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やさしいストーリー32


雨の予感を孕ませた雷の音
雨を降らせることなく遠ざかった

期待と安堵と少しだけ裏切られた気持ちが一気に押し寄せた

夏の午後
アイスコーヒーをかき混ぜながら
遠くに走る稲妻に魅入っていた

こうやって、何かを待っている自分が居て
でも、何も変わらない時が過ぎて‥

季節はただ終わっていく

心の底に何かを残すはずの夏‥
通り過ぎるのを
ただ黙って見ている

でも‥

その何かは、もっともっと先の
ふとした瞬間に
きっと見つかる

再び訪れた眩しすぎる時間に
直ぐにはついていけずに
疲れを感じてしまった

いつも
この季節に恋焦がれている

今、その夏は目の前に居る
なのに
触れることなく見送ってしまう

過去に掴まなかったあの人への
想いの様に‥

夏は
失くすと切ない‥
去っていく後ろ姿を見送るのは‥
それはどうしようもなく辛い‥

生きていく限り巡りくる時間
でもいつかは来る永遠の別れ

今は、心の準備なく
その季節に再会してしまった
焦りを感じているだけ

でもそこに‥
意味を持たせる事ばかりに
囚われてはいけない

あの
ただ、静かに遠雷を見ている時間は嬉しい豊かな時間だった

それを大切にすればいい
今は
ただそれだけ‥











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