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会計ソフトを入れ替えるのに、社内合意を甘く見てたら後から痛い目を見た話(1)

こんにちは、jojo太郎です。年商300億円規模の未上場企業で、経理財務の責任者をしています。今日は、会計ソフトをリプレースするプロジェクトを行う中で、社内のコンセンサスをとることを甘くみてたら、えらい目にあった話です。

2023年春から、会計ソフトを色々調べて、ベンダーさんと会ってました。1年後のリプレースを見据えて。なぜなら使っている会計ソフト「obic7」の5年契約が2024年末にやっと切れるからです。
「やっと切れる」と書きました。そう、私はずっとこのobic7の契約が終わることを待ってたんです。なぜかって? 一言で言うと、それは、使いづらい&時代遅れだからです。

当社ではobic7をERPとして、会計、人事、給与、経費精算、購買(稟議)申請、身上申請、汎用ワークフローにおいて使用しています。

2019年に、当社としては異例の費用をかけて高機能なERPと謳われているobic7を導入しました。

しかし、実際に入れてみたら、とにかくUIが悪くて、どう操作すればいいのか直感的に分かりにくい。経費精算や、購買申請では、「なんでこんなところで別画面がポップアップするの?」「完了画面が出ないから、今の申請がきちんと完了したのか分からない」「過去の稟議が検索できない、見つからない」など信じられない使いづらさ。

高機能なのは、「なんでも御社に合わせてカスタムできますよ」という点。複雑な原価計算などにも対応できるそうです。
しかし、当社はサービス業。メーカーのような複雑な原価計算なんて必要ありません。そんな当社だけのカスタムなんてせずに、一般的な仕様で十分なんです。そう、obic7の強みは、当社には合わなかったんです。

※不要な機能があるからムダだった、というレベルの話しではなく、むしろこの「何でもカスタムできてしまう」ことが事態を悪化させていました。本来であれば複雑すぎるから考え直さないといけない業務フローでもobic7は対応できてしまうんです。「御社専用のカスタム」という名の魔改造によって。それにより、本来シンプルにすべき業務フローはそのままになり、魔改造obic7がなんとかしてしまう。その結果、業務マニュアルは全て自分たちで作成。法改正の度にカスタムされたシステムのメンテナンスはパッチ対応、その都度マニュアルの修正、など各種コストは高くつくことになります。

一方、obic7の弱みがもはや看過できないレベルになってきました。それは、クラウド型(SaaS型)ソフトのような機能が無いってことです。obic7はクラウドです、と謳ってはいるものの、実際にはベンダーのクラウド環境をクライアントに提供してはいますが、ソフトの挙動は買い切り型のオンプレミスソフトと同じです。SaaS型のソフトのようなAPI連携やAI-OCR機能はありません。

※API連携とは APIを利用してアプリケーション間やシステム間でデータや機能を連携し、利用できる機能を拡張すること。会計ソフトと銀行口座、クレジットカード決済のデータ連携&自動仕訳、各種ソフト同士のマスタ自動連携などがある。

※AI-OCR機能とは:画像データからテキスト部分を認識し、文字データに変換する光学文字認識機能に、AIの特徴であるディープラーニング(深層学習)により文字の補正結果を学習する機能を備えたもの。領収書や請求書の画像を読み込むと必要なテキスト部分を文字データに変換される。

このAPI連携とAI-OCR機能が、もの凄い進歩をしており、経理の仕事は様変わりしました。以前は仕訳を切る(ソフトに入力する)のが経理の仕事でしたが、今はソフトが自動であげてきた仕訳を確認し承認するのが経理の仕事になっています。

それで・・・obic7はこのAPI連携とAI-OCR機能が無い!!

高機能ですよ、何でも御社に合わせてカスタムできますよ、
と謳っているうちに、SaaS化の波に乗り遅れてしまった、
と思います。他がもの凄く進化してしまったため、機能としては劣っている感が否めません。

で、2年前(2022年春)に経理財務に来た私は、早くこの使いづらくて時代遅れのobic7をやめたかった。でも、非常に高い初期導入費用をかけていたし、5年契約を結んでいたから、5年を待たずに辞めましょう、とはとても言えなかった。だからこの5年契約が終わったら絶対リプレースしてやるぞ、とずっと待ってたんですね、その時がくるのを。

しかも、導入時、グループ会社は14社あったんですが、そのうちobic7を入れたのは4社のみ。残りの10社は弥生会計を入れていました。なぜかって?obic7は高いから、メインの4社だけにして、他は安い弥生会計にすることで、導入費用を下げたかったようです。当時のリプレースプロジェクトの打ち合わせ議事録を見ると。
会計的にはグループ法人によって会計ソフトが異なると、会社間の取引が自動連携しないのでやっかいなんですよ。それだけじゃなくてobic7と弥生会計ではデータの持ち方や持てるデータの数も違う(例:obic7では取引先コードが設定できるが、弥生会計では設定できない)んです。


更にやっかいなのが、人事給与がおかしな使い方をしてるってことです。先述した魔改造ですね。
・人事と給与で、部門マスタが異なる。※人事配置図上はエリアマネージャーは〇〇エリアに属しているが、給与上はエリアという部門は無いため、異なる部門マスタを使用している。(←超おかしい運用。部門を揃えればいいのに)
・人事と給与で、人事給与のためだけの架空の会社を作り、全14社の従業員はその1社に所属している設定になっている。※14社の中で異動する際、出向者が多いため、その社員データの書き換えが大変だから、という理由で架空の会社に全社員を所属させ1DBで社員情報を一元管理し、会社内の部署異動のように出向を処理している。(←超おかしい運用。出向状態を減らすように異動方針と組織形態の方針を見直すべき。ソフトで何とかして対応する話しではない。これにより給与が確定しても会計にはデータが流れていかない。会計は架空の会社なんて設定しないから。)
ここら辺が、かなり悪手ですね。


上記のような状態だったので、
obic7からのリプレースは、絶対に行う、というのは心に決めてました。
その上で、リプレースするソフトの要件は、
・クラウド型(SaaS型)であること
・全14社で使用可能な金額であること
の2つでした。

それを念頭に置いて下記のベンダーと会いました。
freee「freee会計」
Money Forward「Money Forward クラウド会計」
ミロク情報サービス「Galileopt DX」
PCA「PCAクラウド」
OBC「勘定奉行」

それで、選んだのがOBC社の「勘定奉行」です。
もうね、ダントツで良かったです。

まず、freeeとMoney Forwardは当社の規模には合いませんでした。
当社の仕訳数だと挙動が重くなるかも、とベンダーに言われたため、除外しました。freeeの会計は複式簿記を知らない人用に作られているため、複式簿記に慣れた人だと慣れるまでにしんどそうでした。
次に、ミロク情報サービスは、今のobic7とほぼ同じ。クラウド型と言いながらSaaSではありません。
PCAはSaaS型ですが、機能としては中途半端な印象です。
OBC社の「勘定奉行」はシェアが高く、それゆえにAPI連携する他社サービスが圧倒的に多いです。法改正時の対応が最も早い、カスタマーサポートが充実している点も魅力でした。

課題抽出と、ソフト選定までは順調にいきました。
しかし、ここからが思わぬ苦労をすることになります。
(つづく)







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