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短編小説を読んでみる⑤

占い勉強中のあやです。

さて、今回の短編小説はなんと136ページ!という有難いほどに薄い本です。出かける時にも軽くていい感じにバッグに入れられます。
でも文字がちっさ!間違いなくあと5年もしたらさらに目が悪くなって読めないかも…

* 改訳 愉しき放浪児 
アイヒェンドルフ著  関 泰祐訳        岩波新書 

題名がいいですね。こういう感じ好きです。

物語が、水車小屋の車の楽しげな音から始まるのですね。父親が、怠け者の息子に言うのです。

「こののらくら者め!もうまたひなたぼっこをして、だるそうに背を伸ばしてやがる。そして仕事はみんなわし一人にさせるのだ。もうこれ以上お前なんざ食わせておけない。春も戸口に来ているし、ひとつ、お前も世間へおん出て、自分でくらしの道をたてろい。」   
「愉しき放浪児」より


こういうサバサバしたお父さんっていいなあ。
主人公はサッサと自分がうまく弾ける旅の相棒のバイオリンと、父親がくれた旅費を持ち、題名の如く世にさまよいでるのです。

ルルルーラララーていうのんきな歌ではなく、彼はちゃんと詩をつくり音楽に乗せて歌える、ある意味才能のある男の子なんですが、父の元では活かせなかったのでしょう。バイオリンを弾きながら歌を歌っていると、一台の馬車に乗った二人の女性に出会い、ロマンスがはじまるのです。

作者はドイツの方。ドイツ浪漫派の小説になるようで、自然の美しさや感情の昂まりによって人が歌ったり、踊ったりするのは素敵なことだなあ、とこの本を読みながら思いました。こういう本を読むと、なぜか「ロシュフォールの恋人たち」というフランスのミュージカル映画を思い出します。何度も何度も観ました。


ヨーロッパのこういう雰囲気っていいですよね。

さて、小説の主人公は恋をした女性を伯爵令嬢と思い込み、とある誤解から働いていたお屋敷を飛び出してしまうのですが行く先々で手が差し伸べられ、最後は誤解も解けて愛する女性と結ばれるっていう、いい物語です。こういうお話って、ルルル〜ラララ〜♪でハッピーに終わってほしいですからね!

さて、このお話しは1826年に書かれたということですが、訳の力もあるのでしょうが瑞々しさがあります。
昭和13年に文庫版を全面改訳して出されたものらしく、奥付は1938年第1刷り発行となっています。

1937年には日中戦争が勃発し、この本が発行された1938年は国家総動員法が発令されています。紙事情も相当悪かったでしょうから小さな文字での出版も致し方ないでしょう。この時代、アメリカやイギリスの小説はご法度だったでしょうね。それでも、戦時下、ドイツ文学の中からあえてこういう
ルルル〜ラララ〜♪な本を出してくれた岩波書店の方々に敬意を表したいです。

薄い本、やはり愛おしいです♡

ここまでお読みくださり
ありがとうございました🌻

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