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#7 北欧の高齢者施設とヘルスケアアート~第2回北欧のヘルスケアアート講座での学び・前編~

高齢者施設って、どんなイメージがありますか?
先日、なごやヘルスケア・アート主催の第2回北欧のヘルスケアアート公開講座に参加しました。tonaの河東さんより、北欧と日本の高齢者施設でのヘルスケアアートについて紹介され、多くの学びがありました。今回は、前編として、空間が人をケアし、「元気でいられる」北欧の高齢者施設についてご紹介します!

tonaの河東さんのお話~北欧の高齢者施設とヘルスケアアート~

デザイン事務所tonaで活躍されている、アーティストの河東さんより、
実際に視察されたデンマーク、フィンランドの医療福祉におけるヘルスケアアートのご紹介がありました。

河東 梨香さん(tona代表 / デザイナー / 医療福祉ビジュアルディレクター)
デンマーク人と日本人のご両親を持つ河東さんは、幼少期を北欧・旧ソ連・日本・アメリカなど多様な国で過ごされました。現在は、デザイン事務所tonaで、日本の医療現場でヘルスケアアートに積極的に取り組まれています。講演では、柔らかい口調が印象的な素敵な方でした。
tonaのホームページでは、見ているだけ癒される家具やファブリックのデザインがたくさん載っています。

https://tona.rikakawato.com/

その中で、印象に残ったことは、
施設では、入居者さんがケアする人と接していない時間が圧倒的に長い。
そんな中、ケアを受けていない時間をケアするのが「空間(色、デザイン、家具など)」であるという言葉でした。


日本の高齢者施設は、機能的だけれど、どこか無機質。
まるで、時が止まったような感じがある、
そして、入居者の方にとって、これまでの生活空間と大きく違う。

私は、在宅医として施設の回診をする機会がありますが、確かに、その通りだな、と感じます。入居して間もなく、「家に帰りたい」と繰り返す患者さんの声を聞くこともあります。

これまでは、それは仕方がないことと思っていましたが、
北欧では、医療福祉の現場でも、暮らしの中のヒュッゲを大事にすることで、入居者の皆さんが元気になると聞き、驚きました。

ヒュッゲとヘルスケアアートについては、下記の記事に詳しく書いていますので、ご興味のある方はぜひご覧ください。

北欧の福祉施設でのヒュゲリ(Hyggelig)な空間作り

今回の講座で初めて知ったこと、それは、ヒュッゲな空間を『ヒュゲリ(Hyggelig)』と呼んでいるということです。
何度も言いたくなるような、可愛い響きの言葉ですよね。

今回の講座では、そんな『ヒュゲリ』を明日から実践できる工夫をたくさん学びました。そのうちのいくつかをご紹介します。

北欧では、施設の各部屋は一定の広さとベランダが義務づけされているのだそうです。

建物の外には森があり、小道には昔ながらの置物があり、そこでリハビリができるそうです(森でリハビリとは、北欧らしいですね)。

入居されていた人たちの色々な家具が廊下やラウンジに置いてある施設もあるそうです。

住み慣れた我が家のように素敵なリビング、キッチン、ベッドルームにたたずんでいる車椅子のご婦人の写真が紹介されました。
実は、河東さんのおばあさまが実際に入居されていたお部屋の様子でした。
おばあさまは、施設に入った後、他の入居者さんたちとの交流が楽しく、孫である河東さんになかなか手紙を書けなくなったそうです。
施設に入ることでポジティブな効果がある、素敵なエピソードだなと感じました。

他にも、新しい服、新しい髪型をして過ごそうと思うようになったという方もいるとのことです。
「それぞれの心地よさ」が大事することで、体も元気になるんだなと感じました。

実は、在宅医療の現場でも、同じようなことを経験します。

入院で病気はよくなったけど、食欲がでなくて、活気がでなかった方が、家に帰って元気になる、ということもめずらしくないんです。

病気や障害があると、福祉用具があったり、点滴や酸素などの医療機器につながれることで、自尊心が下がり、生きることに後ろ向きになってしまう場合もあります。

北欧の高齢者施設では、たとえ、福祉用具があっても、自分がこれまで生活してきた空間と同じようなインテリアをリビングやベランダに取り入れることで、心地よさ、その人らしさを取り入れています。

在宅医療で、家で過ごすことで元気になる人を目の当たりにしているからこそ、慣れ親しんだ生活空間の『ケアする力』は、本当にすごいと感じました。

今日はここまで。後編では、日本の福祉現場で実践されているヘルスケアアートについてご紹介します。
それではまた、次のnoteでお会いしましょう♪

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