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キャリア選択における理想的なアプローチ

前回の記事では、鈴木祐著の「科学的な適職 4021の研究データが導き出す、最高の職業の選び方」を紹介しました。

本書は、科学的な根拠に基づいた「幸せになるための職業の選び方」を解説した書籍です。本書の要点は、以下の5ステップにまとめられます。

  1. 幻想から覚める

  2. 未来を広げる

  3. 悪を取り除く

  4. 歪みに気づく

  5. やりがいを再構築する

本記事では、ステップ1で紹介されている「未来予測の限界」について、さらに詳しく説明していきます。

ステップ1では、キャリア選択における思い込みから解放される方法が示されています。その中で、多くの人が「好き」や「得意」なことが自分の適職であると考えていることが挙げられています。

しかし、本書では、これらの考え方は必ずしも正しくないと指摘しています。なぜなら、未来は予測不可能であり、好きや得意なことが必ずしも長続きするとは限らないからです。

実際に、アメリカの研究によると、平均的な人は生涯にわたって10〜15回以上の転職を経験すると言われています。また、厚生労働省の調査によると、20代後半の転職率は約25%と、非常に高い水準となっています。

このように、キャリアは決して一筋縄ではいかないものです。どんなに精緻な分析法や意思決定ツールを使っても、必ず失敗と挫折の瞬間は訪れます。

では、失敗と挫折を避けるためにはどうすればよいのでしょうか。

一つは、キャリア選択を「ゴール」ではなく「プロセス」と捉えることです。つまり、完璧な答えを求めるのではなく、常に試行錯誤しながら、自分のキャリアを構築していくという考え方です。

もう一つは、失敗を恐れないことです。失敗は、成長の糧となります。失敗から学び、次のステップに進んでいくことが大切です。

本書の著者である鈴木祐氏は、次のように述べています。

自分の人生は自分で切り開いていくしかない。そのためには、失敗を恐れずに、さまざまなことにチャレンジしていくことが重要です。

キャリア選択は、人生において非常に重要なものです。しかし、完璧な答えは存在しません。失敗を恐れずに、さまざまなことにチャレンジしながら、自分のキャリアを切り開いていくことが大切です。

どんな専門家でもコイン投げぐらいの精度でしか未来予測できないのはステップ1で紹介されている通りですし、どれだけ精緻な分析法でキャリアプランニングをしても、どれだけ優秀な意思決定ツールを使っても、必ず失敗と挫折の瞬間は訪れます

残念ながらこの問題を解決する妙薬は本書でも私にもありませんが、現時点でもっとも役に立つのは「キャリア・ドリフト」の考え方でしょう。

金井寿宏教授のキャリア選択論

神戸大学大学院の金井寿宏教授は、キャリア選択においては、事前に細かく決めておくよりも、大きな方向性だけを定めたほうが良いという考え方を提唱しています。

その理由は、人生は予測不可能なイベントの連続であり、事前の計画どおりに進むことは少ないからです。

例えば、大学で学んでいたこととは全く異なる仕事をすることになった人や、転職を繰り返してキャリアを積んだ人など、人生にはさまざまな偶然や予期せぬ出来事が起こります。

そうした出来事に柔軟に対応できるようにするためにも、キャリアについては、大きな方向性だけを定めておくほうがよいのです。

大きな方向性を決めた後は、その方向性に基づいて、さまざまな経験を積んでいくことができます。

その中で、自分の興味や適性、価値観などについて、より深く理解することができるようになります。

また、さまざまな経験を積むことで、自分の可能性を広げることもできます。

このように、金井教授のキャリア選択論は、人生は予測できないのだから、下手にコントロールしようとせず、大きな方向性だけを決めた後は流れに身をゆだねるのが最適だという考え方です。

この考え方は、データを必要とせずとも、現代の経済状況や技術の進化を考えれば正しいと言えるでしょう。過去には終身雇用や年功序列などの制度が機能していましたが、現代ではAIの進出や経済の変動などにより、市場は数年ごとに変動しています。そのため、従来のようにガチガチにキャリアプランを立てても、成功が保証されるわけではありません。

このような状況下では、柔軟性を持ち、変化に適応できるスキルや考え方が重要です。単なるキャリアの計画ではなく、自己成長と適応力の向上が求められます。

状況が頻繁に変化する現代では、従来のキャリアプランがいかに正しいかを疑問視することがよくあります。この不確実性の中で、計画通りに進むことは難しく、不安感が高まることも少なくありません。

したがって、ある程度の柔軟性を持ち、未来の不確実性に対処する準備をすることが重要です。全てを計画通りにコントロールすることは難しいので、一部は偶然や状況に任せることも必要です。適切なバランスを見つけ、変化に適応できる能力を身につけることが、現代のキャリアにおいて成功する鍵と言えるでしょう。

事実、キャリアの進展において思いがけない出来事や偶然が大きな役割を果たすことは多いです。スタンフォード大学のジョン・クランボルツの指摘も示す通り、計画通りに進むケースは少なく、多くの場合、予期せぬ出会いや状況がキャリアに影響を与えます。

特に現代は変化が速く、不確実性が高い時代です。そのため、柔軟性を持ち、適応力を養うことが重要です。計画を立てることも大切ですが、計画がうまくいかない場合にも臨機応変に対応できる能力を育むことが、成功への鍵となるでしょう。偶然のチャンスを活かすために、常に学び、成長し続ける姿勢が求められます。

やはりキャリア選択において、ある程度は偶然や運命に身をゆだねることも大切です。過度な計画や思い悩みが逆にストレスを生み出し、幸せから遠ざけることがあるからです。

人生には予測不可能な要素が多く、時には思いがけない機会や出会いが素晴らしいキャリアの扉を開いてくれることもあります。自分の情熱や興味に従い、新しい経験やチャンスを受け入れることが、幸せなキャリアの一部かもしれません。

ただし、完全に運任せにするのではなく、柔軟性と適応力を持ちつつ、自分自身も積極的に学び、成長し続けることが重要です。偶然のチャンスが訪れた際に、それを最大限に活かすための準備をしておくことが、幸せなキャリアを築く一助となるでしょう。

計画的であることと、柔軟で運命を受け入れる姿勢を組み合わせることが、キャリア選択において理想的なアプローチの一つです。

計画は自分の目標や希望を明確にし、それに向かって努力する重要な手段です。しかし、過度な計画や焦りはストレスを生むことがあります。一方で、運命を待つ姿勢は、未知の可能性を受け入れ、過去の計画にこだわりすぎず、新しいチャンスに敏感に反応する能力を育むのに役立ちます。

「人事を尽くして天命を待つ」は、自分の力を最大限に発揮し、同時に運命や偶然にも耳を傾けることを意味します。人生は計画通りに進まないことも多いため、計画と柔軟性を組み合わせて、幸せなキャリアを築くのに役立つでしょう。

もし今後の人生でふと未来のキャリアへの不安がよぎったら、ぜひ本書のステップを実践してみてください。

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