カフェバーにて
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週末の午後11時・・・
久しぶりの一人飲み・・・
居酒屋、スナックと旅を続け、最後に辿り着いたのは馴染みのカフェバーであった。
最後に流れ着くのはココと なんとなく決めている俺・・・
「〇☓銀座通り」と名が付いた地方都市の寂れた通りに面していた。
「ギギギギ~~!!」
年季の入ったドアを開けると 右に10人程かけられる長いカウンター、左に4人掛けのテーブル席が2つ・・・、そんな小さな店である。
「あらっ いらっしゃ~い!!」
こちらも年季の入った(!?)ママが笑顔で迎えてくれた。
ママ 「ケンさん おひとり??」
俺 「うん・・・ 最近 一人飲みが多くて・・・ 俺 もともと友達がいないから・・・ ヘヘヘヘヘ・・・」
ママ 「ふっ そんなこと言って ひとりなのは 他の人に言えないいい店に行って来たからじゃないんですか??」
俺 「そっ そんな店が有ったら教えてよ!! 毎日通っちゃうから・・・ 」
この日は時間も遅いせいか テーブル席に一組のサラリーマンと カウンターの奥に エグザイル風ファッションに身を固めた40過ぎの2人組が座っているだけであった。
もともとサラリーマンの客が多いこの店・・・
エグザイル風味の鎖をジャラジャラ鳴らす方々はめずらしい・・・!?
ママとの世間話をしながらも その2人の話に聞き耳を立てる俺なのであった。
「そういえば お前 最近 変わったこと有った??」
少し年上の男が言った。
「変わったことスか?? え~~と そういえば 銀行とケンカをしたことスかね!! ブヒャヒャヒャヒャ・・・」
後輩らしき男が答えた。
先輩 「銀行とケンカ??? お前 一体何した??? また支払いをブッチ切ったのか??」
(んっ 今 またと言ったな・・・??? 前にもブッチ切ったんだ???)
後輩 「やだな 先輩 そう何回もブッチ切る訳無いじゃないスか・・・ それに ブッチ切ったのは銀行じゃなくてサラ金!! もう10年以上前ですよ!! ブラックリストからもとっくに外れてますよ!! ギャハハハハハ・・・」
(凄い話だな!! そんな大声でする話じゃないうだろ!? って言うか もしかしてそれ武勇伝だと思ってるの???)
先輩 「じゃ何でケンカしたの??」
後輩 「実は・・・」
その後 彼の口から出た話とは・・・
俺としては 結構 衝撃的な話だったのであった。
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カフェバーで「銀行とケンカした!!」と得意気に話すエグザイルおやじ!!
カウンターの端でママと話しながら聞き耳を立てていた俺なのであった。
先輩 「銀行とケンカしたって どうしたんだよ!!」
後輩 「俺 いつまでもアパート暮らしでも仕方ないって ときどき言ってましたよね!? 仕事もまあまあ上手く行ってるし それで そろそろ家でも買おうかなと思ってたんスよ!!」
(この後輩・・・、自分で何か仕事をやっているらしい・・・)
先輩 「ああ・・・ 聞いた気がする・・・ そして 近所で中古住宅がナンタラ カンタラとも言ってたな!!」
後輩 「それなんですが 土地が85坪で建物が34坪・・・、築年数も10年経っていない物件を見つけたんスよ!!」
先輩 「フ~~ン・・・ お前のアパートの近くだと 便利なところだから結構高いだろ!??」
後輩 「それがドッコイ 1400万なんですよ!!なんでも すぐに金が欲しいとか・・・」
先輩 「えっ!? それ安いな!! ほぼ土地代だけじゃないか!???」
後輩 「そうなんスよ! 建物もどこかの一流住宅メーカーだし しばらくメンテの心配は無いし・・・ まあ もしメンテが必要でも仕事柄 安く出来ちゃいますけどね!! ギャハハハハハ・・・」
(この男の仕事も住宅関係なのか???)
