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『ゲンロン13』刊行記念イベントほか、11月後半のカフェイベントをまとめました!

こんにちは! ゲンロンのアルバイトスタッフの青山俊之です。11月4日、ついに批評誌『ゲンロン13』が刊行されました。11月後半は『ゲンロン13』の刊行記念イベントほか、サラリーマンに、博物学の知をテーマとしたものなど、充実したラインナップとなっています。

どれも一押しのイベントですが、どれか1つ、と言われれば「ウクライナ侵攻後、ロシアはどこへむかうのか──愛国と反体制のはざまで」(乗松亨平 × 平松潤奈 × 松下隆志 × 上田洋子)を推します。『ゲンロン13』所収の小特集「ロシア的なものとその運命」は、ウクライナへのロシア侵攻に対し、これまで研究者としてロシアに関わってきた識者が率直な困惑や状況の認識を語り合う座談会です。収録から時を経たいま、現在とこれからのロシアをどのように識者は語り合うのでしょうか?

下記に11月後半のゲンロンカフェイベントの概要をまとめました。考える場としてのゲンロンカフェの真骨頂をぜひ体験しにいらしてください!

11月後半のゲンロンカフェ

11月17日 (木) 19:30〜 
乗松亨平 × 平松潤奈 × 松下隆志 × 上田洋子
ウクライナ侵攻後、ロシアはどこへむかうのか──愛国と反体制のはざまで【『ゲンロン13』刊行記念】

『ゲンロン13』刊行記念イベントとして、小特集「ロシア的なものとその運命」中の座談会「帝国と国民国家のはざまで」参加者によるトークイベントを開催いたします。ご登壇者は東京大学大学院教授の乗松亨平さん、金沢大学准教授の平松潤奈さん、岩手大学准教授の松下隆志さん、そしてゲンロン代表の上田洋子です。

ウクライナ侵攻の背景にある思想や文化に迫った『ゲンロン13』の座談会では、乗松さんからは「ロシア世界」の一体性を主張する思想家やプーチン政権のイデオロギーが、松下さんからは戦争に賛成・反対の立場を示している作家やアーティストの活動が、そして平松さんからはソ連崩壊後のヨーロッパ諸国とロシアのあいだの「記憶の戦争」が主に紹介されました。

今回のイベントでは、ロシアの保守思想やサブカルチャーにおける愛国と反戦、そして「記憶の戦争」から侵攻に対する人びとの反応まで、『ゲンロン13』座談会には盛り込めなかった話題や視点を、時間のかぎり語り尽くします。

なぜウクライナへの侵攻は生じたのか。そして、これからのロシアはどこに向かうのか。ぜひ『ゲンロン13』とあわせて、ご覧ください!当日の飛び入り参加も歓迎です!

11月18日 (金) 19:00〜 
鈴木貴宇 × 谷原吏 司会 = 野口弘一朗
サラリーマンは何を思い、いかに描かれてきたか──文化史とメディア史から「サラリーマン」を探して

1961年1月から読売新聞で連載されていたコラム「われらサラリーマン 日本の社会」。それから60年の時を経た現代、もはやそんな表現を聞かなくなってひさしくなりました。ここ数年の働き方改革・DXなどの旗印のもとに、あるいはフリーランスや非正規雇用としての働き方の拡がりなどとともに、かつて人々の共通イメージとして存在した「サラリーマン」は姿を消しつつあるのかもしれません。

そんな時代との距離感もあってか、2022年8月、「サラリーマン」をめぐる2冊の本が刊行されました。日本の近代文学や戦後社会論を専門とする鈴木貴宇さんの『<サラリーマン>の文化史』。そしてメディア史や情報社会論を専門とする谷原吏さんによる『<サラリーマン>のメディア史』です。

