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Bluetoothヘッドホンでハイエンドクラスのオーディオを

今回は、Bluetoothヘッドホンを使ってハイエンド品質と言って決して過言ではないほどの素晴らしい音、音楽を再生する方法についてまとめます。この方法を使えば、PCとBluetoothヘッドホン、イヤホンさえあればいつでもどこでもハイエンド品質のオーディオを楽しむことができます。特筆すべきはアンプやDAC、DDCなど高価な機器が一切不要である点です。そしてなんと音質は有線のヘッドホンやイヤホンに決して引けを取らない素晴らしい音です。皆様も是非お試し下さい。



要約

Bluetoothオーディオの品質向上は目覚ましく、少し聴いたくらいではこれは有線接続?と勘違いしまうくらい素晴らしい音です。Bluetooth接続ではケーブルの煩わしさから解放されることのみならず、PCのデジタル出力を音声に変換するための装置「DAC」はヘッドホンに内蔵されているため不要なのです。その費用やスペースも不要でとても便利で安上がりです。これに加え「BlueALSA」というLinuxの素晴らしい音を、ALSA音声システムを直接使って出力させるソフトウェアを導入することによって、ハイエンドクラスといっていいほど高音質を得ることができます。超コストパフォーマンスです。BlueALSAを介したLinuxオーディオはハイエンド品質といって決して過言ではありません。そしてBlueALSAの超高品質オーディオを楽しむためのBluetoothコーデックとしてソニーの「LDAC」方式が最良と思われます。



Linuxオーディオを使ってどこでも気軽に高音質で音楽再生が行えるようになってより私はデスクトップでははもとより出張先の休憩室でもMacBook Airを使っていい音で音楽演奏を楽しんでいます。その場合、ヘッドホンはもとよりデジタル変換装置であるDDCやDACが必要となります。私はDACにChord Mojo、DDCはそれよりほんの少し大いくらいの高品位中華機器といったような小型のものを使っています。しかしこれら全てとなりますとどうしてもかさばって重くなります。

Chord Mojo


そこで思い当たったのがBluetoothの利用です。先にこちらに書き込みましたようにLDACを使えばじっくり聴いても有線接続と遜色ない程度の音が得られ、ハイレベルのオーディオ、音楽そして演奏を様々なところで楽しむことができるようになります。もちろんじっくり比べてみますとどうしても有線接続に軍配が上がりますが、移動先で休憩時間に聴くには十分です。さらに高級ヘッドホンを利用すればほんとうにハイエンドクラスといって決して過言ではないくらいの素晴らしい音となります。

今回こちらでは、Bluetoothヘッドホンでハイエンド品質のオーディオを楽しむための「BlueALSA」という方法と私の環境下でのコーデックによる音質の違いなどまとめました。


機材

PCはMacBook ProあるいはAirを準備します。Proの方がすこし音がいいです。この音の違いはCPUよりもマザーボードに依存しているようで、Core i7のMacBook AirよりもCore i5のMacBook Proの方が音がいいです。とはいえさほどびっくりするほどの違いではありません。私は電車などで移動する時には11インチのMacBook Airを持ち歩いて使っています。これはMacBookの中で最も小さく軽くてとても便利です。理想を言えばスマホくらいの大きさのIntel MacBookがあれば最高なんでしょうけが残念ながらそんなものありません。iPadでもよさそうですがCPUが違うのでスタンダードのLinuxはインストールできません。

使用するOSはこれまで述べてきましたように「Xubuntu Core」あるいは「Xubuntu Minimal」を用います。前者は現時点、ネットからではダウンロードできませんので一般的には使えません。またセキュリティー的にも少し不安なんだと思います。後者は2023年6月に出たばかりの最新バージョンで、適宜アップグレードされています。もちろん無料でダウンロードしてインストールできます。

アプリはMPDとCantataを基本とします。他にアカウントIDやパスワード保存の関係などでChromeが便利です。Flash経由の44.1 kHzではありますがChrome音声出力をほぼダイレクトにLinuxのALSAに出力する方法もあります。ただ残念なことにFlashの音声出力は今のところBluetooth出力には対応していないようです。

