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小さく生んで大きく育てる

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農業についてリサーチを始めた当初のことです。ぶどうの木がすぐに実をつけないことを知り、野菜の栽培から始めることを考えました。ただ、その頃の私はレタスとキャベツの違いすらよく知らなかったのです。そこで、まずは野菜の栽培方法を学ぶために行動を起こしました。

京都の長岡京市で貸し農園サービスを利用した私は、お酒のバイヤーからの紹介で青果コーナーのバイヤーさんとも繋がりました。彼らとの対話を通じて、需要のある野菜について情報を得ることができました。試験的にいくつかの作物を栽培し始めた経緯をご紹介します。

最初に、バイヤーさんからのアドバイスや市場の需要動向を踏まえて、人気の高い野菜の栽培に取り組みました。特に京都の地域に合った伝統的な野菜や地元の特産品に注目しました。例えば、京都では伝統的な料理に欠かせない京なすや、季節限定の美味しい野菜である京里芋などがあります。これらの野菜の需要が高いことを知り、栽培を試みました。

栽培にあたっては、貸し農園サービスの利点である専門知識や助言を受けることができました。農園管理者やアドバイザーから、作物の種まきや栽培方法、病害虫の対策など、実践的なアドバイスを受けることができました。また、施設や機材の提供もあり、初心者としては非常に助かりました。

栽培を始めてからは、バイヤーさんとの定期的なコミュニケーションを通じて、市場の需要や傾向を把握し続けました。彼らからのフィードバックや要望を受けながら、作物の品種選びや収穫タイミングの調整を行いました。また、品質管理や出荷方法についてもアドバイスを受け、商品価値を高めるための努力を重ねました。

この試験的な栽培は成功し、需要の高い野菜を生産することができました。市場からのフィードバックも好評であり、バイヤーさんとの関係も良好なままでした。これをきっかけに、より本格的な農業に取り組むことも検討しました。

貸し農園サービスを利用した経験は、私にとって農業に対する理解を深める貴重な機会でした。需要と供給のバランスや市場のトレンドを把握することの重要性を学びました。また、バイヤーさんや地域の人々とのつながりを通じて、地元の食材の魅力や付加価値を再認識することができました。

このような経験を通じて、私は青果コーナーのバイヤーさんとのつながりを築きながら、需要のある野菜を栽培することで地域経済に貢献できる農業の可能性を感じました。

当時の私にとって、この行動は非常に重要なものだったと思います。私自身がマーケティングのバックグラウンドを持っていたため、農業に参入する際には市場の需要を重視したアプローチを取りました。

農業を営む中で周りの農家と交流を深めていく過程において、気付いたことは、各農家が自分たちの好みや考えに基づいて様々な野菜を栽培していることでした。特定の野菜の産地として指定されている場合も多く、市場の声に耳を傾けて栽培する農家は私の周りでは少なかったです。

私はプロダクトアウトの発想ではなく、何が売れるのかや価格のコントロール権が誰にあるのかといった観点を主眼に置き、いくつかの野菜を栽培することにしました。
私の信念は、「小さく生んで大きく育てる」というものでした。この考え方を実践していたときに、事業として拡大していけるという確信を得ました。そのご縁があり、私は京都の福知山で小さな畑を借りることができました。

当時の畑の大きさはたった3アール(3畝)で、左右が山の斜面で半日陰の場所でした。さらに取水もできない位置にあり、放棄された耕作地でした。

畑を利用するためには、まず山からの浸食によって生えた木々の根を取り除く作業が必要でした。また、水を引くために井戸を掘る必要もありました。幸運なことに、山の斜面には水が通っている水路があったため、なんとか畑として利用することができました。

山からは様々な動物が畑に侵入してくるし、日照も十分でないという最悪の条件が重なっていました。しかし、人生には塞翁が馬という言葉があるように、面積が小さいが故に有益な情報を得ることができました。

1アール当たりの耕作放棄地の復旧にはどれくらいの費用や工数、必要な人数がかかるのかを知ることができました。また、井戸の掘り方も学ぶことができ、半日陰でも育つ作物についても知識を深めました。さらに、これらの作物が市場で高値で取引されていることもわかりました。

もし条件が良い農地を借りていたら、地域の需要に応じた農業を行っていたかもしれません。補助金などを使いながら獣害対策などの問題も考慮する必要がなかったかもしれません。しかしその後の事業を拡大する機会もなかったと思います。

続く…

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農業はビジネスです。アグリハックは、農家が自らメーカーとなり、マーケットに向けた革新的な戦略を展開することを提唱します。私たちは常にお客様の視点に立ち、品質と価格のバランスを追求しながら、最も付加価値の高い作物を生み出します。自然とテクノロジーの融合を通じて、持続可能な農業経営を追求し、地域のニーズに応える生産体制を築きます。アグリハックは、農業の枠を超えた経営戦略のノウハウをお届けし、農業ビジネスの未来を切り拓きます。農業を革新し、地域との絆を深める、アグリハックの世界へようこそ。

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