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名将ハンジフリック誕生!新たなバイエルンへ

前回はニコの辞任までを解説したので、今回は元コーチで新たに監督に就任したハンス・ディーター・フリックによる人選について話していきたいと思います。

まずハンジ・フリックことハンス・ディーター・フリックは、一昨シーズンからコーチとしてバイエルンに招聘されました。彼はもともとドイツ代表で監督ヨアヒム・レーヴの右腕として活躍していた優秀な副官でしが、コバチ政権のナンバー2はニコ・コバチの弟、ロベルト・コバチが務めていた為、確かな実力を認められ招聘されたハンジ・フリックが実質的なナンバー3のような格好となってしまいました。しかしニコは不振で辞任し、ようやく彼にチャンスが回ってきます。彼の戦術戦略はニココバチ政権とは一線を画すものとなりました。

今夏加入のビックネームがベンチに。再びチャンスを手に入れたドイツの象徴

ニココバチ政権でのフォーメーションは基本4231。トップ下にはバルセロナからレンタル加入したコウチーニョを配置していました。新戦力コウチーニョ加入により、ドイツそしてバイエルンの象徴の一人でもあったトーマス・ミュラーがベンチに座る機会がかなり増え、移籍の噂も出ていました。しかし、フリックの就任により彼は再びチャンスを得ます。コバチ解任後フリックが最初に使ったフォーメーションは4123。インサイドハーフにミュラーとゴレツカを配置しました。もちろんコウチーニョを戦力外としたわけではありませんが「これがバイエルンだ」と言っているかのような配置だと私は感じました。再びポジションを与えられたミュラー、彼の働きは素晴らしいものでした。攻撃時は二列目から出ていきセカンドストライカー的なふるまいをしたり、ウイングが張ったときのニアサイドをランニングして折り返したり。守備時もしっかりブロックも埋める働きをし、出し手としてカウンターの起点にもなり続けました。彼はピッチで再び自分の価値を示したのです。またユーティリティ性も彼のストロングポイントのひとつです。トップ、セカンドストライカー、右ウイング、トップ下、インサイドハーフ、どこに置かれても高いレベルのプレーが可能なミュラーはフリック政権で必要不可欠な存在の一人になったのです。

新たな発見。世界最高峰の左サイドバックをコンバート。

フリックが暫定監督となり、すぐにでも改善しなければならなかった点、それは主力が負傷により離脱していた最終ラインでしょう。スタメンだったジューレやリュカエルナンデスが負傷離脱しており、コバチ政権では本職右サイドバックのパヴァールと本職中盤のハビマルティネスがセンターバックを務めていましたが、強敵を相手にすると守備面の弱さが露呈するシーンが多くありました。そこでフリックは本職左サイドバックのダビドアラバを左のセンターバックにコンバートします。身長が大きい訳ではなく空中戦が特別得意な訳ではないサイドバックをセンターバックに使った暫定監督に、困惑したサポーターも少なからず居たと思います。しかしアラバは良い意味でそれを裏切ってくれました。フリック体制になり、ポゼッションと縦に速い攻撃を臨機応変に使い分けを明確化したバイエルン、それに順応したのです。もともと左足から繰り出される正確無比なクロスやロングボールが魅力だった彼は、最終ラインを上げ、高い位置でボールをさばきながらタイミングを見て裏に抜ける前線の選手に正確なフィードを送ったり、ライン間に現れた選手に速い楔を入れ、そこを起点として多くの得点チャンスを演出しました。もちろん本職サイドバックの選手なので当初は守備面の不安がありましたが、戦術理解度の高さや判断の良さでカウンターも器用に処理し、センターバックとして新たな定位置を築くことに成功しました。

けが人が多い最終ライン、コンバートによりチャンスを得た超新星

フリック政権になり必要不可欠になった選手は他にもいます。それは19歳のカナダ人、アルフォンソ・デイヴィスです。彼は本来ウイングの選手でしたが、強豪バイエルンではウイングで定位置を得ることはとても難しく、満足な出場機会は得られませんでした。そんな中、けが人が多く出たセンターバックに左サイドバックをやっていたアラバがコンバートされた為、左サイドバックに空きができ、1列ポジションを下げた彼が起用される機会が増えることになりました。そしてこの19歳はとてつもない成長を見せます。フリックの使った左肩上がりの可変によって高い位置を取るシーンが増えたこの超攻撃的サイドバックは、持ち前のスピードで攻撃陣を助けつつ、精度がどんどん上がってきていたクロスでアシストを連発しました。今となってはブンデスリーガでレヴァークーゼン所属のカイ・ハフェルツやドルトムント所属のジェイドン・サンチョに匹敵するほどまでに市場価値を上げたといえるでしょう。

覚醒したドイツ代表WG

直近のバイエルンは、整理された可変と持ち前の攻撃力による大量得点が特徴です。このバイエルンで絶対的エースレヴァンドフスキとともに得点を量産しているのが、セルジュニャブリです。右利きのドイツ代表ウインガーはコバチ政権では右サイドに置かれ、サイドバックのキミッヒやパヴァ―ルとコンビネーションしながらサイドを崩したり、持ち前のスピードとドリブル能力で縦突破を多くしていた選手ですが、フリック政権では左サイドでのプレーが増えました。更に、左サイドバックのデイヴィスが高い位置を取るため、彼はよりゴールに近い内側にポジションを取り、セカンドストライカーのようなプレーをし始めます。リバプールのサラーに近いイメージですかね。それによりレヴァンドフスキとのコンビネーションやカットインからのシュート、スピードを活かしたカウンターでゴールを量産し、左ウイングに定位置を得ることになったのです。


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