12組しか入れないお店が「関西ナンバーワン」に急成長!1年目店長の成功法則とは
「玄品」は国内外で69店舗が営業しており、およそ1/3は関西地方に出店されています。近頃、その関西地方で急成長を遂げ、対予算比で売上・利益ともに「関西ナンバーワン」となった店舗があります。わずか12組しかお客様が入れないお店、祇園店です。
「まさか自分のお店が1位になるとは思っていなかった」と話すのは、店長の松井 悠祐(まつい ゆうすけ)さん。
松井さんは店長歴1年の若手社員で、普段は売上管理のほか、店舗スタッフの管理・育成を担当しています。
「玄品」のなかでも小型店にあたる祇園店が、なぜ大躍進を遂げることができたのでしょうか。松井さんのキャリアステップとともに、その成功法則に迫ります。
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【インタビュー/ライティング】
株式会社ストーリーテラーズ
ストーリーライター ヤマダユミ
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「店長がいなくてもいいお店にする」
松井さんが店長になってからわずか1年で、想定予算を遥かに上回る業績を上げた祇園店。店舗運営の際に心がけていることを伺うと、「店長がいなくてもいいお店にすること」という意表を突いた答えが返ってきました。
責任者である店長がいなくてもいいとは、一体どういう意味なのでしょうか?言葉の真意について、詳しく伺いました。
熱心な社員の誘いを受け、玄品に入社
松井さんが玄品に出会ったのは、バンド活動にのめり込んでいた20代の頃のこと。音楽活動と並行して、アルバイトで「玄品」のホール業務を担当していました。
当時の松井さんは、他店から手伝いにきていた社員に、「まだ社員にならないの?」と会う度に声を掛けられていたそう。しかし、音楽活動に夢中だった松井さんは、その度に断っていたといいます。
「担当はホールでしたが、店長に教えてもらってふぐを捌けるようになっていたので、よく誘われていたんですよね(笑)でも、そのときは社交辞令だと思っていました」
アルバイトとして3〜4年働いたあと、就職を考えるようになった松井さん。そのタイミングで例の社員から声がかかり、迷わず入社を決めました。
「入社してから知ったのですが、ずっと誘ってくれていた方が『松井を社員にしたい』と上層部に掛け合ってくれていたと聞き、ものすごく驚きました」
はじめの3年間は、一般社員として調理場を担当した松井さん。ふぐを捌く技術を持っていたものの、薄造りの刺身「てっさ」を作るのが難しく、慣れるまでに相当な時間がかかったといいます。
2020年に差し掛かると、「玄品」はコロナ禍の影響で、臨時休業せざるを得ない状況が続きました。その間、松井さんは福岡の水産会社に出向し、ふぐ以外の魚の捌き方・刺身の作り方を学んだそうです。
そんな松井さんが祇園店の店長に任命されたのは、5ヶ月間の出向から戻ってしばらくしてのことでした。
地道な努力で店長1年目にして大躍進
祇園店は12卓40席という、「玄品」のなかでは小規模なお店です。しかし、運営スタッフは松井さんを含めた社員3名と、アルバイトが20名以上います。これまでの人生でリーダーの役回りを担当したことがなかった松井さんは、人を指導し采配する難しさに直面したといいます。
「人の采配を考える上でも、まずは学生アルバイトを中心に、指導に回らなければなりませんでした。そこで、自分でやればすぐに終わる仕事を、あえてアルバイトスタッフに任せるようにしたんです。
自分でやってしまいたい気持ちをぐっと堪えて、見守る側に徹しているのですが…正直しんどいですね(笑)」
また、松井さんはスタッフによっても、教え方を変えているといいます。
「休憩中やプライベートの時間にコミュニケーションを取って、一人ひとりの性格などを見極めています。指導する前に、『この子の性格からして、こういう風に伝えてあげた方がいいだろうな』と考えてから、言葉を掛けるようにしています」
松井さんが丁寧に人材育成に力を入れている理由は、「店長である自分がいなくても、問題なく営業できる体制を作りたい」という想いがあるからです。
「店長になってから、自分がいなくても、自分以外の人が店長を務めたとしても、同じ結果が出るようなお店にしたいと考え続けてきました。店長一人に頼り過ぎていたり、その人じゃないとお店が営業できないというのは、チェーン店としてあるべき状態ではないと思うんです」
アルバイト時代、店長の人事異動を目の当たりにしてきた松井さん。その経験から、理想の店舗像を思い描いていたのでした。
さらに、店舗運営の上で、松井さんには心に決めていることがもう一つあります。それは、「お客様に絶対に満足して帰ってもらう」ことです。
「心地良いお店だな」とお客様に感じていただけるよう、アルバイトスタッフへの指導を徹底する。調理マニュアルから決して逸脱せず、クオリティの高い美味しい料理を提供し続ける。
そんな地道な努力を続けた結果、店長1年目にして、祇園店を対予算比で売上・利益ともに「関西ナンバーワン」の店舗にすることができたのです。
京都市内の新規出店・店長就任を目指す
「店長がいなくてもいいお店」という言葉は、一見すると無責任なようにも思えます。しかし、店舗スタッフが自走する力をつけること。クオリティの高いサービスを提供できるよう、教育し続けることでしか、実現し得ないお店なのです。
「玄品」では、「究極に美味しい商品・感じの良い接客・心地よく過ごせる店舗空間」の3つを磨き上げ、お客様に満足していただけるお店作りを追求しています。松井さんはこの1年で、根気強く人材育成に取り組んできました。その結果、祇園店はまさにその理想を体現したお店となった。そういっても過言ではないでしょう。
松井さんはややためらいながらも、次なる目標について教えてくれました。それは、「『玄品』が京都市内に新規出店した際に、店長を務めること」だといいます。
「京都には、『玄品』の店舗が祇園にしかありません。小型店なのでどうしても席数が限られており、平日・休日ともに、入りたくても入れないお客様がたくさんいらっしゃいます。
祇園店は国内外の観光客の方に、数多くご来店いただいています。インバウンド需要の高まりで、特に外国人観光客の増加を肌で感じているからこそ、京都市内にもう1店舗あれば…と考えてしまいます」
もしその目標を達成できたら、松井さんは祇園店の新店長をサポートしたいとも考えているそうです。
「自分が店長になったとき、『もう一人自分がいれば!』と思ったことがあったんです。状況によって、お店全体を見渡せなくなるときもありますからね。
たとえ新人さんが新店長になったとしても、スムーズに店舗運営ができるような体制を作り上げ、できる限りのサポートをしてあげたいと思っています」
初めてのリーダー役となり、手探りで店舗運営を進めてきた松井さん。「自分自身が苦労してきたからこそ、仲間により良いバトンを繋ぎたい」という温かな想いが感じられました。
スタッフ一人ひとりと誠実に向き合い、互いに支え合いながら仕事に励む、玄品のメンバー達。仲間とともに成長できる環境が、ここには揃っています。
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