詳細は別に譲るとして「BlueALSA」ソフトウェアは「Synaptic」という 各種アプリダウンロードのためのソフトウェア を介してインストール可能です。残念なことにこの方法でインストールしたBlueALSAですとAAC、AptXとAptX-HDには対応していません。LDACには対応しているのでそれでいいと言えばそうなんですが、LDAC非対応ヘッドホンでもできるだけいい音で再生したいのであれば公開されているソースコードからBlueALSAをコンパイル作成しなければなりません。正直、これはちょっと厄介です。がしかし、私のような「ほぼ素人」でもなんとか独学でインストールすることに成功しました。BlueALSAソフトのフルインストール方法については後日、専用のサイトを立ち上げて詳細な方法について記載する予定です。なおバラバラで散文的ではありますがFc2のサイトには全ての経緯を記載しております。

最後にBluetoothヘッドホンです。理想は申し上げておりますようにLDACコーデックに対応した高級品です。ヘッドホンの音もやはり値段なりです。中華製は別としてLDAC対応ヘッドホンは思ったほどは多くありません。元祖SONYがその最先端を走り、なかでもWH-1000XM5がフラッグシップなんだと思います。私自身はその機種購入には至っておりません。その代わりになるかどうか、同レベルなんじゃないの?ということで同じ1000番シリーズのちょっと古いMDR-1000Xを使っています。でもこれが結構いい音聴かせてくれます。

MDR-1000X


勝手にテーマロゴにしてしまった私の大好きなハイエンドオーディオメーカー:Mark LevinsonのNo 5909がものすごく気になっています。Mark Levinsonなのでものすごくいい音がするんだろうなあと憧れます。でもさすがMark Levinson。価格も半端じゃありません。ちょっと手が届きません。

No 5909
(欲しい!)

残念ですがこれはしばらく保留です。でも、一度でいいからこれを使ってもっといい音を楽しみたいです。


移動中に聴くためとSONYのWH-H810を購入しました。MDR-1000Xに比べるとどうしてもワンランク音質が落ちますが、これはこれで結構いい音を聴かせてくれます。移動中であればこれで十分でしょう。小さく軽くて持ち運びやすい点がとてもいいです。移動中はこれが私のベストチョイスです。

WH-H810


以上です。これら機材があればハイエンド級オーディオを楽しむことができるようになります。先に申し上げた通り高級なDACもDDCも一切不要です。



方法

インストールしたXubuntu Core/Xubuntu Minimalシステムに音楽再生の基本となるMPDとCantataアプリをインストールしてBlueALSAの導入ができて機器が調整されたら、まずBluetoothヘッドホンのペアリングを行います。システムによって微妙に異なる部分もありますが、まず最初にターミナルを使ってBlueALSAで使用するヘッドホンに音声出力させるためにヘッドホンのMACアドレスを登録します。これがちょっと面倒なステップの一つですが、素晴らしい音のために頑張ります。

ターミナルを立ち上げ、

sudo nano /etc/asound.conf

と入力してasound.confという名前のファイルをエディターで開きます。そのファイルはBluleALSAインストール過程で作成されています。そのファイルには

defaults.bluealsa {
interface       "hci0"

profile            "a2dp"
}

などと記載がありますので、その中央部にヘッドホン名とMACアドレスを書き込みます。例えば、

#MDX-1000X
device        "04:5D:4B:40:C7:7B"

すると最終的には以下のようになります。

defaults.bluealsa {
interface       "hci0"
#MDX-1000X
device        "04:5D:4B:40:C7:7B"
profile          "a2dp"
}

もちろんMACアドレスはお使いの機器特有ですのでそれを確認して入力する必要があります。MACアドレスを確認する簡単な方法があります。まずBluetoothヘッドホンの電源を入れてペアリングモードにします。ついでデスクトップ右上にあるBluetoothマークをクリックします。するとBluetooth機器一覧が出てきて検索開始しますと、中に当該機器が現れるので、表記されるMACアドレスをすかさず書き写します。上記のようにしてasound.confファイルにそのMACアドレスを書き込んで、「ctl+X」とキーを押しますと「保存しますか」と聞いてくるので、「y」キーを押して保存して閉じます。その後MPDを再起動します。再起動によってMPDアプリがBluetoothヘッドホンのMACアドレスに直接アクセスできるようになります。

