く悲しまない人間は幸せになれない』は、現代人に欠けている「悲しむ力」と「レジリアンス(逆境力)」の重要性について論じた一冊です。子育てはもちろん、仕事や人間関係に悩む大人たちにも役立つであろう本書から、読みどころを抜粋します。

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泣くのが下手になった日本人


民俗学者・柳田国男の説によると、江戸から明治に移るにつれ、日本人はだんだん以前より泣かなくなっていったそうです。教育が普及して言葉で感情を伝えるようになり、「涙という“身体言語”の出番が減った」というのですね。

そこで、というわけでもないでしょうが、最近、「悲しみ」につきものの「涙」を見直す「涙活」という運動が広がっているらしいですね。寺井広樹という若い人が「涙活プロデューサー」という肩書きで主宰し、全国的なブームになっているんだとか……。知っておられましたか?
 
涙を流して泣くことは「趣味」や「笑い」よりも(遺伝子学者の村上和雄先生は「笑いの効用」を説かれていますが)、心身ともにストレスを解消するらしいのです。
 
以下、寺井氏の著書『泣く技術』(PHP文庫)から、少しおすそ分けすると……。
 
人間は、「一生のうちに四億二千回泣いている」そうです。「涙」には目にゴミが入ったり、玉ネギを切ったときに流れる「反射の涙」と、脳がストレスを感じたときに流す「情動の涙」の二種類があるといいます。
 
「情動の涙」は人間特有のもので、ウミガメが産卵のときに流す涙は、あれは飲み込んだ海水に含まれる塩分を体外に排出しているだけのことなのだそうです。
 
人間が涙を流すのは、一歳を過ぎてかららしいですね。そのあとに流す涙に、悔し涙や悲しみの涙だとかがあり、そして大人になって流すのが「感動の涙」なんですって。
 
言われてみれば納得ですよね。で、この「感動の涙」がストレス解消に、もっともいいらしいのです。
 
「ストレス解消」というと、あの『脳からストレスを消す技術』(サンマーク文庫)で話題になっている有田秀穂先生(東邦大医学部教授)にご登場願うしかないでしょう。
 
有田先生いわく。「ストレスというものに対して、私たちはいままで重大な思い違いをしていました」と切り出して、「私たちはストレスに勝とうと思ってはいけません。人間は、ストレスには勝てないようにできているのです」とぴしゃりです。
 
なぜなら、「ストレスは決してなくならない」からだそうです。なるほどこれも言われてみればまったくそのとおりですね。

ストレスは涙で消すことができる


では、どうすればいいのだ、の問いに有田先生、「ストレスを〈消せば〉いい」と説くのです。ストレスはなくならないけれど、ストレスから受ける苦しみはいくらでも消せるからだということです。これも“なるほど”です。

ストレスに二種類あるっていうの、ご存じでしたか。「痛い」「寒い」という「身体的ストレス」と、「辛い」「悲しい」といった「精神的ストレス」の二つです。
 
この「心のストレス」がどのように生じ、どのようにしたら治るのかという研究が、じつはつい最近までされていなかったらしいのです。だから、私たちが「ストレスには二種類ある」というのも知らないわけですよね。
 
で、最近、「脳科学はその精神的ストレスの正体をついに突き止めた」のだそうです。
 
その結果、「心のストレスの正体は、〈脳が神経伝達物質を通して感じるストレス〉」で、だから「私はこのことをみなさんに知っていただくために、心のストレスのことを〈脳ストレス〉と呼んでいます」と有田先生は力説されているのです。
 
で、先生は、「脳ストレスをコントロールするための機能は二つあります。一つはストレスを受け流す機能です。これは『セロトニン神経』を活性化させることで高まります。もう一つは、溜まってしまったストレスを一気に解消する機能です。これは『涙』することでスイッチが入ります」とおっしゃいます。
 
つまり、「涙を流せ」ば、ストレスが消せるのだとおっしゃるのです。
 
なるほど、この点で有田先生と先ほどの「涙活」の寺井氏が通じ、「涙活」運動の顧問に有田先生がなっておられるのですね。「涙活」運動、これは全国だけでなく全世界にひろがるかもしれません。

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悲しむ力 深く悲しまない人間は幸せになれない

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