#2 スキークラウンホルダーインタビュー 学生6年間でクラウンまで取得した猛者は選手を一旦休んで欧州スキーデビュー!【嶋田遼さん】
【今回のクラウンホルダーは…】
「やっぱり技術だけをやっていても飽きてくるので、積極的に飯とか風呂とか、スキー場の宿で何するかとかにも楽しもうと思ってるんです。あとスキー自体も、僕は基礎上がりですけど、ポールのトレーニング1週間入ってみたりとか、あとテレマークとかも自分もやってて、そんな感じでなるべく基礎スキーに執着しないように自分で意識してやってるんですよね。スキーが面白くなくなっちゃうともったいないなと思ってて。」(一部本文抜粋)
そう語る嶋田さんのスキーの歴史そしてスキー観に迫ります!
【スキークラウンホルダーにこんなこと聞きました!】
①クラウン合格証(写真)を見せてください
②いまの年齢を教えてください。
30歳
③お住まいはどちらですか?
現在はパリ、去年まで大阪でした。
④初めてスキーしたのはいつですか?
→3歳
それ以降は高校まで年に一回、親がスキーに連れてってくれるかどうかというくらいでした。それ以外だと中学のスキー合宿で一回いったかなくらいですね。
Q:他に何かスポーツやられていたんですか?
→小6までずっと水泳をやっていましたね。あとは柔道もしていました。中学は野球部に入ってて、高校は部活に入りませんでしたが、地元で水泳をまたやってました。
Q:スキーよりも他のスポーツの方が好きだったんですか?
→たまに連れて行ってもらえるスキーはめちゃくちゃ好きでした。でも住んでいるのも大阪で、毎日滑れるような環境ではなかったので、あくまでファミリーレジャーで親しむ程度でした。それに土日が部活だったりで時間が埋まってたんですよね。それから子供の頃って親に連れてってもらわないとスキーって行けないじゃないですか、子供だけで行くのは難しいので。それでスキーから離れていった感じですね。
⑤スキーを本格的に始めたのはいつですか?
→大学1年(2010年)
北海道大学で基礎スキー部に入ってから本格的に始めましたね。
Q:入学時点では周りの同級生と比べてレベル的にはどうでしたか?
→出発地点という意味では全然低かったですね。大学入学時点ではㇵの字を卒業したかなってレベルだったので。スキー初心者よりは上手かったですが、先輩には敵わない感じでした。
Q:そもそもなぜ北大のスキーに入られたのですか?
→少し話が遡るんですが、大学受験の時に、前期の試験で行きたい大学に落ちて、その時に学校の先生と話をしたら「お前の今の学力だと北大とかが丁度いいぞ」と言われたんですね。で、その時に一瞬で「北海道行ったら一人暮らしできる」とか「知らない土地での生活楽しそう」それから「スキーがめちゃくちゃ出来るぞ」とか色んなことを考えて、それで「北大」に行こうと決めたんです。だから合格して入学した時点でスキー部に入るのは決めてましたね。
Q:そこから最初の年の岩岳の学生スキーの新人戦で16位、あっという間の上達だったんですね?
→いや、新人戦なので、みんな初心者から始めた人ばっかりなんですよね。だからこの時点で人より凄くスキーが上手かったとかセンスが良かったとか、そういうことではないですね。
⑥ -1 2級とったのはいつですか?/どこで取りましたか?
-2 何回目のチャレンジですか?
→ 2011年1月。小樽、スノークルーズオーンズ。1回
Q:1シーズン目に2級まで取られていますが、どんな風にスキーに取り組まれていたんですか?
→自分がスキーが上手くなった要因は大きく2つあったのかなと思っています。一つは、自分が所属している同期の女の子で凄く上手い子がいたんですけど、その子に自分から「教えてや」とお願いして1年間みっちり教えてもらったこと。これがまず大きいですね。2つ目は滑走日数ですね。11月1日にシーズンインして年内に40日間くらい滑れたことで一気に上手くなったんだと思います。
⑦ー1 1級とったのはいつですか?/どこで取りましたか?
ー2 何回目のチャレンジですか?
→1級2011年2月。小樽、スノークルーズオーンズ。1回
⑧ー1 テクニカルとったのはいつですか?/どこで取りましたか?
ー2 何回目のチャレンジですか?
→2013年3月。小樽、スノーリゾートキロロ。2回目。
⑨ー1 クラウンとったのはいつですか?/どこで取りましたか?ー2 何回目のチャレンジですか?
→2015年3月。小樽、朝里川温泉スキー場。2回目。
Q:嶋田さんの場合は、大学からスキーを始めて大学院を含めた学生の間にクラウンまで取得されていますよね。スキー部に入って上手くなる人とそうでない人がいると聞くのですが、何の違いがそれを生むと思いますか?
