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何度も聴きたいロック名盤をご紹介 ⑲

アーティスト:ノラ・ジョーンズ
名盤:カム アウェイ ウィズ ミー

スタイルカウンシルのCafe Bleuを初めて聞いたときは、「このアルバムはロックか?」と戸惑いましたが、今ではロックの名盤として君臨しています。
このアルバムも同様に、純粋にロックと言えるアルバムではないですが、とにかく聴いてほしい、有無を言わせない名盤です。
ノラ・ジョーンズはアメリカ合衆国のピアノ弾き語りジャズ歌手&ジャズ・ピアニスト、女優です。
でも純粋にジャズアーティストかと言われると、2枚目のアルバム以降の作風からもそうではないと思います。
父はインドで最も有名な音楽家でビートルズにも影響を与えたシタール奏者ラヴィ・シャンカルです。
2002年、22歳でデビューアルバム "Come Away With Me" をジャズの名門レーベルであるブルーノートからリリースしました。
このアルバムはありとあらゆる評論家から絶賛されました。一方「これはジャズのレコードとは言えない」と主張する人も一部にいました。
確かにその通り。しかし、そういうジャンル分けにこだわる必要はあるのでしょうか?
僕がここでとりあげるのも、ロックアルバムではないが名盤中の名盤と言えるからで、ぜひ聞いてほしい名曲がズラリ並んでいます。
ジャズのスタイルを取りながら、ソウル、カントリー、フォーク、ポップスなど、アメリカのポピュラー音楽の要素を採り入れた
デビュー・アルバム"Come away with me"は全世界で2300万枚を売り上げ
グラミー賞では主要3部門を含めノミネート部門すべてで受賞し、本人としては5冠、作品としては8冠を獲得しました。


1."Don't Know Why"
21世紀最初の名曲です。
グラミー賞最優秀歌曲賞、最優秀レコード賞受賞を受賞しました。
ソウル、ジャズ、カントリーの各要素を絶妙にブレンドし、落ち着いた雰囲気漂うこの曲は、
温かさと親しみやすさを感じさせる彼女の独特のヴォーカル・スタイルの典型的な縮図でもある。
余談ですがこの曲はスモーキー・ロビンソンが歌っていたけれど、
スモーキーは"Why"を「ホワイ」と発音していました。
当たり前じゃないか、と言われそうですが、でも実際には
"wh"は普通は「ワ」で発音されるそうで、ノラも「ワイ」と言っています。
ともあれこの曲は、最初の♪ あ~ぃ と一言入るだけでもう
彼女が他のヴォーカリストとは違うことがすぐに伝わってきます。
新しいのにスタンダード、まさに名曲中の名曲。

2."Seven Years"
ノラ・ジョーンズの歌い方は、歌と喋りの中間的な感覚に近いですね。
旋律は確かにあるんだけど、歌を通り越して語りかけてくる。
それは身近さにも通じていて親しみが持てるのでしょう。
優しいアコースティック・ギターが紡ぎ出す繊細な装飾音と、ブルージーなスライド・ギター・ソロがアクセントになっています。
そこには感情をありのままにぶつけるという、ノラ・ジョーンズの歌に対するアプローチの定義が、ひとつの極致として明確に示されています。

3."Cold Cold Heart"
この曲はジャズといっていいのでしょうね。
彼女にとってこの辺りがメインのフィールドだったのかな。
彼女は1979年生まれ、この時まだ22、3歳。
この落ち着きは何だ、と思うけど、そういう部分も
持って生まれた天性のものなのでしょうね。

4."Feelin' The Same Way"
この曲にはカントリーっぽさを感じます。
Bメロの切々と流れていく歌メロが胸にじんとしみますね。
静かなアルバムの中では動きがある曲です。
ところで彼女は、同じメロディーの部分が出てきたところで
節を少し変えて歌うのが得意で、センスがよくて、
いつ聴いても、その変わる部分がくる度にわくわくしてきます。

5."Come Away With Me"
この表題曲こそが、ジャズともソウルともとれる、それでいて
中途半端ではない、完全にひとつの世界を築き上げている。
まさに彼女のナチュラルさが凝縮された曲。
カントリー・テイストを感じさせるバラードで、その揺らめく美しさはいつまでも耳に残る。

6."Shoot The Moon"
彼女はピアノもうまいのだと思う。
ピアノは弾けないので、ここがどうとは言えないんだけど、
ギターでいうオブリガート、ピアノでもいうのか、の入れ方、
フレーズとタイミングの良さは気持ちがひきつけられます。
夜空を見上げてさらっと歌う感覚がどこまでも自然体です。

7."Turn Me On"
私のスイッチを入れて、というような意味なんですが、ロマンティックでちょっと色っぽい歌詞です。
それを彼女の声で歌われると、聴いている人のスイッチが入ってしまう。

8."Lonestar"
ウッドベースの音が、いい味出してます。
もちろん、ノラのスモーキー・ボイスも最高です。

9."I've Got To See You Again"
ほの暗くて切ない、これはいかにも夜の酒場というイメージ。
つまり、ニューオーリンズ的な響きを強く感じます。

10."Painter Song"
途中のメロディが少し無理しているのが面白く、
だから気持ちが伝わってくる。
アコーディオンの優しい流れ、そうですね、この中では
最も芸術という言葉を意識させる響きの曲ですね。

11."One Flight Down"
切なさ満点のこの曲はとってもとっても胸にしみてきます。
そもそもメロディーが素晴らしい。
”Now you know, now you know"という部分の歌い方、
あまりにも切なくて、こちらの心までもが壊されてしまう。
でも、歌メロの進み方が、どこかで聴いたことがあるような、
懐かしさに通じるところもさらに気持ちが動かされます。

12."Nightingale"
小さな鳥の曲はなぜかアコースティックギターがよく似合う。
途中からピアノが装飾的に入ってきて全体が盛り上がるのは、
小さいながらも頑張っている渡り鳥の生き様を表しているかのよう。
"Was your journey far too long?"と囁くように歌う部分には
彼女の優しさ、自然への尊敬の念を感じずにはいられません。

13."The Long Day Is Over"
ゆらゆらと揺れるエレクトリックギターの音が印象的。
いろいろあった1日も終わる、その人なりの1日がある。
ワルツにのせて1日を振り返ってみる、そんな日があってもいい。

14."The Nearness Of You"
最後はアメリカン・スタンダード。
ピアノからこぼれる音にのって静かに切々と歌う。
ここまで聴いてきて、このアルバムは秋に似合いますね。
小春日和の昼間に森の中にいる感じかな。

以上が今回のアルバム評となります。ロック入門の一助になればと思います。ご参考になればうれしいです。

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