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最後の棘

もう これ以上何も身体に刺さっていない
そう思っていたのだけれど

人の縁というものは不思議で
私の感情は、凪にはならず

どうして棘が残っていると
気づいてしまったんだろう
抜けば確実に出血する
でも 抜かなきゃ傷は閉じない

確かに棘があることは知っていた
小さい棘だから放置可能だと思って
のんびり観察していた程度の棘だ

それでも時々違和感を感じていたのは
この棘の存在だったようで
思ったより大きな棘
いや 小さいけど核心に触れている棘

ちょっとした弾みで抜いてみようと
その患部をよく見てみたら
血を見ずに抜けるとは思えず躊躇う

私にとっては棘なんだけれど
棘の主にとっては意味不明な棘扱い
当時は説明しないほうが良いと判断したけど
今は伝えてみたいと思う

トラウマに立ち向かっても
負けるだけだろうと思い続けてきたけど
反抗してみようか
歳を取り、鈍感になってしまった今
あの頃以上に傷つくこともないだろう

心の声を聞いていたのに抑えこんだ
揉み消したということでもなく
非常事態になってしまい
抑えこんだことすら意識がない

その感情の断片は覚えていたけれど
断片が構築された時に
見える景色は何だろうか

防染糊を置いた状態


棘の試染







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