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別れ、強さ『花束みたいな恋をした』

ざっくりあらすじ

 何となく現状に不満を抱える大学生、山音麦(菅田将暉)と八谷絹(有村架純)。ある日、二人は同じ駅で終電を逃す。行くあてもなく、飲みに行く二人だったが、そこで思いがけず意気投合する。
 そして、デートを重ねる二人は、やがて付き合うことになり、ついには同棲することになる。

花束みたいなの花束とは

 出会って間もない二人は、できる限り二人で過ごし、飽きるまでセックスをした。
 どこまでも感情的な麦と絹の恋は、花でありながら根を張らない花束とよく似ている。
 現実に根を張らない二人の恋は、やがて枯れてしまったが、花束のようにその刹那非常に美しいものであった。

身近さとリアルさ

 この映画は、いい意味でとても俗物的であった。
 それというのも「ゼルダの伝説がゾーラの里までで止まってしまった」とか「新海誠がいつのまにかポスト宮崎駿になった」とか、その時代を象徴する固有名詞を用いたことによるものだと思う。
 この俗物感に親近感を持つことで、麦くんと絹ちゃんが本当に存在しているかのようなリアルさを感じる。

絹ちゃん、結婚しようよ

 別れ際に限って別れたくなくなるあの感情はどこから来るのだろう。

 現実的、客観的にみると別れた方がいい関係でも、どうしても受け入れがたく感じてしまう。
 その受け入れがたさからくる、麦の「結婚しようよ」は、子どもの駄々のようで、見ていても辛いものがあった。
 きっと、麦もうまくいくはずがないとわかっていただろうに。

別れるという選択の強さ

 絹が読んでいた恋愛のブログを書いていたメイさんは、自殺してしまう。
 失恋が理由となったのかは語られないが、もしそうであったなら、メイさんにとって恋が終わり、別れなければならないことは耐え難い絶望であったのだろう。

 それに対し、絹と麦の二人は、笑って別れようとする。
 別れ話をする時こそ泣いてしまった二人だが、別れた後、映画を見に行ったり、ましてや、浮気したことあるでしょうと聞いてしまえる二人はなんて強かなんだろう。
 別れも美しい恋の一部だと感じさせられる二人の物語は美しい。
 この恋を花束にできたのはきっと二人だったからに違いない。

蛇足な感想

 あくまで男目線の感想です。

画像引用元
映画『花束みたいな恋をした』公式サイト
https://hana-koi.jp/

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