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「宇宙」は新たなビジネス領域 : ロケット会社の事業開発職 ”5つの魅力”とはー

この記事は…

最初にこの記事の執筆者・目的・想定読者・伝えたい事 を明確にします。
興味をもっていただけたらぜひ最後までお読みいただけると嬉しいです!

◆筆者:宇宙輸送(ロケット)のスタートアップで働いている人
◆対象:宇宙業界に就職・転職を考えている方、宇宙ビジネスの内情を知りたい方
◆内容:宇宙スタートアップの事業開発職の職務内容の紹介
◆狙い:採用広報・うちの会社で事業開発をすることの面白さを伝える

※この記事では「宇宙スタートアップ」を、”衛星やロケット等の宇宙機やそれらによって取得するデータを活用したプロダクト・サービス・アプリケーションを提供する新興企業”という感じでざっくり定義

自己紹介

はじめまして。私、インターステラテクノロジズ株式会社(以降 IST)の事業開発グループで働いている 菅野(かんの)と申します。
実名では初note投稿です。普段 140文字のSNSしか使っていないので長文は苦手ですが、できる限りわかりやすく書きますのでどうぞお付き合い下さい。

自己紹介として私のこれまでの歩みを簡単にまとめてみました。テレビ局から宇宙ビジネスに転職しているのは(我ながら)中々ユニークなのではと思っています。

仙台市出身。1986年生まれ。A型 双子座。
工業高専→大学工学部を経て、地方テレビ局に就職。報道、営業、新規事業 等を担当。
2019年、昔からの宇宙への憧れに加えて宇宙ビジネスが盛り上がりを見せ始めたことから思い切って人工衛星スタートアップに転職。事業開発として3年間働く。
2022年、いつか宇宙に行くためにインターステラテクノロジズに転職。
現在に至る。

2017年には種子島でロケット打上げ見学(結局この日は飛ばず…)

「事業開発」って何?

そもそも「事業開発」って何?という方もいらっしゃると思います。
業界問わずスタートアップ界隈でよく使われている職種で、英語では Business Development や BizDev と表記されます。

客観的な定義はGoogle先生や何とかGPTさんに聞いていただければと思いますが、ここでは私なりの解釈で説明させていただきます。

事業開発とは
新規事業を確立・成長させるために、発展性のあるビジネスモデルを構築してその実現、発展までを担う仕事。

営業との違い
営業は事業開発の一つの要素に過ぎず、特にプロダクト/サービスが確立した段階の活動。全体を通してみると事業開発は提供価値の規定や商品づくりから営業・販売までを担い、直接の顧客以外にもビジネスモデル上必要なパートナー開拓やリレーション構築も行う。

※私個人の解釈です

私も最初は営業と何が違うの?と思いましたが、上記の通り守備範囲も広いしその分求められる能力も多岐に渡り中々噛みごたえのある仕事です。

余談ですが、他の職種が『手段』で表現されるものが多いですが(例:営業、広報、人事)、「事業を開発する」という『結果』そのもので定義されている点は個人的に好きなポイントです。

宇宙スタートアップにおける事業開発とは

宇宙ビジネスはいわゆる”ディープテック領域”であるため、まず何よりも「技術」が先に立ちます。地球観測衛星、通信衛星、ロケット等、ある程度民間が実現できる技術の方向性があり、その中でどのようにビジネスモデルを構築するかという勝負です。

事業開発としては、それらの技術が提供できる価値や解決できる顧客の課題を定義して顧客を開拓しながら、ステイクホルダーとのパートナーシップ・リレーション構築を進めていきます。

企画や戦略策定の後、実際に行う活動の全体像を一目で掴んでもらえるよう図にしてみました。

あくまで事業開発目線の図なので全てを挙げていませんが、重要なチームが他にもたくさんありますよ!

