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ミレニアル世代を冒険に駆り立てた桜庭統(さくらばもとい)のゲーム音楽で厨二メンタルを取り戻す。

1994年に発売された『PlayStation』によって家庭用ゲーム機の覇権が任天堂からソニーへ移ると同時に、ソフトウェアはカートリッジから大容量かつ低コストのディスクに切り替わり、日本のゲーム業界は「RPG戦国時代」に突入する。

『ドラゴンクエスト』シリーズと『ファイナルファンタジー』シリーズの二大巨頭の牙城を崩すべく、有名無名有象無象のゲーム開発メーカーがしのぎを削ることになるのだが、今回紹介する桜庭統は、「ウルフチーム」という小さなゲームメーカーのサウンドスタッフとして1989年にキャリアをスタートする。

ウルフチームは元々、日本テレネットというゲーム会社の開発チームが独立して設立された会社(のちに色々あってすぐに子会社化)で、初期はパソコンゲーム、その後はメガドライブ、そしてスーパーファミコン用ソフトの開発を手掛けていた。
特に有名なのがナムコより発売されていた『テイルズ』シリーズの開発である。

その第一作『テイルズ・オブ・ファンタジア(1995)』の音楽を担当したのが桜庭統である。

『テイルズ』シリーズは、2024年現在も新作やリメイクが発表されつづけている大人気タイトルで、FFシリーズ以上に北欧神話のキーワードが多く盛り込まれ、サウンドボイスやアニメーションがふんだんに採り入れられた厨二全開のRPGシリーズである。

桜庭自身は『テイルズ・オブ・ファンタジア』開発と前後してウルフチームを退社しフリーの作曲家となるが、桜庭とウルフチーム(後のナムコ・テイルズスタジオ)との関係は続き、その後発表される『テイルズ』シリーズのほぼ全ての作品で桜庭はサウンドスタッフとしてクレジットされている。
特に1998年にPlayStation用ソフトして発売されたシリーズ二作目『テイルズ・オブ・デスティニー』は爆発的なヒットを記録した(国内累計150万本以上)。

さらに同時期にウルフチームから独立した開発チーム「トライエース」作品群、『スターオーシャーン』シリーズ、『ヴァルキリープロファイル』シリーズでも音楽を担当したことで、桜庭の名声はさらに轟くことになる。

桜庭統の作曲はプログレをベースにした複雑な構成が特徴で、その楽曲群は「桜庭節」と称され親しまれている。
バンドサウンドによるアドレナリン濃度の高い戦闘曲群が一番の聴きどころだが、奏でられるオーケストレーション曲も、場面によって繊細に、不穏に、物憂げに、ロマンチックに、軽快に、荘厳に、とアイディアとバリエーションが豊富で聴き飽きることがない。そして何より、子どもの頃にコントローラーを握って夢中になっていた冒険の一場面を鮮明にフラッシュバックさせてくれる。

Tales of destiny


I feel so happy today


silent night


Port town


Sink into vise


Rebel against destiny



The venerable forest


Walk Over



Cuddle


The incarnation of devil


The Climax of the tower


私と同世代のゲーマーたちは1990年代後期から2000年代初頭のRPG戦国時代において、「ドラクエとFFよりもテイルズの方が面白かった」「トライエースが一瞬だけど天下を取ってた」時代を知っているし、その功績の大部分を、桜庭統の生み出す音楽の魅力が担っていたことも知っている(もちろんDEENもね)。

夢であるように / DEEN


オシャレな服、オシャレな家具、オシャレな車に可愛い奥さん、素直な子ども….
見栄の張り合いに疲れ切ったオジサンたちには、ぜひ桜庭統の音楽で、青春の頃の純粋さと厨二メンタルを取り戻してほしい。

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