そのためにはターミナルに

sudo service mpd restart

と入力します。

次にBlueALSAを起動します。ターミナルに

sudo bluealsa -p a2dp-source -c ldac --ldac-abr

と入力します。お分かりのようにこれはLDACコーデックを介したBlueALSA
の開始命令です。BlueALSAをコンパイルした場合ですと、ここで次に何も表記されなくなってまるでターミナルが止まったように見えます。それがBlueALSAが稼働している状態です。Synapticでインストールした場合は起動命令後、なにやら一連の表記が出て稼働していることがわかります。ついでBluetoothヘッドホンを機器をペアリングモードにします。

これが最初のペアリングであればターミナルに、

bluetooth-wizard

と入力します。すると別ウインドウが現れてBluetooth機器検索画面が出てきます。表示された一覧の中にヘッドホンが現れてきたらそれをクリック反転させ右上方にある「Next」ボタンを押してペアリングを行います。ペアリングがうまくゆけば「Successfully」と出てきます。接続が成功してのちデスクトップ右上のBluetoothマークをクリックしてBluetooth機器一覧を表示させますと今ペアリングした機器が表記され、その右に3本の色付きバーが立ってPCとのコミュニケーションが行われていることを示します。Xubuntu Minimalですと次回からはヘッドホンの電源を入れてのちすぐに右上のBluetoothマークから直接アクセスできるようになるかもしれません。この辺りも煩雑な点ですが、いい音のためにオーディオファンは頑張ります。

これでペアリングしたBluetoothヘッドホンに音声出力ができるようになりました。Cantataで再生ボタンを押せばヘッドホンから音が出ます。もし音が出ないときは/etc/asound.confの設定ファイルにヘッドホンのMACアドレスが間違いなく入力されいているかどうかなど確認してみてください。



結果

BlueALSAの設定さえうまくいっていればちゃんとヘッドホンから音がでます。作成チャレンジ当初はこれがなかなかうまくゆかず、幾度となくトライアンドエラーを繰り返しました。そしてようやく、別に記載する方法でBlueALSAをコンパイルしてインストールすればまず間違いなく稼働するようになりました!上記のようにしてペアリング、再生すればほんとうに素晴らしい音が聴こえてきます。


比較試聴

この比較を行う基準としてChord Mojoと中華高品位DDCを用いた再生システムと愛機AKG K550MKIIIを用いました。


K550MKIII

これに対し、Bluetooth再生検討に用いたのはMDR-1000Xです。BlueALSAの特徴としてコーデックを指定して再生開始するのでそれぞれコーデックによる音の違いについて検討できます。この製品はLDACに加えAptX、AAC、SBCにも対応可能な優れものです。MDR-1000Xを有線接続して内部対照としました。

MDR-1000X


まず基準となるK550MKIIIです。あくまでもMacBook ProとDDC/Chord Mojoを使っての評価です。

これはかなり使い込んでいることもあってか、
高音は音の伸びが素晴らしく、倍音の響きが豊かで耳の奥に沁みる音がいたします。
低音は弱めですが密閉型であるため必要にして十分量に聴こえます。締まりある心地よい低音です。決して強すぎず弱すぎず。
中音域は特筆ものです。中音の美しさは特徴的で、主旋律がしっかりと聴き取れ楽器感をとても強く感じることができます。ヴァイオリンの少し渋くて濁った音、きらめく管楽器の音、オーボエなど木管楽器特有のややびりつく伸びのある響く音などなど。とても素晴らしいです。
このヘッドホンはAKGという音響メーカーの特徴でしょう、とても音場感が良くてまるで演奏会場で聴いているような錯覚さえ感じさせます。耳のすぐそばで音がしている感じがとても少ないです。


さて、MDR-1000Xです。

有線接続

まず内部対照としての有線接続です。有線接続ではAKG K550MKIIIの時と同じDDCとChord Mojoを用いました。
有線接続で聴いた時の第一印象は、音が少し弱め?というものでした。データー上音圧感度は98 dbありますが、その割に音が小さい感じです。しっかりとヴォリュームを上げて聴きました。
高音はK550MKIIIに比べますとほんの少し弱くて、伸びと豊かさが控えめな印象です。しかし耳の奥に沁みる音は時折聴こえ、比較的伸びと艶のある音です。
低音はまずまずしっかりと出ています。包み込まれるような低音です。締まりはK550MKIIIに比べると若干弱めで、K550MKIIIに比べますと多少ダブつき感があります。
中音は良好です。分解能がとてもよく、楽器感もしっかりと感じられまずまず悪くありません。
欠点として、K550MKIIIと違い耳のそばで音が鳴っている印象ががやや強めです。そのため音場感が少し低い印象です。しかし高品位な音であって低音が身体全体を優しく包み込んでくれます。全体のバランスも悪くありません。沁みる高音も表現します。


