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伝えたいこと③ 発達障害の子を持つ親へ

 私は二児の父であり、以前学習塾の講師をしていたり、異動前は教育委員会にいたこともあり、子供と関わる機会や興味は普通の人よりもある方なのだと思います。
 だから子供たちへの投資こそが最も大事なことだと確信しています。そこでADHDを始めとする発達障害を子を持つ親はどうあって欲しいか、という話をしたいと思います。
 (基本的に発達障害全般に向けた話のつもりですが、ADHD以外はそこまで詳しくないので、これは自閉症やLDにはちょっと違うな、というものがあれば参考程度に見ていてください。)

1.自己肯定感を失わせるな

 幸いにも私は、子供の頃はそれなりに勉強ができたことと、友人や家族に恵まれたこともあって、問題なく生活が送れていました。ですがADHDを調べていくと、空気の読めなさや、多動・衝動性、忘れっぽさから、周囲から孤立してしまい、自己肯定感を失う子供たちもいるということを知りました。

 子供たちにとって大人以上に自己肯定感は重要です。できない経験を繰り返した子供は、自分自身を信じることができず、頑張ればできるはずのことも挑戦しなくなります。
 私の塾には(失礼ながら)信じられないほど学力の低い子供たちが在籍していました。中学生なのに掛け算九九ができない子供とか、国語の文章で何が書かれているか全く読み取れない子供などです。そこまで極端でなくても、数学で20点しか取れない子供とかザラです。
 そういった子供達は大体全教科壊滅状態となっています。こういった子供達にまずどこから手をつけるか分かりますか?

 それは算数・数学の計算問題か、理科社会の暗記問題です。

 なぜかというと、学習した内容が確実に得点に結びつく内容だからです。数学が苦手な中学3年生が4月に入塾した場合、式の分解などから学習を始めますが、まず同じ内容の類問を徹底的に練習します。
 すると(当たり前ですが)すぐに満点が取れるようになってきます。同じパターンなので当然ですよね。でもこの子供達は、そういった「やればできる」体験が圧倒的に不足しているのです。
 「やればできる」体験を繰り返していくと、中3の中間テストは計算問題ばかりなのでかなりの高得点が取れます。そうやってさらに「やればできる」体験を詰ませることで、数学以外の科目に挑む意思が生まれてくるのです。
 実際の能力は90点を取る子も20点の子も大差なく、やるかやらないかがほとんどですので、意外とこういう子が中3から一気に成績を伸ばし、90点を取っていた子を追い抜くこともありました。

 何が言いたいかというと、その子自身の能力よりも、「やればできる」という自己肯定感が非常に大事ということです。
 これは勉強だけではなく、普段の生活でもそうなのだと思います。様々な問題を繰り返すADHDの子に対し、繰り返し上手くいかない経験と、それに対する叱責があると、自分はダメなんだと思い込んでしまいます。

 子供の良い面を見てください。「やればできる」経験をさせてください。
 気合じゃ無理です。同じことが誰しも同じようにできるとは限りません。

2.「普通」ってなんだろう

 学校という閉じた世界にいると、どうしても他の子供と比べてしまいがちです。「あの子はできるのに、頑張っているのにあなたは・・・」という言い方や接し方していませんか?

 普通はできる、普通はこんなことしない、普通に勉強して欲しい・・・

 その気持ちわかります。私もどうしても比べてしまいそうになります。親ですから。でもご存知の通り、学校は所詮学校なんです。学校で測れる能力なんて、その子供の一部でしかなく、学校で上手くいったから万事OKでもなく、学校生活で失敗したから一生失敗というわけでもありません。立派に家庭を築いている元ヤンとかよくいますよね。
 普通なんて時代、国、地域、世代で全く異なります。そんなフワフワした実態のない「普通」なんて気にせず、子供そのものを見てください。どんな子供にも必ず素敵なところがあります。
 優しさ、活発さ、没頭力、繊細さ、気の強さと弱さ・・・これら全てその子の強みになり得ます。これらを強みにできるよう、弱点に目くじらを立てず、あたたかくサポートしてあげてください。
 子供の成長は千差万別です。早熟な子もいれば、人より遅れている、ゆっくりな子もいます。遅れているといっても、一生その時点から変わらないというわけではなく、人よりゆっくりだとしても成長しています。
 知人の発達障害の子を10代前半から19歳の今まで知っていますが、最初会った頃から数年は、まともに会話のキャッチボールができませんでした。でも19歳の今は、それなりに自分の考えを持ち、考えを発信できる立派な大人になっていて驚きました。大丈夫、人は成長します。

 だからゆっくりでも成長し続けるために、弱点よりも強みを見て、自己肯定感を失わせずに育てていってください。
 私の二人の子供たちに対しても、このように接していきたいと思っています。

 今の段階で私が言えることはこれぐらいですが、今後また思うことができたら整理してみようと思います。




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