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はげまされた話

昔の友達と会った。

当時好きだった同級生だ。

2,3年前だろうか。最後に会ったのは。


当時、中学生の頃の私は人生を謳歌していた。

放課後、友達と遊んだり、部活に熱中したり。

何事にも全力で、本気で、心の底から楽しんでいた。

成績のことに悩まされることもなく、

ただ、純粋に楽しかった。


なぜ、好きになったのだろうか。

話していて、楽しいからだろうか。

それとも、ほかの理由があるのだろうか。

どうにも思考が回らない。

あの頃の自分に聞いても、答えは得られないのだろう。


その子とは、一緒に買い物に行ったり、

オープンスクールに行ったり、

はたまた映画を観に行ったりもしていた。

今思い返すとうらやましい話だ。


高校生の時、一度だけ会ったことがある。

そのころの私は、自己肯定感を失っていた。

コロナでマスクを外せないストレス、

学校では、向かい合って会話することすら許されなかった。

提出物をため込み期限に追われ、一睡もできない日もあった。

気づけば成績は地に落ち、

その引き換えに、スマホに依存していった。

そんな中だった。


そう長く話したわけではない。

会話の内容も覚えていない。

ただ、後味が悪かった記憶だけが残っている。

どうしてうまく話せなかったのだろうか。

そんなことを考える余裕は持ち合わせていなかった。


私は遠方に進学し、その子は残った。

もう会うことはないのだろうと、うっすらと感じていた。

結局、大学での1年間も流されるようになってしまった。


今年、実家に戻り、予備校通いが始まった。

今年、絶対に決めないといけない。

来年はもう、ないのだから。

今更のようにそんなことに気づき、

また半年前に戻ってしまいそうな心を押さえつける。

明確な目標がある。

成績の伸びも実感している。

でも、これでいいのか分からない。

このまま続けて合格できる保証はない。


もしかしたらそうだろうか。ふと目が合った気がした。

パンツスタイルで、クールな印象を受けた。

こちらに気づいていたのだろうか、振り返って声をかけられた。

昔の印象のままだった。少し大人びたようにも見える。

身長差はあまりなかった。

久しぶりだね。と当たり障りのない会話を交わした。

お互いに近況報告をしあった。

予備校で友達を作っていない私には、とても新鮮に感じられた。

自然と歩調が緩やかになっていった。

”○○は中学の時から勉強好きだったんだし、きっといけるよ。”

そう、慰められてしまった。

ホストか?ホストなのか?()

書いていて嫉妬してしまうようなセリフだった。

2分もないような会話だったが、心が楽になった気がした。


最近は受験勉強に身が入るようになってきた。

少なからず、あの言葉が刺さったのかもしれない。

そういうところが好きだったのだろうか。


ともあれ、自分は本当にたくさんの人に助けられて、

許されて、励まされているのだと実感した。

話しかけるのにどれだけの勇気がいったのだろうか。

少なくとも私にはできなかったことだ。

今度は少し勇気を出してみようと思った。

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