LDAC


LADC


Bluetooth接続の手始めとしてLDACの音です。再生を開始するにはターミナルで

sudo bluealsa -p a2dp-source -c ldac --ldac-abr

と入力します。最後の--ldac-abrというのはBluetoothの状態に応じて適宜、伝播条件を最適化して接続性を安定させるという指示です。これがないと時たま接続が不安定になったり音が途切れたりすることもありました。それから、たまにBlueALSAが開始される状態によってはコーデックがおかしくなっていて必ずしも命令した条件で開始されていないこともあるので、今の接続が本当にLDACなのかどうか確認します。そのためにはターミナルで

sudo bluealsa-aplay -L

と入力します。すると実施されているコーデックとサンプリング周波数が出てきます。LDACであれば96 kHzと表記されます。

その音です。
高音はやはり有線接続には微妙にかないません。沁みる高音が少ないです。響きがどうしても若干控えめとなります。ですが必要にして十分程度の高音が出ます。管楽器の伸びて広がる音も聴こえます。
低音は本製品の特徴でしょうか、有線接続よりむしろ強めです。音に包み込まれている感じがとても強くなります。しかし決してドンシャリ系の低音でなく心地よい抱擁感ある低音です。
中音はかなりしっかりと響きます。ヴァイオリンの濁ってビリつく音の響きやチェロの筐体が箱鳴りしている音などしっかり聴きとれます。楽器感はかなりしっかりと感じられます。
そして何より素晴らしいことは、LDACでは決して耳にキンキン来ることのない聴き疲れしない音であるという点です。長く聴いていても疲れず、いつまでもこのまま聴いていたい、と思わせるとても自然な音です。


AptX

AptX

次にAptXです。この上位コーデックであるAptX-HDはMDR-1000Xヘッドホンでは対応していないので検討できていません。
これを開始するにはターミナルに

sudo bluealsa -p a2dp-source -c aptX --a2dp-force-audio-cd

と入力します。最後の--a2dp-force-audio-cdというのはサンプリング周波数を44.1 kHzのCD音質にするというコマンドです。このコマンドがないとdefaultである48 kHz再生となります。もちろんそれも試したのですが、48 kHzだと音が硬くキンキンする感じが強いようです。BlueALSAではこの44.1 kHz再生を強くお薦めします。

その音です。
一聴してLDACに比べて幕が一枚かかったような感じです。若干ではありますがスッキリ感が低下しているのがわかります。
高音はしっかりと出ているのですがほんの少しギスギス感のある強めの高音、強調感のある音です。
低音はしっかりとでています。締まりも悪くありません。いい感じです。ただ、LDACに比べますとどうしても分離能が低めで明瞭さが乏しい印象です。
中音の響きはLDACに比べると劣ります。その結果、主旋律の響きと音楽全体の印象が若干乏しくなります。ヴァイオリンのやや濁った渋い響きも少しだけグジャっと押しつぶされて平たくなった印象で、LDACより楽器感が乏しく感じられます。とはいえ音自体は結構しっかりと出ています。
悪い点は高音と中音に音の強調感が強くその結果、聴き疲れしやすいということです。defalultの48 kHzだとそれがさらに強くなります。正直、私はあまり好みではない音です。例えるならシャープネスの強い画像といったところです。もちろん人によってはLDACより音がくっきりはっきりしてこっちの方が好きだという方もおられましょう。


AAC


AAC

AACコーデックの開始は

sudo bluealsa -p a2dp-source -c aac

とターミナル入力します。これだとサンプリング周波数が48 kHzとなってしまいます。ですがAACでは高音、中音のキンキン感が全体に少なく、44.1 kHzで再生するより48 kHzの方がスッキリしていて透明感の高い音となるので、ここでは敢えて--a2dp-force-audio-cdとは入力せずに使います。逆に言えばすこしぼーっとした音なのかもしれません。それをくっきりさせる効果がこれで得られるように思います。
AACの音は「小ぶりのLDAC」という印象です。48 kHzであるためか音の透明感はAptXよりも若干しっかりしていて、音全体としても意外に悪くないという印象です。しかも聴き疲れしにくい音です。
低音、高音、中音など音の特色もLDACよりひとまわり小ぶりの印象です。案外悪くないかもという感じの音ですが、音の解像度、明瞭度はLDACやAptXより低いです。