先輩 「じゃ 決めたのか???」
後輩 「ハイ! それで不動産屋に話して いざ契約ってところまで行ったんスよ!!」
先輩 「はァ~ お前 よく金が有ったな!!」
後輩 「先輩 何言ってるんスか!! 俺が金を持ってる訳無いじゃないスか!! 借金ですよ! 全部借金!! 毎月の家賃で家が買えちゃう計算ですよ!! ブヒョヒョヒョヒョ・・・」
先輩 「そこで銀行登場なのか・・・ 」
後輩 「そうそう・・・ 仕事で関係が有る〇☓信用組合に相談したんスよ! なんだかんだで もう15年以上の付き合いですから・・・ エッヘン!!」
(えっ!? 信用組合??? それって銀行じゃないだろ!! まあ どうでもいいけど・・・)
後輩 「家を買うから金を貸してくれって!! 保証人は嫁さんで!! 青色申告書の写しと嫁さんの源泉徴収票を付けて出したんスよ!!」
先輩 「そうか 嫁さんは事務で正社員だもんな!! それだったら普通 審査に通るだろ!」
後輩 「先輩もそう思うでしょ!? それがダメだったんスよ!!」
先輩 「ハア~~? まだブラックリストに載ってたのか??」
後輩 「俺も そう思って 聞いたんスけど・・・ ブラックリスト??? 何かしたんですか??って言われちゃって・・・」
先輩 「えっ!?ブラックリストが原因じゃなかったのか???」
後輩 「そうなんスよ! 『〇☓さんは まだ信用が・・・』って言われてしまって・・・」
先輩 「スゲェな お前!! まったく信用されて無いんだな! ギャハハハハハハ・・・」
後輩 「15年以上 銀行と付き合ってて 嫁さんを保証人にしても1400万円も借りられなかったんですよ!! 最後は怒鳴り合いですよ!!『ふざけんな!! 俺達夫婦は1400万円以下なのか!!』って・・・」
先輩 「それで銀行とケンカか・・・!??」
後輩 「ハイ! かなりエキサイトしちゃって 周りのお客さんもみんなこっちを見てましたよ!! ブヒャヒャヒャヒャ・・・」
(またそれを武勇伝だと思ってるの??? っていうか 信用組合と銀行は違うって!!監督官庁がちがうんだから・・・)
その後・・・ その話も終わり、勘定を済ませ 出て行った2人組だった。
(テーブルのサラリーマン達は 終電に乗るためか とっくにいなくなっていた)
店内にはママと俺だけが残ったのである。
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しばらく黙って飲んでいた2人・・・
そして ポツリポツリと話を始めたのだった。
俺 「今の2人は良く来るの???」
ママ 「今日が初めてですね!!」
俺 「そうなんだ・・・ この店には珍しいお客さんだね!」
ママ 「ケンさんも そう思う??? この辺はサラリーマンさんが多いですもんね!! 」
俺 「そうだね!! あんなに大声で自分の恥を晒す人は普通いないよね!!」
ママ 「そっ そうかもしれませんね!!」
俺 「『金融機関で一番審査が甘い信用組合で金を貸してくれない』って 俺だったら死んでも言えないけどね!!」
ママ 「そういえば そうかも・・・!???」
俺 「頭金も入れないで 全額借金ていうのがダメってことが分かって無いんだね!」
ママ 「そういうことなんですか??」
俺 「当たり前じゃない! 家を買うって人生の一大イベントでしょ!! 何年か考えて その間にお金も貯めるのが普通ですよ!」
ママ 「じゃ 『行き当たりバッタリでお金を借りようとしてる』って思われたってこと???」
俺 「たぶんね!! そう言う計画性のない人を金融機関は嫌うよね!!」
ママ 「あれっ!? ケンさんって金融関係でしたっけ!???」
俺 「違うよ!! 前に 洗濯屋って言ったじゃない!! 洗濯屋のケンちゃんって呼ばれてるって・・・ ぶひょ!」
ママ 「また 冗談ばかり!! その話は聞きましたけど 本当は何か会社をしてるって言ってませんでしたっけ!?」
俺 「そうだっけ??? ブヒョヒョヒョ・・・」
ママ 「そうそう・・ 何かの部品を作っている会社とか・・・」
俺 「良く覚えているね!! さすがベテランママさんだ!!
ママ 「お客さんの話を覚えるのが私の仕事なんですよ!! ホホホホホ・・・」
俺 「親父が職人気質で銀行嫌いだったから 会社に入ったらすぐに俺が銀行担当になったんだよ!! バブル真っ盛りの頃 20代半ばの若造が銀行員を相手にしてたんだから そりゃ必死だったよ!!」
ママ 「バブルの頃の銀行ってどんなでした??」
俺 「そうだね! いつ行っても店内は不動産屋だらけだったよ!! 世の中みんな土地転がしに夢中だったから・・・」
ママ 「じゃ ケンさんも 転がしたの??」
俺 「転がさなかったよ! 転がしてたら 今頃会社なんて有るはずないし・・・」
ママ 「そっ そうなんですか?? 」
俺 「うん あの頃 景気が良かった人ほど その後 みんな消えちゃったよ!! っていうか さっきの2人組だけど・・・」
ママ 「あらら・・・ 話がだいぶ脱線しちゃいましたね!! ホホホホホ・・・」
俺 「さっき 後輩らしき人が『俺達夫婦は1400万円以下なのか?』って言ってたじゃない!? あれって違うから・・・」
ママ 「間違いってことですか???」
俺 「うん 完全な勘違い!! だって借金で不動産を買う時は 金融機関は真っ先にその不動産を担保に入れるからね! 正確には1400万円から物件を叩き売った残りが あの夫婦の信用ということになるんだよね!!」
1400万円-中古住宅を叩き売った金額(優良物件なので たぶん1200万円ぐらい???)=200万
ママ 「それって・・・」
俺 「そう! あの夫婦は〇☓信用組合から200万円以下の信用だって判断されたってことだよ!! っていうか 絶対に金を貸したくない人物だとね!」
ママ 「二人で200万円以下って・・・」
俺 「一番甘めの審査と言われる信用組合からね!」
ママ 「・・・・・・・」
重苦しい空気が漂い しばらく次の話題に移る事が出来なかった2人だったのであった。
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