鈴木さんは、二葉亭四迷『浮雲』や岸田國士『紙風船』、さらに菊田一夫『君の名は』、山口瞳『江分利満氏の優雅な生活』など戦前・戦後の文学作品の分析からアプローチする一方、谷原さんは、東宝サラリーマン映画や『プレジデント』『BIG tomorrow』などのビジネス雑誌、さらに『課長 島耕作』や『半沢直樹』まで、現代に続く作品も含めてメディア史的なアプローチを行ってきました。2人の研究から見えてくる「サラリーマン」たちはなにを考え、どのように表象されてきたのか。そしていま、どこにいるのでしょうか……ゲンロンでは数少ないサラリーマン経験のある野口が司会を務め、お二人の研究について伺いながら、その姿を探します。

全サラリーマン、いや、働くすべての人々が必見のイベント。どうぞお見逃しなく!

11月20日 (日) 19:00〜 
荒俣宏 × 鹿島茂 × 東浩紀
博物学の知とコレクションの魅惑──古書、物語、そして「帝都」

荒俣宏さん、ゲンロンカフェ初登壇!

きっかけは去る7月3日に日比谷図書文化館で行われた荒俣宏さんと鹿島茂さんのトークショー。古書コレクターとして知られる2人の対談でしたが、話が入り口にたどり着いたあたりで既定の終了時間に。これはゲンロンカフェで続きをやるしかないねと鹿島さんからお話があり、実現が決まりました。
荒俣さんのお仕事は多岐にわたり、とても要約できるものではありません。古今東西の奇書を縦横無尽に読み漁り、妖怪学から図像学、ラブクラフトから南方熊楠まで、主流学問では見過ごされがちのオルタナティブな話題をみつけては精力的に執筆を続ける様はまさに知の巨人です。

他方で鹿島さんもまた、シラスチャンネル「鹿島茂のN’importe Quoi!」をご覧のみなさんはご存知のように、19世紀のパリについて語らせたら止まることを知らず、あらゆるトリヴィアが流れるように出てくる超人的なフランス文学者。そんな巨人・荒俣さんと超人・鹿島さんは、じつは古書コレクター界では知る人ぞ知るライバルでもありました。本イベントでは、そんなお二人の古書集めのエピソードを導きの糸に、莫大な知識を頭のなかにどのように蓄えられるのか、お二人の「博物学的=コレクター的な知」の魅力と謎に迫ります。

司会を務めるのは東浩紀。東が聞き手となり、鹿島さんが5時間以上にわたり語り続けた昨年10月のイベント「無料の誕生と19世紀パリの魅力」は、いまだに関係者のあいだで語りぐさになっています。今回はそれを超える興奮に出会えることまちがいなし。ご期待ください。

なお、東は実は中学時代、荒俣さんが1985年に第1巻を刊行した小説『帝都物語』の大ファンでもありました。『帝都物語』はすぐれた東京論としても読めますが、鹿島さんもまた『渋沢栄一』をはじめ東京という都市について多くの文章を書かれています。当日は荒俣さんの創作の秘密、そして東京という都市の謎にも出会えるかもしれません。こちらも乞うご期待!

11月28日 (月) 19:00〜 
成田悠輔 × 東浩紀
民主主義に人間は必要なのか──『22世紀の民主主義』vs『一般意志2.0』【『ゲンロン13』刊行記念】

22世紀の民主主義』(SB新書)が22万部を突破し、一躍注目を浴びる経済学者・成田悠輔さんがゲンロンカフェにやってきます。成田さんは同書で、ビッグデータをアルゴリズムによって分析することで、選挙にはあらわれない真の民意を抽出し、自動的に政策立案や意思決定に反映するという構想を提案しています(無意識データ民主主義)。

この構想は東浩紀が11年前に出版した『一般意志2.0』に通じ、じっさい同書の注で名前もあがっています。一方、東自身は『ゲンロン13』の論文で『一般意志2.0』を自己批判しています。『一般意志2.0』や無意識データ民主主義の構想は楽観的な技術信仰——東はそれを「シンギュラリティ民主主義」と呼びます——であり、政治から「個人」という単位を消してしまうのでむしろ危険だと指摘します。

技術的進歩によって生身の政治家は不要になると言う成田悠輔さんと、政治の単位としての人間個人の必要性を主張する東浩紀。「民主主義」をめぐって真っ向から意見が対立しているようにみえる二人の議論は一体どこへむかうのか!?

