死ねない男【ショートショート】

ホテルの一室。下っぱの俺は上からの依頼で中学生位のませたガキと一緒にいた。「ねえおじさん。明日はどこへ行くの?」「さあな。おじさんじゃねえから分かんねえ」「なにそれ」このガキは人をやたらめったらおじさん扱いし、下らないことを一日中聞いてきた。だから今日はめっきり疲れた。そんな悪いわけでもなかったが。
プシュー
突如、部屋の隅から異音が聞こえた。振り替えるとそこから毒々しい色のついた煙が流れ込んできた。すぐに部屋から逃げ出そうとしたが間に合わず俺の意識は飛んでいった。気がつくと、部屋は煙が充満していたのが嘘のように元に戻っていた。「そういえばあのガキは…」そして俺は床に伏しているガキを見つける。「おい!」体を揺さぶる。反応がない。呼吸もしていないみたいだった。「いやぁ、あの噂は本当だったんだな」部屋の扉が開き、そこから黒いスーツでがたいのいい男がにやけながら入ってきた。「はじめまして、死ねない男さん」俺にはなにも分からなかった。誰なんだよ。なんで笑ってやがんだ。死ねない男ってどういうことだよ。色々な疑問が頭を支配した。それと同時に、自分の呪われた人生が始まってしまうのだと直感で感じとってしまった。ああ、なんで俺は生きてしまったんだよ。

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