もし自分が学校で武道を教えるなら

今回は個人的な趣味の武道・格闘技の考察と思考実験です。

今回の考察する案件としては、少し前から始まった中等教育における「武道」科目の導入について、もし自分が指導するならどのようなカリキュラムや指導内容にするか考え始めたことから。

様々なスポーツのレッスンや安全基準、指導の簡便化から、どれだけ広く、安全に、効率よく指導できるかは、専門ではない教師や、公教育の在り方として十分に考察、研究する価値があると判断したからである。

先ず始めに、授業案の基本構造として導入、基本(展開)、応用(実践)の三段階があること。

1年2期制として20コマ程度とし、1コマ50分程度とする。ただし3年次修了までの長いスパンでのゴール(目標)も設定すること。

生徒の購入品目は出来る限り最小限に留めること。

次の武道、格闘技およびスポーツにおける原理原則に基づくこと。

基礎:心技体の内、体=フィジカル
フィジカルは主にスピード、パワー、タフネス、柔軟性を強化
具体的には最大出力を増加させるBIG3。
心肺機能を強化させるHIIT。
ウォームアップ、クールダウン時に行う静的ストレッチ

基本:心技体の内、技=テクニック
テクニックは現在の格闘技及び武道の包括的な技術から最大公約数的技術のみに絞っておくこと。ただしそれでも膨大な数となる。

礼作法(立ち方、座り方、歩き方、お辞儀の仕方、意味)
受け身(柔道、合気道、古流柔術)

打ち突き払い各種
受け技4種(上げ受け、外受け、内受け、下段払い)
五行拳(形意拳五行拳)
ジャブ、ストレート、フック2種、アッパー、鉄槌、裏拳、猿臂
蹴り6種(前蹴り2種、横蹴り2種、後ろ蹴り、回し蹴り)

投げ技各種(四方投げ、小手返し、腰投げ、入り身投げ、大外刈り、内股、首投げ等)

体捌き(ラダートレーニング、走圏、四方切り、倒木法など)
長短武器の振り九種(8種の太刀筋、突き)
ミット打ち(クラヴ・マガに使用されるような大型タイプ)

ナイファンチ、鉄騎初段
サンチン
平安(ピンアン)初段~五段

観空大
バッサイ大
※師範学校において5年間ナイファンチのみという記述があるので、他の形はどうするか要検討。ただし個人的には平安の形は体育的、技術的に優れていると感じている。

応用:心技体の内、心=メンタル、駆け引き
いわゆる組手、スパーリング、推手、散手であるが、安全に配慮して防具を推奨。フルフェイス型の面、オープンフィンガーグローブ、レガースぐらいであれば安価に揃えられるであろう。
実際に対面して応戦することで相手との距離、空間、ポジショニング、タイミング、フェイント、虚実、先の先、後の先、対の先などを習得するための実践的トレーニングである。

相撲形式
昨今では柔道の練習中における重大事故による重傷、死亡がニュースになり議論となっている。

護身を考えた場合には、背中から落とすなどの条件は相手を持ち上げて落とすなどの可能性が高くなるため練習には不向きで、むしろ逃げる時間を稼ぐために相手を転ばす程度に考える方が適切かと思われる。
よって古今東西レスリング形式の伝統武術は世界中にあることを鑑みて、足の裏以外の部分が地面に着いたら負けというシンプルなルールに設定し、組み技の練習を行うことを提案する。

武道の神髄に「引かば押せ、押さば押せ」の言葉があるとおり、また「押さば回れ、引かば斜めに」という言葉のとおり柔(やわら)の神髄も体捌きにあり、また八卦掌の戦闘理論を見る限り、相手に相対して戦うのは非常にリスキーであり、相手の攻撃の軌道上から逸れ続けることで体を崩すこととなる。常に回り込むフットワークを身に着けること。体格が近い者同士や違う者同士で組み合わせて練習することで筋力及び体力の向上にも役立たせるものとなると考える。

スポチャン形式
原則フルコンタクトは禁止とし、代替として柔らかく当たってもケガをしない得物を用意して行う。100円のモノから新聞紙を丸めてガムテープで補強したものを利用してもよい。
あくまでも距離感やポジショニング、呼吸などの当て勘を養うこと、また護身の際に不審者が刃物やスタンガンを持っていることを良く良く考慮し、緊張感を持たせる工夫が必要。

基本組手
空手における基本組手は、必ずしも二人で行う形ではなく、遠山の目付や呼吸を読むこと(攻撃を察知すること)にある。よって最初は上段、中段、下段のように箇所を限定し、受け技、この場合は後の先を練習する。

基本一本組手
ドリル形式
スポチャン同様に、身体のどの部分に当ててもよい方式
手足を除く部分(頭と胴体)のみ有効とする方式、
攻撃と防御を交互に行い、専念する相手に当てることの難しさ、その反対を学ぶ方式などが考えられる。

自由組手
これまでの練習の中で上級者に当たるものには、ポイント制による組み技と打撃(スポチャンの短刀に相当)の組手を許可する。ただし審判を3人付けること必須。時間制1分。相手を地面に転ばせたら高ポイント。

以上が私の考える比較的安全に、またスポーツ的に行える武道教科の大枠である。出来れば詠春拳のように推手形式で相手の手を封じる技法も盛り込みたいと考えている。

他に気が付いた点があれば追記していく予定である。

出来れば一年生は最初の3か月は基礎と受け身、相撲形式で十分かと思われる。二年生は受け技、五行拳、蹴り技を身に着け、形稽古、基本組手。三年生は型と基本組手、基本一本組手、自由組手と審判をグループで分けてローテーションされるのが良いと思われる。

ただし運動部以外は週単位で動いていない可能性もあるので、基礎運動は毎回行うこと。体作りが重要である。基本が身に着けば組手でも有利になると分かれば自発的に行うので、やる気のない者は早々に組手をさせた方が良かろう。

現代日本の護身の最終目標は完全武装(フルフェイスガード、プロテクター、ライダースーツ、バット、こん棒、盾、包丁)を抑え込むことにあると私は思っています。よって打撃は一撃必殺などは考えませんし、技を効かせることを第一に考えるべきです。素手の一対一であれば寝技を教え込むところですが、多対一、武器、防具を想定すると上記のような技術体系になるかと思います。

また、武道のゴールとして「人格の完成」があると思います。己を高めること、高めるために相手の存在が不可欠なこと、そんな相手に感謝と敬意を示すこと。これらは必須要件ですので、礼儀作法は小笠原流などを参考に教えるのがベターではないかと思います。

以上、お読みいただきありがとうございました。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?