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小さなお花屋さんのお話①〜男の子〜

自然が豊かな町にある、
小さなお花屋さんのお話。

お花が大好きな店主がお店に立つ
小さなお花屋さん。

そこは時間がゆっくり流れるような
のんびりした場所。

ある日のお昼過ぎ、
1人の子どもがそのお店を訪れました。
小学校低学年くらいで
可愛らしい男の子。

「お花ください。」

「こんにちは。どんなお花にしましょうか?」

「仲良くなれるお花ありますか?」

「誰かと喧嘩したの?
それとも仲良くなりたい誰かにあげるのかな?」

「お父さんとお母さんにあげるの。
ねぇ、どうして人はケンカするのかな。
怒ったり、泣いたり…見たくないな。」

「お父さんとお母さんが大好きなんだね。」

「うん。僕は2人の笑った顔が好きなんだ。笑ってて欲しい。」

「話してくれてありがとう。ちょっと座って待ってて。」

黄色のダリア(蛍星)
ユーカリポポラス 
セルリア、トルコ、
オレンジバラ(フォセット)
ヒペリカム…

オレンジと黄色でまとめた花束と
同じ花を使った小さい花束を店主は作ります。

そして、出来上がった2つの花束を
男の子に手渡しながら、店主が言います。

「お父さんとお母さんだって好きで喧嘩しているわけじゃないと思うよ。心が少し傷ついて疲れているのかもね。お花だけじゃすぐには仲直りできないかもしれない。
でもね、お父さんとお母さんのことを思って、笑顔にしたくてお花をプレゼントした君の行動は、とっても素敵だと思う。この優しい気持ちはきっといつか巡り巡って君のところに帰ってくるから。
だからきっと大丈夫。
辛くなったら、悲しくなったら、いつでもここにおいで。」

「うん、ありがとう。」

男の子の後ろ姿に店主が囁きます。

「優しい君に幸あれ。」

ここはお花が大好きな店主の小さなお花屋さん。

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