事業開発のメインの担当領域は ①顧客への営業②パートナーとの関係構築 です。
その前段として、主に技術開発チームが行う ⓪プロダクト/サービス開発 に対して顧客目線のインプット等を行う形で関わります。

また、社内他チームが行う ③資金調達④ロビイング と連携してサポートを行うパターンも多いです。なお、個社によって事情が異なり、③と④も事業開発チームが兼ねる場合もあります(連携に留まるか直接担うかは別にしても、①と②に密接に関わってきますのでそれぞれへのアプローチは把握するのは必須です)。

各活動の具体例は、 ISTの例で次の項目で記載していきます。

なお、スタートアップですので、いずれも”トップセールス”で代表等が直接動くケースももちろんあります(組織規模が小さいほどこちらの方が多い)。

ISTの事業開発グループがやること

では ⓪〜④について、ISTにおける各アクションの具体例を見ていきましょう。

⓪サービス開発

ISTのコアとなるビジネスは「宇宙輸送業」です。
ロケットという輸送手段を用いて、顧客の人工衛星等を宇宙空間に運ぶ輸送サービスを提供して売上をあげていきます(ロケットそのものが売り物ではないことに注意)。

ロケットの開発は技術チームが担います。言うまでもなくこの技術開発力がISTがもつコアの強みになります。事業開発チームは顧客候補にヒアリングしてニーズを技術チームにフィードバックしたりサービス視点での営業資料をつくったりといった形で関わっています。

開発中の超小型人工衛星打上げロケット ZERO(以降、ZERO)。かっこいい!

◆下記、①・②はメイン担当領域

①顧客への営業

前述の通り、ISTのビジネスの顧客は人工衛星を宇宙に打ち上げたい企業・団体で、民間事業者、政府機関、大学/研究機関の産学官それぞれが顧客になり得ます。
(宇宙に限らずあらゆるプロダクト/サービスと同様に)ZEROの特性を踏まえて戦略を立てて営業活動を行います。具体的には、衛星の用途、打上げ先の軌道/高度、国・地域 等、様々なセグメントで優先順位付けをしてアプローチしていきます。

なお、性能上 ZEROが宇宙に運べるのはサイズは小型衛星以下になりますが、下の図のように近年小型衛星の打上げ数は急増しており、今後もこのトレンドは続くと見込まれることからZEROがアプローチできる需要サイドは拡大していくことが期待されています(その分、供給サイド=競合も多く立ち上がってきていますが)。

データ出典:Bryce Tech

②パートナーとの関係構築

ISTにとってのパートナーとして真っ先に挙げられるのが「みんなのロケットパートナーズ」で、これは宇宙産業を日本の新たな産業にする法人サポーターズクラブです。事業開発ではサポーター各社との窓口になったり新規サポーターの開拓を進めています。

また、企業版ふるさと納税の制度を通してISTの事業や本社が位置する北海道・大樹町の宇宙のまちづくりを後押しして下さる企業を探したり、ロケット打上げの際の宇宙保険を手配したり、①の営業活動の代理店パートナーと連携したりと、関わる相手・連携の形は多岐に渡ります。

「みんなのロケットパートナーズ」は順調に増え、この春 40社を突破!

◆下記、③・④は他チームと連携・サポート

③投資家からの資金調達

こちらは他の多くのスタートアップと同様です。エンジェル投資家からVCまで、ISTの目指す未来や宇宙ビジネスのポテンシャルに投資して下さる方々を探し、ロケット開発に不可欠な資金調達を行なっています。

シリーズDでは38億円を調達しています

④ロビイング

このロビイングの必要性が高いことが宇宙ビジネスの一つの特徴です。

宇宙領域は(経済)安全保障の面で近年重要性の認識が高まっています。一方で、民間プレイヤーが進出しようにも、これまで政府のみの活動領域だったことから宇宙における商業活動のルールが未成熟な部分が多いことがネックになる場合があります。
財政面・技術面の公的な支援や世界とたたかえるルールメイキングを引き出して強い産業を官民一体となって形作るためにも、宇宙スタートアップにとって政府・行政との対話が非常に重要です。

