見てる人は見ている

今回の話は他人への純粋な悪口だ。

Cという薬剤師がいる。Cは私が勤めている医療法人グループの、別の精神科病院の副薬局長である。

近日行われる病院機能評価に伴う、人手不足を理由にCは毎月1回、私の勤め先の精神科病院へ出張に来る。Cはコミュ力に長けており、月1で来るにも関わらず、今年で3年目である私なんかより、遥かに当院に馴染んでいる。

Cは元々私が勤めている病院で働いていたが、離島が嫌で異動希望を出し続け、内地の病院へ転勤した過去を持ち、そのせいもあってか病院内の他部署から薬局へ何人もCへ挨拶にやってくる。出張中の休日には、バスケだかなんだかの試合に誘われて、業務中にその活躍を聞くこともある。

Cは口から生まれたのか、と思う程ペラ回しが上手く、業務中にも喋りまくり、薬局内の人心掌握も簡単に行える。そんな感じなので当然、パートの私なんかよりも薬局内の立場は上である。

当院の人手不足の中、態々この離島まで出張してくれて、持ち前のコミュ力を発揮して、勤務先とは別の病院にもかかわらず、業務後のプライベートでもすっかり馴染んでいる。一見すると批判の余地などない姿を見せている。もしその態度を私にも向けてくれれば、の話だが。

そう、Cは私の事を露骨に下に見て、私が話しかけてもシカトすることも多い。薬局内の仕事も他の薬剤師の半分も行わずに、それどころか仕事中にも関わらず、事務方や病棟の昔の知り合いに会いに、薬局から出て行ってしまう。

では薬局の外で何らかの業務を行っているのかというと、そういう訳でも無い。当院の薬局長に聞くと、仕事をサボって遊んでいるのでは、という事である。にも関わらず、Cは何ら批判にさらされる事もなくそれどころか人気者として、仕事は私に押し付け薬剤師や助手とお喋りに高じている事が多い。

私はこの光景を目撃し、Cの人心掌握能力について、感心半分、恐怖半分の感情を抱いた。どこの職場もそうだが、当院の薬局にはC以外にも働かない人がいる。しかし、その人はCと違い嫌われ批判にさらされ、他の助手や薬剤師から相手にされないことが多い。人気者のCとは大違いである。

話が変わるが先日、病院機能評価関連で、グループ内のCの勤め先とは別の総合病院から、A薬局長が応援に来た。前回の記事でも書いたが、Aは400床以上ある総合病院の薬局長であるエリートである。また、グループ全体の統括薬剤部長であるBも当院を監査しに来た。

Cの天下は終わりである。Cは今まで当院の薬局長を差し置いて、薬局の主として振舞っていたのだが、AとBが到着した瞬間にゴマすりを始めた。私はその光景を見て、思わず失笑が漏れてしまった。そういう所が、Cに嫌われている原因なのかも知れないのだが。

Cも自分の勤め先の副薬局長であるのだが、総合病院と精神科病院では求められる知識量も異なる。このあたりの事も前回の記事に書いたので、詳細については閲覧して欲しいが、とにかくCはAより年下だし、精神科病院勤務では総合病院勤務の薬剤師に知識量では勝てないと、コンプレックスを抱いているらしい。そういう事はCからシカトされていても、外から見ていて良く分かる。

さて、病院機能評価への対策が今月で終わり、後はA、B、Cの3人が本来の職場へ帰るだけである。今まで散々な目にあっていたが、最後なのでCに別れの挨拶をした。Cは今月を最後に当院への出張が取りやめとなるのだった。私はウキウキしながらも、表情は神妙に取り繕い別れの挨拶を告げた。

しかしCは来月もまた来るといい、そのままタクシーに乗って空港へ向かって行ってしまった。私は驚いた、Cが当院へ来るのは今月で最後のはずである。それは事務方にも確認したので間違いない。薬局内の人員はCを送るために、病院の玄関まで行き、来月も待っているとCへ伝えていた。

その光景を見た私は人目を気にしながら当院の薬局長へ確認した。すると薬局長は私と2人きりの場所まで移動し、事の顛末を教えてくれた。

Cが勤める病院では、薬局長の体調が悪く、現在Cともう一人の副薬局長が代理として回しているらしい。更に、薬局内では女性薬剤師間の仲が悪く、派閥争いが起こりCはその対応に苦慮しているらしい。ついでに家庭内でも子供を巡って妻との言い争いが絶えないらしい。

そうした中で、離島の当院に来ることで全ての喧騒を忘れ、Cはリフレッシュしに来ているのではないか、との事だった。私は何故、度々薬局内から抜け出すCへ、薬局長が苦言を呈さないのか不思議で仕方がなかったのだが、上記の様な事情があったのだった。いや、どんな理由があろうと、業務時間内で遊んでたら注意しろよ、と思うのだが。

そういう訳で、Cは来月も当院に来たいと言っているらしい。私は二度と来て欲しくないと願っているのだが、薬局長を除いて、薬局内では大歓迎ムードである。病院機能評価の対策も終わったし、どういう理由で来るのかは知らないが。

その事について薬局長はあまりいい顔をしていなかった。薬局長は私に、Cは周囲から評価されている程、能力は高くないと告げた。私はCについての不満をここぞとばかりに捲し立てた。どんなにCが外面を取り繕おうとも、その本質を見てる人は見ているのだ。

もしもCが来月、当院へ出張に来たのなら、またその事について書きたいと思う。


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