じつは、成田さんと東には過去に意外な接点がありました。二人が接点をもつ人物が、『ゲンロン13』の論文でも議論の対象になっている、『なめらかな社会とその敵』の著者でスマートニュース創業者の鈴木健さん。東はGLOCOM時代に鈴木さんとともに研究会を運営し(「ISED——情報社会の倫理と設計」)、同氏とは成田さんも大学時代から親交がありました。いちどは交わったかもしれない成田さんと東の思考は、どのように分かれ、あるいは重なるのか。ゲンロンカフェだからこそできる、ポストモダン思想と情報社会論の最先端の交錯にご期待ください。

※ 成田さんはリモート出演ではなく、実際にゲンロンカフェにお越しになる予定です。


そのほかのご案内

そのほか、11月後半のゲンロンカフェでは11月20日に開幕するサッカーワールドカップ関連の放送が日本対ドイツ試合が行われる23日に、おなじみの方々を招いて開催されるという噂……!詳細は後日発表いたします!

ほかにもSF創作講座(第6期)の9回目授業も11月25日(金)19:00-23:20にかけて実施されます。22:20~予定されている実作講評会は受講生以外の方も、YouTubeでもご覧いただける予定です。

また、11月27日(日)に、東京ビッグサイトで開催される、自主制作漫画誌展示即売会「COMITIA142」にゲンロン ひらめき☆マンガ教室が参加します。現役スクール受講生による同人誌売上レースが開催されるほか、特設ステージで主任講師のさやわかさんらによる特別公開授業が行われます。こちらは参加無料なので、COMITIAに来場される方はぜひお立ち寄りください。
※COMITIAへのご来場には、カタログ「ティアズマガジン」の購入が必要です。

現役受講生による同人誌売上レースは、受講生が3サークルに分かれ、サークルごとに制作した同人誌の売上冊数を競う、というもの。各制作チームの作品詳細などは下記のリンクにてご確認ください!


『ゲンロン13』ついに発売!

11月4日(金)に刊行された批評誌『ゲンロン13』は、

- 監視社会と民主主義をめぐる座談会「情報時代の民主主義と権威主義」(梶谷懐 + 山本龍彦 + 東浩紀)
- 歴史・天皇・安全保障をめぐる対談「令和の国体 ──歴史・天皇・安全保障」(三浦瑠麗 + 辻田真佐憲)
- 東の論考「訂正可能性の哲学2
- 小特集「ロシア的なものとその運命」識者の座談会(乗松亨平 + 平松潤奈 + 松下隆志 + 鴻野わか菜 + 本田晃子 + 東浩紀 + 上田洋子)
- 大山顕さんの論考「斜めのミラー」
- 鴻池朋子さんのエッセイ「みる誕生」
- ソ連時代の共同住宅をめぐる対談「ユートピアの裏側で──コムナルカとソ連の記憶」(鴻野わか菜+本田晃子 司会=上田洋子)
- やなぎみわさんの特別寄稿「台湾・野台戯の生命力」

などを収め、充実の内容でお届けいたします。現在、webゲンロンにて『ゲンロン13』の記事を一部公開中です。上記のリンクからアクセスください。

『ゲンロン13』は シリーズ史上もっとも政治的で、アクチュアルなラインナップとなりました。『ゲンロン6, 7』の特集「ロシア現代思想」の年表の続編となる「ポストソ連思想史関連年表2」もおすすめです。ぜひ手に取ってください!

以上、11月後半も盛りだくさんのゲンロン、引き続きよろしくお願いいたしますとともに、ゲンロンカフェやシラス、イベントなどでみなさまとお会いできるのを楽しみにしています!

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