見出し画像

雛はどこに行った(悲劇の2023年)

この話は「牛久沼の新しい生命2023」の続きとなる

2023年5月に誕生した2羽の灰羽はこのあと過酷な運命が待っていた。

2023年5月20日 かなり遅れて孵化した2羽の雛

2023年の牛久沼水辺公園に誕生したコブハクチョウの雛は、例年よりかなり遅く5月20日近くになってようやく孵化した。


2023年6月9日水害1週間後 本来の巣は緑ロープより手前でもちろん水没

孵化してから2週間ほどのち、2023年6月2日牛久沼は85年ぶりの大水害に見舞われた。

6月20日ようやく水が引き始める 元巣があった辺りを泳ぐ

雛たちがいた巣のあたりは完全に水没したが、雛たちは隣の田んぼに避難して無事であった。
そのまま順調に育っていた矢先に悲劇が起きた。

7月29日八間堰外谷田川に”追い出された”雛たち

牛久沼唯一の出口にあるのが八間堰(はっけんせき)で、沼の一番南側にある。
もともと八間堰は2022年から老朽化による補修工事に入り、2023年春に終了予定だったが
水害を受けて大幅な改修工事に変更された。(2024年6月現在も工事中)


八間堰の前に鉄板が打たれハクチョウが沼に戻れなくなってる(国道6号谷田川橋より)

しかし、この工事のどさくさに紛れて十数羽の沼にいたコブハクチョウが八間堰の外の谷田川に追い出された。
最初は工事に伴う一時的なものと思ったが…


8月8日谷田川、なんとか堰の中に戻ろうとするハクチョウ

2023年は過去最高の猛暑といわれ、この地域も例外ではなかった。
その猛暑の中、狭い谷田川で沼に戻ろうとずっと待機をするハクチョウたち

八間堰(牛久沼側)堰を挟んで両側を鉄板で塞いでいるのがわかる

しかし、沼を管理する側はもう戻す気がなかった。
2022年12月から23年2月にあった鳥インフルエンザ騒動も影響したが、牛久沼のコブハクチョウの数を減らす方針なのは明らかであった。
かつて水辺公園ではシルバー人材センターの人が朝と夕の2回、ハクチョウに餌を与えに来ていたが、2022年の公園立ち入り制限後は餌やりを廃止している。

8月13日谷田川 まだ諦めずに沼に戻ろうと待っている

しかし、こんな誰が見てもわかる追い出しを駅の近く、国道の近くで堂々とやるものではない。

同日谷田川国道6号谷田川橋の上から
牛久沼側から 手前の赤い橋は八間堰の橋(通行不能)奥の薄黄色の橋が国道6号谷田川橋

コブハクチョウたちの”待機”は真夏の1か月以上続いた。
それに変化が出たのは8月末に数百匹で牛久沼に入ろうとしたレンギョが堰付近で暴れていたころである。

8月26日レンギョが遡ろうと必死に飛び跳ねる数百匹はいた

レンギョが水門を占拠するとハクチョウたちは少し離れた国道6号の橋まで移動した。

8月29日国道6号谷田川橋の上から12羽がたむろする
堰は鉄板で囲った内側の水を抜き出した 奥に牛久沼がみえる

このレンギョたちの最期は悲惨であった。1匹残らず死に死体は谷田川を埋め尽くした。

レンギョも遡上して沼に入ろうと必死

住宅地に近く腐臭がひどいため、死体をきれいに片づけた。かなり大規模に人が入ったのだろうか。
その際作業の妨げになると、ハクチョウをさらに谷田川の下流側に追いやったことは想像できる。

9月3日国道6号谷田川橋 一気に数が減ったが

いずれにしても、このレンギョ事件後ここにいたハクチョウは数を減らした。
親子とその他の計5羽、そして国道6号谷田川橋よりひとつ小貝川寄りの堤橋(龍ケ崎市駅入口交差点)の下に1羽と計6羽に半減している。