→技術的な要素もあるんですが、僕が一番大きいと思うのは、ちょっと変な言い方かもしれませんが「スピード狂かどうか」という点です。速さに対しての恐怖心を克服しないと上手くなれないのかなと思います。
それからもちろんスキーへの熱量も大事です。自分もスキーにどんどんのめり込んでいった感じでした。もちろん選手をやる気なんて最初は全然なくって、とにかくほんまにスキーが好きで好きで仕方なかったですね。で、それが教える方にも伝わるんだと思うんですよね。教えたらどんどん上手くなるし、教えたくなる感じだったんだと思います。僕は僕でそうやって「上手くなったね!」とチヤホヤされて気分もいいですしね(笑)
⑩年間滑走日数は何日ですか?
→学生時代(北海道):80日、社会人(大阪)45日、今年(パリ)予定15日くらい。
⑪ホームゲレンデはありますか?/どこのスキー場ですか?
→学生時代:ばんけい。スノークルーズオーンズ。
社会人:戸隠スキー場。
⑫スキーにはどうやって行きますか?車/電車/バス?
→車
⑬定宿はありますか?
→戸隠スキー場の場合。ロッジ飯島。
⑭普段は誰と行きますか?
→クラブ/チームメンバー、親父
父も昔は兵庫県の選手権に出るようなレベルだったのですが、僕が子供の頃は僕が部活だったりでなかなか行けないのもあって、一緒に行く機会はそんなになかったのですが、僕が大学卒業して大阪に戻ってきてからは一緒に行くようになりましたね。とはいっても、僕のサポートをしてくれるというか、ビデオ回しながら滑ってくれるみたいな、そういう感じで一緒に行っていますね。
⑮クラブやサークルには入っていますか?
→学生時代:北海道大学基礎スキー部/K &H(ばんけいスキー場所属の社会人)
社会人:K's (社会人クラブチーム)、ロシニョール公式デモチーム
⑯レッスンは受けていますか?特定のコーチがいますか?
→学生時代にK &Hで出会ったKコーチ
⑰年間スキーに使うお金は?
→50万円
Q:大学時代のスキーのお金はどうやって工面されたんですか?
→アルバイトもしていましたが、正直に言うと親から借りていました。通称ニコニコバンクって呼んでるんですけど、大学卒業する時の親への借金が確か300万ぐらいありましたね。あんまかっこよくないんで最初に言わなかったんですけど、僕がスキーができた1番の理由は、親からの金銭面のサポートです。今でもこのことについて心から感謝しています。
Q:300万円!!それはまたなかなか金額ですね。
→はい、実は親父も同じ技術戦に出てたんですよ、昔。で、親父は兵庫県から出てたんですけど、全日本には行けなかったんですよね。ここから察するに、親父に直接聞いたわけじゃないすけど、親父も多分、自分が立てなかったようなところに僕がどんどん行くのが多分楽しくて、それで、金を貸してくれたんじゃないかなと思います。
⑱スキーをするために、仕事や家族の理解を得るように工夫していますか?
→妻もスノーボードに連れて行く。同じペースを強要しない。親父を味方につける。
Q:奥さんもスノーボードをされるということですが、とはいえ社会人で45日はさすがに奥さんも「そこまでは…」と言われませんか?
→僕は僕で45日行ってるんですが、妻も妻で40日くらい行ってるんです。で、そのうち僕と行ってるのは5日間くらいで、残りは会社関係の別の人達と行ってるんですなので怒られたりはないですね。
Q:会社の人と一緒にいったりすることもありますか?一緒に滑った人の反応はどうですか?
→あります。一緒に行けば普通に楽しいし、教えてよと言われれば普通に教えたりもしていますね。シンプルに「上手いね」と言ってくれますが、素人から見たら、1級以上はみな同じで1級もクラウンも多分違いは分かってないと思います(笑)。でも、スノーボードをカービング志向でやってる人が会社にいて、その人はやっぱりスキーの上手さが本当の意味でわかって貰えたのか、めちゃくちゃ褒められましたね。
Q:一般素人の方とスキーに行くのって嶋田さん的にも楽しめるんですか?
→楽しいですよ。誘われたら全然行って一緒に楽しめますね。温泉とか夕食とかそういうのも含めて、レジャーとして楽しめます。温泉・飯は学生の頃から大好きでしたね。
⑲クラウン取ってからスキーへの取り組み方/楽しみ方は変わりましたか?
→分析力が上がり、セルフコーチングが上手くなり始めたのが、クラウンを取った頃からだったと思います。それからはより一層自分の滑りを研究することが楽しくなり、スキーが辞められなくなりました。
Q:もし会社の同僚に「僕も嶋田さんみたいに上手くなりたい。クラウン取りたいから教えて」って言われたらどうしますか?
