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映画 「遠いところ」 大島渚賞 記念上映会

第5回大島渚賞記念上映会にて鑑賞。沖縄コザの街の風土と社会を背景として、幼児を抱えた少女アオイがどうしよもない波に流され落ちていく様を描く。 現実を映し出す映像と光と闇の表現が印象に残る。キャバクラの店内は輝き、クラブの色とりどりの閃光が少女たちの狂騒を照らし、移動する車のフロントガラスに電飾のライトが流れる。少女たちが生きる虚構の闇を人工的な光が照射する。ビルの屋上から夜の街を見つめる少女の後ろ姿に絶望を禁じ得ない。 少女たちは陽光の下海辺に戯れ、家の中庭で子供が日差し

    • 「花腐し」 女優 さとうほなみの魅力

      男女の性愛を描くのに長けた荒井晴彦監督の演出によって、さとうほなみの輝きがスクリーンに照射される。モノクロの画面に心中してしまった祥子が、雨に腐る情けない二人の男の記憶の中でカラーの画面で生きた女としてよみがえる。荒井監督の好きな大滝詠一「君は天然色」の歌が効果的に使われている。 「顔、ぶたないで。私、女優なんだから」薬師丸ひろ子「Wの悲劇」の台詞が引用される。「ヒミズ」の二階堂ふみや「タイトル、拒絶」の伊藤沙莉のときと同じように、私はこの映画で女優さとうほなみを発見した。

      • 生誕120年 棟方志功展 メイキング・オブ・ムナカタ 私の美術ノート

         東京国立近代美術館 2023年11月11日 プロローグ 出発地・青森 「白樺」に掲載された向日葵の写真を見てゴッホになることを決意した。その後の生き方を暗示するように。 第1章 東京の青森人 柳宗悦と濱田庄司は棟方志功を発見する。民藝との幸福な出会い。 東北の飢饉の悲惨に抗い鬼門仏は自らの身を割って犠牲となる。 釈迦十大弟子の板木は夫人の機転によって空襲を逃れ、福光に疎開することができた。後に彫られた柔らかな菩薩が添えられた作品に、国際美術展での受賞という栄誉が与

        • 映画 「さよなら ほやマン」 記憶は再生されないが海は光輝く

          完成披露試写会にて鑑賞。 色鮮やかな映像と心躍る音楽に彩られて、海に囲まれた東北の島に登場人物が躍動している。震災と過去の様々な記憶の断片が乱反射して、それが人間の心に及ぼす影を描く。冒頭のムービーに登場するほやマンが誰であるのか。映画はその答えを徐々に解き明かしていく。 カップラーメンを食べながらマンガを読みふけるシゲルのぼさぼさの髪に、アキラが庭でバリカンを入れている時、荷物を引き摺り携帯を持った美晴が二人に声を掛ける。「ねえ、その家私に売ってくんない」都会から来た得

          「福田村事件」 少年と二人の少女

          朝鮮人の少女は何故殺されなければならなかったのか。 福田村事件を今此処に生きる私の目前に現実として蘇らせるため、脚本に様々なエピソードが多角的な視点で練り込まれ、生の人間の営みが描き出される。朝鮮の少女は飴を買って貰ったお礼に、可憐な扇子を讃岐の部落から来た薬売りの親方に引渡す。母国語の自らの名前を告げる悲痛な叫び声が新宿の映画館に鳴り響く。 ドキュメンタリー「放送禁止歌」で森達也のことを初めて意識した。その時から岡林信康の「手紙」は私にとって忘れられない歌となった。森達

          「福田村事件」 少年と二人の少女