輪郭

真っ黒く塗り潰した
何も無い闇
天地もわからず
歩いていた
何も無いこの闇は
静謐な死の匂い
鼻腔に纏わり付き、粘ついて不快な闇
僅かに月明かりが差した
奇妙な程大きく、くすんで、生々しい、妖しい月の貌
照らされた私の輪郭は白く光り
ぐにゃぐにゃ歪みながらどこかへ飛んでいった
闇に手足が埋もれていく
重油に呑まれるように
私を型どる線はもう無い
永遠に
もう二度と、傘もさせない
あの山高帽の紳士が
がらんどうなまま
こちらをみていた

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