SBC


SBC

SBCですが、なぜか私がコンパイル作成したBlueALSAではうまく再生できませんでした。SBCと指定して再生開始してもなぜかAAC再生となるのです。BlueALSAとしてはちゃんとインストールできておりSBCのみに対応するイヤホンではちゃんとSBC再生されますが、なぜかMDR-1000Xだとうまくゆきません。これはB&W Px-7でも同じ現象がおこります。しかしわざわざ低位コーデックで聴くこともなかろうと検討しませんでした。



考察


LDACはソニーの開発したBluetoothコーデックで96 kHzのハイレゾ対応でその高音質が注目されています。AptXはアメリカのクアルコムが開発した高音質コーデックで、最近登場したAptX-Adaptiveでは96 kHzにも対応できるようになっています。ちなみにこれらコーデックは全てA2DPと呼ばれるプロトコール下のBluetooth接続です。他の接続法もありますが一般的ではないのでここでは言及しておりません。LDACはソニーを中心としていつくかの音響メーカーが対応製品を販売しています。ソニーのWH-1000Xシリーズはフラッグシップで高音質を誇ります。アメリカの音響専門メーカーMark LevinsonもLDAC対応ヘッドホンを発売しました。その他、日本のオーディオテクニカやアメリカのShureなども販売しています。中国メーカーも比較的多くのLDAC対応ヘッドホンを発売しています。一方、私が好んで使っているオーストリアAKG社はLDAC対応ヘッドホンは発売しておらず、AptXシリーズで止まったきりのようです。AKGのN60NC Bluetoothヘッドホンを所有しておりますが、この製品もAptX対応ですがLDAC非対応です。本当に残念です。むしろAKGはBluetoothヘッドホン市場から次第に撤退しているようにも見えます。この辺り各メーカーの事情と方針があるようです。英国のB&W社もAptXシリーズ対応しかしておりません。どうもヨーロッパ系はクアルコムがお好きなようです。

高音質と言われているLDACの音をとにかく聴いてみたいということで中古のMDR-1000Xを購入しました。それまで持っていたBluetoothヘッドホンあるいはイヤホンはAptXあるいはAptX-HD止まりでした。入手したMDR-1000Xは最初Macで聴きましたが、なかなかいい音に感じられました。しかしLinuxオーディオのあの透明で澄み切ったダイナミックレンジの広い音と比較しますとMacの音は足元にも及びません。

なんとしてもMDR-1000Xを使ってLinuxオーディオを聴きたいと考えチャレンジしたのは「PulseAudio」というALSA音声出力法をコントロールするシステムを使った再生法でした。その詳細は別に譲りますが、Synapticアプリを使って条件を整え、Pulseaudio-modules-btというのを別にインストールすればLDACやAptXに対応した音声が出力できるようになりました。正直なところ当初はそこまではBlutoothの音には期待していませんでした。PulseaudioでBluetoothが使えるよ設定して音出ししました。その時はAACコーデックとなっていたようです。そもそもコーデックというのがあるというのは知っていましたがそこまで音が違うとは考えたこともなく、コーデックを指定して再生しようと考えたことなどありませんでした。PulseAudio-Bluetoothをインストールしたことによってコーデックを変えてみる必然が到来したのです。

