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企業法務におけるKPIを考えてみた

KPI(Key Performance Indicators):組織や部門が目標達成や業績評価を行う際に使用される数値的な指標のこと。KPIは主要な業績を測定するための重要なツールであり、組織の戦略に合わせて設定されます。KPIは定量的なデータに基づいているため、目標の進捗状況や成果を視覚的に把握することができ、組織の目標管理および意思決定に役立つ。

企業運営において適切にKPIを設定し、目標管理を行うことは不可欠です。

例えば、企業における各組織の典型的なKPIは以下のものがあげられます。

  • 営業部門:アポイント件数、成約率、リピート率、平均受注単価

  • システム開発部門:エラー件数、標準化率、テスト終了件数

  • マーケティング部門:新規顧客獲得数、PV数、直帰率


法務の仕事ではKPIの設定は難しい

法務部門は企業や組織において重要な役割を果たし、法的リスクを最小化し、法的コンプライアンスを確保することが任務です。

しかし、契約書の作成・チェックや法改正対応から新規ビジネスの適法性審査をはじめとして、法務の仕事は多岐にわたり数値化しにくい業務が多いのが実態です。
そのため、法務においてKPIの設定は一筋縄ではいきません。

この記事では、私自身の社内弁護士としての経験も踏まえ、法務部門が適切なKPIを設定するための具体的な項目とその例を考えてみたいと思います。

⑴法的リスク管理の評価

目標: 法的リスクを事前に特定し、リスク発生の頻度と重大度を減少させる。

具体的なKPI例:

  • 1年間に発生した法的リスクの件数

  • リスクの重大度を示すスケールに基づいたリスク評価

  • リスク予防策の実施率

例えば、自社が運営しているサービスにまつわる典型的な法的リスクをカテゴリ化し、リスクの重大性をランク付けし、毎年発生件数を数値化することがあげられます。
ITビジネスのサービスにまつわる典型リスクで考えると、個人情報事故や顧客の契約違反案件の発生件数等があるでしょう。
これらの件数を計測することが一つのKPIになりますし、事故件数を定期的に観測するとリスク予防が機能しているかについても把握できるのではないでしょうか。

⑵コンプライアンスの確保

目標: 法律や規制へのコンプライアンスを遵守し、違反の発生頻度を減らす。

具体的なKPI例:

  • 1年間に発生したコンプライアンス違反の回数

  • 違反事案の原因分析と再発防止策の実施率

  • 従業員のコンプライアンス教育の参加率

コンプライアンス業務も結果を可視化するのが極めて難しいですが、コンプライアンス違反の発生件数やコンプライアンス研修の参加率、テストを実施して結果を数値化しても良いかもしれません。

⑶効率的な契約管理

目標: 契約の処理時間を短縮し、契約の精度とクレーム数を削減する。

具体的なKPI例:

  • 契約の審査から承認までの平均所要時間

  • 契約に関するクレーム数と対応時間

  • 契約書エラーの発生頻度

企業運営において契約業務は最も重要かつ典型的な法務の仕事の一つです。
契約業務を数値化するとすれば、例えば契約更新ミスといった契約管理に関するエラーの発生頻度や、契約審査から締結までの時間を可視化することで、KPIを設定することができるのではないでしょうか。

⑷法務サポートの満足度

目標: 他部門からの満足度を向上させ、法務サポートの質を高める。

具体的なKPI例:

  • 法務部門への満足度調査結果

  • 他部門からのフィードバックに基づく改善策の実施率

  • アドバイス提供への返信時間

仕事を改善するためには、顧客の声を聴くのがベストです。
法務満足度をGoogleフォームなどでアンケートをとってみるのも面白いでしょう。
クォーターごとに定期的に実施することで、定点観測してみるのもよいかもしれません。

⑸外部法務コストの最適化

目標: 外部法務コストを削減し、予算の最適化を図る。

具体的なKPI例:

  • 外部法律事務所への支払い金額と削減率

  • リーガルサービスの導入コストと削減できた社内リソースの可視化

  • 別案件との比較による外部法務費用の適正性評価

コスト管理は最も簡単なKPIの設定ですが、法務にまつわるコストの数値化は外部法律事務所の支払金額やリーガルサービスのコストくらいですね。
ただ、コスト対象数が少ない分、可視化してくることで組織運営に活きる部分があるかもしれません。

まとめ

この記事では、法務部でのKPIの設定の仕方について考えてみました。

ここで紹介したような具体的なKPIを設定することで、法務部門は組織の戦略と連動した成果を上げることができます。
特に、経営陣に法務部の重要性や成果を認識してもらうためには、数値をもって説明することが一番です。

ただし、変化の速いビジネス環境では、特にKPI設定は常に見直しと改善が必要なことに注意が必要です。

今後、法務分野でもよりAIの活用が重要となってくるであろうことから、なおさら定期的な評価とデータの分析を通じて、より効果的な法務部門を築くことが大切だと感じます。

組織全体の成功に向けて、法務部門の価値を最大限に発揮するためにKPIを有効に活用したいですね。

この記事が皆さんの参考になれば幸いです。

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