→うーん、難しいですね。いったんは自分で教えますかね。で、一緒に滑ってみて、その人のスキーへの熱量を測ったうえでどうするか決める、ですかね。一緒に滑ってみて向こうが昔の僕みたいにのめり込むようなら、継続して僕が教えますかね。
そうじゃない人は多分無理だと思うんですね。やっぱり社会人の少ない滑走日数の中でという話になってかなり長丁場になるんで、それは多分僕が全てを面倒は見切れなくなると思うんです。なので、スクールとかを紹介します。
やっぱ先生によって楽しくなるっていう側面は大きいと思うんですよ。先生がいいから楽しくなってもっと好きになるっていうのもあると思うんで、少なくとも自分と滑っててそんなのめり込めないってことは、僕とは合ってないなっていう風に判断しますね。逆に、教えてる側が教えてて「この人教えてて楽しい、面白い」と思うかどうかって大きなポイントだなと。スキー技術に興味津々とか。僕が教えるんだったら、そのやる気とかのめりこむ感じは大事ですね。
あとは折を見てお金の話もすると思います。僕は現実志向なので。滑走日数もそうだし長丁場になる話なので、そこはしっかり分かってもらう必要があるのかなと。
Q:今後のスキーへの関わり方のスタンスについてどう考えているか教えてください。
→今現在パリにいて、会社からは3年はパリでと言われているので、その間は一旦、選手としてはお休みしようと思っています。日本に戻ったら復帰しようと思っているので、下手にはなりたくないなと思うんですけど、そうはいっても、こっちで日本ほど突き詰めてやるのは難しいんですよね。コーチは日本にいますけど、時差の問題もあってコミュニケーションもしにくいですし…。なので、差し当たってはこの3年は、技術には主眼を置かないでおこうかなと思っています。しばらくはレジャー寄りにスキーを楽しみたいなと考えています。ヨーロッパで滑りながらYoutubeにあげていこうと思っています。
Q:クラウンとるような人はレジャーとしてのスキーを考えられないという方も多いようですが、嶋田さんはそこはどうですか?素人の人やスノーボーダーと和気あいあいと楽しめたりしますか?
→はい。実は僕はそこをすごく意識していて。やっぱり技術だけをやっていても飽きてくるので、積極的に飯とか風呂とか、スキー場の宿で何するかとかにも楽しもうと思ってるんです。あとスキー自体も、僕は基礎上がりですけど、ポールのトレーニング1週間入ってみたりとか、あとテレマークとかも自分もやってて、そんな感じでなるべく基礎スキーに執着しないように自分で意識してやってるんですよね。面白くなくなっちゃうともったいないなと思ってて。
だから、会社の人と行く機会も必ず1年に1回取るようにしているんです。ただ行くとやっぱり練習したくなっちゃうのでそこはバランスですよね。スキーを教えたりみんなとスキーを楽しむ時間と、自分一人で練習をして練習欲を満たす時間と、メリハリをつけていますね。
僕がスノーボードをしてペースを合わせて一緒にゲレンデを楽しんだこともありましたね。ただその時も一人ボードがめちゃくちゃ上手い人がいて、それを見ててどうしても上手くなりたくなっちゃって、彼にずっと教えてもらいました。そしたら、とりあえずカービングができるようになっちゃって、それ以降はボードでも他の人とペースが合わなくなっちゃっいました(笑)
Q:大学のご友人で他にクラウンを取得された方で、もうスキーを辞めてしまった人はいますか?
→いないですね。僕以外に大学以降でクラウンをとった人間が2人いるんですが、1人は今選手をやってますね。上達具合で言うと僕よりゆっくりだったんですけど、結局彼も社会人になってクラウンを取ってましたね。今も着実にどんどん上手くなっていて、予選の順位とかも上がっていってますね。
もう一人は僕にスキーを教えてくれた女の子なんですが、彼女は2016年まで選手をしていて、でも、結婚とお子さんが生まれたってのもあり、そこで引退してますね。でも、その子も去年ぐらいから家の前で雪山作ってそりで子供滑らしたりしてるって言ってたんで、今年あたりスキーに連れってたりするんじゃないかな。
彼女は、大学2年目か3年目でクラウン取ってたと思います。僕がクラウン取りたかったのはその子が取ったってのもありますね。基本的に彼女の背中を追いかけてるんですよね。
Q:クラウンを取得された方は基本的にスキーをやめられていないんですか?
→いないですね。北大の先輩しかりクラウンまで取った人は基本的にスキーをやめてないです。今でもみんなめっちゃ忙しくても1回行けたら行きたいし、OBたちでこの草大会出ようぜって話になったら、結構みんな出てますね。10個上とかそういう年代の先輩も皆さん出られています。
【スキークラウンホルダーのアンケート回答まとめ】2022年12月時点
【スキークラウンホルダーのキャリアまとめ】
【スキークラウンホルダーの話を聞いて…】
大学でスキーにどっぷりとハマり、6年間で2級、1級、テクニカルそしてクラウンと一気に上達された嶋田さん。インタビューを通じて一番印象的だったのは、「のめりこむ」「熱量」といった言葉の節々にも滲み出ている「スキーへの情熱」。そしてそれが、大好きなスキーをいつまでも飽きずに続けるために、ポールやテレマークに挑戦したりスキーのレジャーとしての側面を積極的に楽しむ、といった工夫にも表れていると感じました。
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