PulseAudioで聴くと明らかに上位コーデックの音の方がすっきりしており、気持ちよく感じられました。でもだからと言ってこれを日頃使いにしようとは考えてませんでした。何かしら聴き疲れのする音で、いつまでも聴いていたいという気持ちにはなれなかったからです。LinuxではダイレクトにALSA出力させることによって劇的に音質が向上します。それゆえデスクトップ環境ではMPDアプリを使いALSAでダイレクトにUSBデジタル出力、DDC/DAC音声変換して美しい音で聴くことができます。PulseAudio経由のBluetoothヘッドホンの音も悪くはなかったですが、Bluetooth経由でALSAにダイレクトに出力する方法があればいいのにと考えました。そこで調べてみるとBlueALSAというソフトがあってまさにそれが私の求めていたものだということがわかりました。なんとしてもこれを使って音楽を聴いてみたいと思いました。ところがBlueALSAについてはさすがのネットでも記載が多くありません。Raspberry Pi関連ではすこし出てきますが、一般的なLinuxオーディオとなりますとほとんど見つかりません。いろいろ探してみてSynapticソフトウェアインストーラーを使って「bluealsa-utils」というのを見つけたのでインストールしてみました。ところが何をどうやってもALSAからの音は出ません。いったい何がどうなっているのかさっぱりわかりませんでした。そのような状況から出発し、最終的にはBlueALSAをコンパイル作成して使えるところまで漕ぎ着けることができました。ここまで来るには相当な時間と苦労がありました。途中何度諦めようと思ったことか。正直、我ながらよくやった、よくやるよ、と思います。そのうち「この方法に従って作成すれば確実にBlueALSAがインストールできるサイト」をたちあげますので是非ご覧ください。

BlueALSAをインストールすると必然的にコーデックを指定して再生を開始しなければなりません。結果、各種コーデックの直接的な比較ができるようになりました。PulseAudioのBluetooth接続ですと各種コーデックが使えるヘッドホンであってもなぜか特定のコーデックだけが使えなかったりして、コーデックを詳細に比較検討ということまではちょっと考えませんでした。また比較してみていい音の方で聴こう、というほどの音にも感じませんでした。PulseAudio経由のBluetoothサウンドはどこか硬くて聴き疲れする音に聞こえたのです。

これに対してBlueALSAはいい音といえます。SBCコーデックで聴いた時でもPulseAudioとは比べ物にならないくらいスッキリとしていい音に感じられました。もしかして上位コーデックで聴けばもっと素晴らしい音なのではと考えました。そして実際その通りで、検討の結果やはりLDACが最もスッキリして細密で明瞭であるが柔らかで聴き疲れしない音がするという結論に至ったのです。

さすがに有線接続と比較すればどうしても少しだけ音質は落ちます。これはDACの品質を含めたそれぞれヘッドホンの構造的な問題であったり、Bluetooth経由ということの限界、LDACの限界ではないかと想像します。しかしBlueALSAでLDACを使った再生法では高価なDDCやDACを用いることなく、ヘッドホンの価格だけで有線接続に勝るとも劣らないくらい素晴らしい音を聴くことができるということがわかりました。

ソニーはLDACを96 kHz対応で最上位コーデックと位置付けているようです。これに対してクアルコムのハイレゾタイプであるAptX-AdaptiveはBlueALSAは対応していないので検討できておりません。残念です。ただ、AptX-Adaptiveの音質評価を見ますと、どうもAptX-HDに似たような傾向音ので、例えると「AptX-HDよりも画素数を増やしてシャープネスを少し弱めにした画像」のようなものではないかと勝手に想像しているところです。勝手な想像なので何とも言えませんが、LDACの方に軍配が上がりそうに思えてなりません。今所有しているB&W Px7はAptX-Apdaptive対応なので是非試したいところですが、ライセンスの問題もあって今のところBlueALSAはこれに対応しておりません。今後の展開に期待します。


以上、定量性のない個人の耳に依存したいわば勝手な書き込みです。プレーヤーの音の再現性を確認する測定方も確かにあるようですが、高音域と低音域のごく限られた部分の差異がほんのわずかに認められる程度の差のようでとてもこれが音の素晴らしさを分析しているとは言えないと感じました。ネットで見ても、音の素晴らしさを定量する測定方法は今のところなさそうです。これについてはまたじっく研究してみます。今後もしばらく今の方針で自分の耳と感性で勝手に音の評価もどきを行ないます。

BlueALSA+LDACはとっても素晴らしい音です!ハイエンドクラスのオーディオと演奏と音楽を聴かせてくれます。

BlueALSAの生みの親 Arkadiusz Bokowyさんのロゴ



追記
Mark Levinsonのロゴをこの記事のタイトル画像として勝手に使いましたが、これは単に「ハイエンドオーディオ」の象徴的意味合いです。もちろん私はMark Levisonが大好きです。高嶺の花ではありますが。そしてMark LevinsonがLDACを採用していると言う点がこの記事の肝かもしれません。




ベネチア またいきたいな

2023/6/16

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