ISTとしても、宇宙の活動の基盤である宇宙輸送の能力強化に民間の側から貢献するためにも、密にコミュニケーションをとっていきたいと考えています。

今年6月に宇宙基本計画が改訂、中には「⺠間ロケットの開発・事業⽀援」の記載も(画像の右側中段)

ISTの事業開発まとめ

以上をまとめると下の図のようになります。
全体像から個別の活動まで、なんとなくイメージしてもらえましたでしょうか。

社内外、色々な方々とコミュニケーションをとって進めていきます。

この仕事の魅力

さて、長い前振りになってしまいましたが、ここからが本当にお伝えしたいこと。もう少しだけお付き合い下さい。
ISTの事業開発で働いて感じる「5つの魅力」を、主観バリバリでお伝えしていきます!

1. いきなりグローバル、というかユニバース

宇宙ビジネスは Day 1 からグローバル競争です。
宇宙に国境はないのでロケット事業も衛星事業も世界中に顧客を開拓できます。それだけグローバルでの競合との争いが激しくなることを意味しますが、事業開発目線ではチャレンジングでとても面白いフィールドです!

2. 日本の新しい産業をつくるパイオニアになれる

日本は南と東が太平洋に面している地の利もあり、宇宙産業に適している国だと言えます。また、強固な製造業のサプライチェーンや積み重ねてきた宇宙技術の蓄積もあり今でも非常に有利な立ち位置にいると言えるでしょう。

日本の基幹産業である自動車産業もEV化の波等で環境が激変している中、宇宙産業は日本とって”新しい基幹産業”になるポテンシャルをもっています!

3. 「宇宙民主化時代」の今しかできない

長らく政府のみの活動領域だった宇宙が、ビジネスの場として広く開かれてきた(=宇宙の民主化)のはここ最近の話です。
そのため、今はあらゆるプレイヤーがビジネスモデルを試行錯誤しながら覇権を争ってる状態。”勝者”はまだ決まっておらず、私には多種多様な生物が誕生した「カンブリア爆発」のような状態に感じられます。
この”祭り”に参加できるのは、今を生きている私たちだけ!

4. まずはロケット、でもその先がもっと面白い(はず)

私は「輸送を制するものが宇宙産業を制する」と思っています。それはSpaceXがロケット開発から始まり今のような圧倒的な地位を築けた事実が裏付けています。

ISTもまずはロケットを開発していますが、目指すのは「宇宙の総合インフラ企業」。垂直統合モデルで 衛星事業(Our Stars)も手がけています。将来事業が拡大すれば、地球周回軌道だけじゃなく月やその先も視野に入ってくるでしょうし、個人的にはいつか有人輸送もやりたいと思っています。

宇宙への輸送手段を確立したその先に、もっと大きな事業を描けるのがISTならではの魅力です!

5. やっぱり宇宙は楽しいぞ

これは完全に個人の感想なんですが、宇宙が好き・ワクワクするという思いがそのまま仕事の原動力になりますね。よく「好きなことを仕事にすると…」とか言われますが全然そんなことはなかったです!
(でも宇宙が好きじゃない人でも働きがいのある仕事ですので、必須条件ではないです)

先日のオーストラリア出張での1枚。日本の宇宙産業への海外からの注目の高さを感じました。

おわりに

いかがでしたでしょうか。
「なんか宇宙ビジネスおもしろそう」と思っていただけるだけで御の字ですが、
さらに「応援したい」と思って下さった方は、いいねやこの記事をSNSでシェアいただけると嬉しいです。

さらにさらに、「働くことに興味あるかも」という方はぜひカジュアル面談からでも、いきなりエントリーいただいてもどちらでもウェルカムです!

ちなみに、ISTの本社は北海道ですが東京支社もありまして、事業開発グループでは東京勤務のメンバーを増やしたいと思っています。

カジュアル面談とエントリーページのリンクを下に貼っておきますので、我こそはという方 ぜひご応募ください!

最後まで読んでいただきありがとうございました〜

以上

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