9月17日 人が来ると餌をもらえると思って近づいてくる


9月24日 谷田川を下って旧国道6号幸谷橋(奥の赤い橋)付近まで南下する親子たち
手前は朝日橋

9月中はこの6羽が谷田川を行ったり来たりを繰り返していた。
10月になるとメス親と思われる1羽と幼鳥2羽、それから堤橋の1羽の4羽に減る。


10月11日 堤橋から国道6号谷田川橋まで遡上する親子


堤橋にいつもいる1羽

10月下旬になるとその親子も姿を消した。


10月23日国道6号谷田川橋から小貝川方面、堤橋(手前の車が並んでいる橋)の先に1羽みえる

最後まで残った堤橋の1羽も年末までいたのを確認しているが、2024年になるともういなくなっていた。


10月28日谷田川 堤橋下の1羽


谷田川と小貝川の合流点 牛久沼水門 水門の先に白いものが複数

10月28日に消えたハクチョウたちを探しに谷田川と小貝川の合流点まで行ったが手がかりはなかった。

水門を越えて谷田川に入ってきた5羽の親子 往還橋(赤い橋、旧水戸街道)が谷田川の牛久沼方面入口

そのかわり、牛久沼で生まれたのではない親子に会った。
白羽2羽、灰羽1羽のこの親子は小貝川下流のどこかで誕生して、小貝川を遡上してきたようである。

親子の構成は白羽2、灰羽1の3羽の幼鳥と親鳥2の計5羽。牛久沼の親子とは別

この親子が牛久沼水門付近を縄張りとしたため、八間堰から追い出されたハクチョウたちは水門付近に滞在することができず、水門の先に追い出されたのだろう。

コブハクチョウは、子育て中のオス親が広い縄張りを持ち凶暴な傾向がある。(なかには弱いオスもおり縄張りを維持できず逃げてしまう)

牛久沼で誕生したほうが最後メス親だけになったのは、こいつに負けてオス親が逃げたからかもしれない。もっとも秋になれば片親でも問題ないが。

11月11日谷田川 みえにくいが左下に1羽いる

こうして八間堰から追い出されたコブハクチョウたちは年明けまでに全ていなくなった。

12月16日谷田川堤橋 最後まで残る1羽

しかし、これは本来しっかり管理すべき外来種のハクチョウを、無責任に管轄外の場に拡散するという最悪の選択だった。
このことに関して管理当局は責められても仕方ないだろう。

2024年1月6日、小貝川下流の高須橋(取手市高須)を久しぶりに渡った。小貝川牛久沼水門より2km下流になる。

2024年1月6日小貝川高須橋付近

今までここではコブハクチョウを見た記憶はなかったが、橋の上からたくさんの白い鳥らしきを見て、あわてて土手の道に入り(駐車場がある)川をみると

プライバシー保護のため一部加工

全部で11羽のコブハクチョウがいた。

灰羽1羽目


灰羽2羽目

灰羽の幼鳥が2羽、八間堰から追い出されたのは12羽でこちらは11羽
1羽は年末まで谷田川にいたから、偶然か勘定にあう。

水門外に追い出されたのは12羽ほど 白の若鳥(瘤がない)も1羽確認できる

地元の人にあとで聞いたが、高須橋にコブハクチョウが集まりだしたのは昨年11月くらいからだという。少しタイムラグがあるが谷田川から1羽残して全て消えたのが10月下旬。確定ではないが、この辺りでそれだけ大量のコブハクチョウが移動したのは谷田川しかないので、可能性は高い。


2月1日牛久沼水門 幼鳥はいなくなり親鳥2羽だけになっていた

2月1日には牛久沼水門にいた幼鳥らしき3羽が加わり幼鳥が5羽みられた。牛久沼水門は親鳥2羽しかおらず、こちらは親離れしたようである。
加わった幼鳥3羽は牛久沼水門から来た可能性が高いとだけ伝えておく
そもそも高須橋のコブハクチョウだって谷田川から来た可能性が高いとしか言えないのだから。

追記
コブハクチョウが空を飛んで牛久沼に戻る可能性も考えたことがあった。
だけどそれができるなら、1か月も堰の周りをうろうろするだろうか。

2023年7月29日公園に残った14羽のコブハクチョウ

もともと棲息していた牛久沼水辺公園で個体数が増えているかを確認すればすぐわかるが…

9月3日の牛久沼水辺公園は10羽しかいなかった

鳥インフルエンザ禍と水害による堤防かさ上げでそもそも公園に入りにくくなっている。

10月29日はこれが全部、11羽しかいない

いずれにしても10羽前後で推移しており、大きく個体数が増えたことはなかった。

12月9日は9羽しかいなかった

これは2024年に入っても同じで6月に行った時も9羽しか確認できていない。

12月26日も9羽

牛久沼に戻った可能性は極めて低いといえる。

谷田川、八間堰方向 手前の橋は堤橋

そもそも谷田川自体が掘割のようで深く川幅が狭く、橋が短間隔で頭上に架かっているためハクチョウが飛び立つには不適当な環境である。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?