日本で生きるということ〜ラグビー・釜石〜


ラグビーワールドカップをずっと楽しみにしていた。


松尾雄二のいる新日鉄釜石の大活躍は、高校教師としてラグビー部の素人監督をやっていた父の影響で夢中になって見ていた。


同世代の平尾誠二が引っ張り、大学ラグビー華やかなりし時代には、毎週のように秩父宮に足を運んでいた。


神戸のファンゾーンにあった平尾誠二コーナーにて

縁あって東北に住んで25年。(そういえば、父も学生時代を東北で過ごしている)


ワールドカップはまさに「一生に一度のチャンス」と思い、ボランティアに応募し、運よく釜石のボランティアに当選した。それだけでなく、どうしても「観戦」もしたくて、釜石での2試合目の「ナミビアvsカナダ」のチケットも手に入れた。前日ボランティア、当日は観客の予定だった。


普段、スポーツボランティアに関わっているけれど、このラグビーワールドカップ・釜石でのボランティアや観戦は完全に「いちオールドラグビーファン」として夢の舞台だった。


ボランティア詰め所から見た9月25日試合終了後のスタンド

9月25日、釜石に来て、ここは本当に多くの人たちの夢の舞台なんだと感じた。観客は「古き良き時代のラグビーファン」「被災地の小中学生」がいっぱい。皆笑顔がはじけている。ボランティアは全国各地から集まり、大学生をはじめとする若い人がとても多い。観客に負けないくらいの笑顔で場を盛り上げている。そして、この大会を成功させるために、力を注ぎこんだ地元釜石の人々。市外から来るすべての人たちを気持ちよく迎えようと、自分たちは試合を見ることもなく、仕事に励み、笑顔を届けてくれている優しくてまじめな人たち。


9月25日ワークフォースサポートの活動の様子

その集大成となるはずの第2戦、10月13日を前に強烈な台風が日本列島に向かってきた。


ボランティア向けに何度かメールが届いた。「試合が行われるかどうかは未定です。ボランティアは無理をしないように」と。


悩んだけど、結局私は12日早朝、釜石に向けて出発した。たぶんやらないだろうと感じつつ、釜石に行って、この状況を自分の目で見ようと無理をした。(これが正しい行動とは思っていない)


雨の中始まったボランティア活動だが、台風の進路と本部の判断が気になって皆集中しきれない。足元の泥水は少しずつ増え、風の音もだんだん強くなる。マネージャーたちはせわしなく本部と連絡を取っている。



13時、結局ボランティアの帰路の安全等を考慮し活動は終了となった。試合があるかどうかは未定。キックオフ6時間前に決まるという。


明日の再会を信じて笑顔で解散するボランティアチーム

釜石市内に戻り、コンビニで食料を買い、ホテルにこもる。雨はだんだん強くなり、スマホは緊急エリアメールをけたたましく告げ、外では避難指示のサイレンや放送が鳴り続く。


熟睡できない夜を過ごし、朝を迎えた。雨はほとんど止んでいるものの、道路は泥で埋め尽くされていた。そして、試合中止の連絡。



一番に浮かんだのが、私たちのボランティアチームをまとめていたサブワークフォースマネージャーの顔。釜石市から出向し、本当に一生懸命、寸暇を惜しんで大会の準備をし、ボランティアのことを真剣に考えてくれ、心からこの日を待ちわびていたS氏。おそらく彼は今すべての感情を押し殺し、スタッフとして、行政マンとして、目の前にどんどん積みあがっていく仕事を黙々とこなしているに違いない。



自然の前に人間は無力だ。


スポーツは、そこに平穏があってこそ成り立つ。


キックオフ予定時間、私は鵜住居競技場の近くに行った。たくさんの人が大漁旗を振り、釜石のせめてもの気持ちを表現するというので、混ぜてもらった。



悔しいほどの青空が広がっていた。


残念で、残念で仕方がない。悔しくて悔しくて仕方がない。


でも、この判断は適切だったと思う。それしかなかったと思う。


日時をずらして開催をとかもっと早く決定を、という声もあるだろうけど、それも含めて、これしかなかった気がする。


たぶん人生にはこういうことが何度かあって、


特に環太平洋造山帯にあり、アジアモンスーン気候の日本では、こういう自然の大暴れの脅威に常にさらされていて、人々は諦めと再生の文化を築いてきたのだろう。


少しずつ時間が釜石の無念を癒してくれることを祈るばかりだ。


ラグビーワールドカップは、日本代表の大活躍でますます盛り上がっている。


スポーツは人々の心を一つにしたり、心を元気にしたり、仲間を作ったりするのに絶大な力があると私は信じている。


ボランティアとしても、観客としても、私のワールドカップはまだ消化不良のままだけれど、


これからは「いちラグビー大好きおばさん」として、ワールドカップを自宅テレビでじっくり楽しもう!


世界最高のラグビーが見れる、至福の瞬間が心から楽しみだ!


日本頑張れ!


(フランスも頑張れ!…実はフランスファン(;^_^A)


ラグビー最高! 


ラグビー万歳\(^o^)/


そして心から、釜石、ありがとう!



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