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【初黒星】アンラッキーじゃ終わらせられないWBA戦

”プレミアリーグ下位”この言葉を信用してはいけない。

プレミア上位チームが最先端の戦術を生み出し、時代の中心になっている現在。その戦術に対応するプレミア中位下位チームのレベルも高くなっている。

下位チームであっても上位チームに勝利することはもちろんある。引き分けることも、負けたとしても善戦することだってある。むしろ、”圧倒的な敗戦”は少し前よりも減った気さえする。

ただ、下位チームが上位チームに圧倒的な勝利を収めることはまさに”ミラクル”に近いものであり、サッカーファン達の間では大きな話題になる。

リーグ19位のウェスト・ブロムウィッチ・アルビオン(以下WBA)が30節の4位チェルシー戦で5-2というスコアで勝利した。

何よりも衝撃的だったのはトーマス・トゥヘル監督就任後公式戦15試合負けなし、さらには15試合で2失点という鉄壁の守を誇るチェルシーにこのスコアで勝利したことだ。

今回はこの試合のターニングポイントを紹介しながら振り返っていく。

スターティングメンバー


チェルシーはディフェンスラインにチアゴ・シウヴァ、ズマを起用。チアゴ・シウヴァは怪我から復帰。左のセンターバックはリュディガーでは無くズマを起用。リュディガーはこの試合の2日前にドイツ代表として試合に出場。また、中4日で行われるCLのポルト戦のことも考えてのスタメンだったのだろう。

27分 チェルシー先制ゴール(プリシッチ)

 CHE1-0WBA

前半27分。マルコス・アロンソのフリーキック。こぼれ球をプリシッチが押し込んで先制。ドリブラーのプリシッチにしては珍しく泥臭いゴールだった。

流れの中からここまでチャンスを作れなかったチェルシー。そんな中セットプレーから生まれた1点は大きかった。

28分 チアゴシウヴァ退場

 CHE1-0WBA

先制点を奪った直後。怪我から復帰したチアゴ・シウヴァが2枚目のイエローカードで退場。厳しい判定にも思えたが主審の判定は絶対。従うしかない。主審の判定よりも気になることがあった。それは、チアゴ・シウヴァがカードをもらった2度のファールは全く同じ形で起きていたこと。

その形とはジョルジー二ョ、コヴァチッチ間のインターセプトだ。この試合のスタメンのジョルジー二ョ、コヴァチッチはボールを動かすことに関していえばチーム内で絶対的な信頼を得ている。そして、チェルシーのビルドアップからの攻撃はこの2人を経由して始まる。WBAはこの2人にマンマークを付けた。

この2人が封じられればその真下にいるチアゴ・シウヴァは負担がかかる。2人に致命的なミスがあればファールであっても止めなければならない。チアゴ・シウヴァの退場は決して”不運”だけで済まされるものでは無かった。


45+1分 WBA同点ゴール(ペレイラ)

CHE1-1WBA

前半ロスタイムに入ったところ。WBAはスローインの時点でロングスローを仕掛ける。このロングスローはチェルシーの選手が跳ね返す。その後WBAはキーパーまでボールを戻した。キーパーに対してプレッシャーをかけるヴェルナー。キーパーのジョンストンの苦し紛れに見えたキック。このキックに反応したのはピッチにいる21人中たった1人。ゴールを決めたマテウス・ペレイラだ。

リプレイを見ればペレイラにマークを付くのは非常に難しい状況であり、キーパーのジョンストン、ゴールを決めたペレイラを褒めざるを得ないプレー。

そしてこのゴールの始点は日本で大きな話題となったロングスロー。日本ではロングスローに対して「つまらない」という意見もあったが、トゥヘルチェルシーのゴールを9,687分ぶりにこじ開けたのはロングスローだった。

45+4分 WBA2点目(ペレイラ)

CHE1-2WBA

同点ゴールから3分後。1人退場しても後ろからパスを繋いでゴールを目指すチェルシーに対してWBAはハイプレスを仕掛ける。1人少ない中、自陣ゴール近くでこの試合中最も強いプレッシャーを受ける。このボールをしっかりとゴールに届けたWBA。

「相手が一人退場している」「前半のロスタイム」「試合の流れは明らかに自分たちにある」とハイプレスをかける条件は整っていた。降格圏内のチームとして”しっかりと勝ち点3を取りに行く”選択をしたWBAが前半を閉める上で最高の結果を残した。

63分 WBA3点目(ロビンソン)

CHE1-3WBA

WBAは後半も前半終了間際と同じようにハイプレスを仕掛ける。

対するチェルシーは繋いで攻めることを選択。強気なトゥヘルらしい選択。チェルシーはWBAのプレスを回避し何度かゴールに迫るも得点は奪えず。WBAは63分に右サイドを崩します。ゴール前に2人の選手がいたが、決めたのは後ろから走り込んだロビンソンだ。

チェルシーは3バックとウィングバック2人の計5人が揃っていたが、ダブルボランチがマイナスのスペースを空けてしまいフィニッシャーに走り込まれてしまった。

68分 WBA4点目(ディア二ェ)

CHE1-4WBA

68分にWBAが追加点。3点目と同様サイドを完全に攻略。

チェルシーはこの時点で足が止まっている選手が多いように見えた。10人で戦うことの難しさを表す失点だった。

71分 チェルシー2点目(マウント)

CHE2-4WBA

WBAが一瞬油断を見せた。左サイドを抜けたアロンソが折り返し、待っていたヴェルナーは自分の得点よりもチームのことを優先してマウントにパス。この判断がゴールに繋がった。

この試合の前、自身が点を取れていないことを気にして居残り練習を志願。(しかし残り練習はトゥヘルがやめるように指示)そんな人間がこのシーンではアシストを選んだ。当初に期待されていたストライカーでは無く献身的なアタッカーとして活躍しているが。ゴール前に必ず顔を出していることからもヴェルナーのゴールはあと少しだと感じさせられる。そんなアシストだった。


90+1分 WBA5点目(ロビンソン) 試合終了

CHE2-5WBA

最後の最後に追加点を取ったWBAが5-2で勝利を収めた。チェルシーとしては一人少ない中のゲームだったが。もし、チアゴ・シウヴァが退場していなくても良くて2-0か1-0のゲームだっただろう。

11人対11人の時点でもチェルシーは流れの中から良い形で攻撃ができなかった。そして、WBAのボランチを狙う守備戦術は成功したと言える。

”プレミアリーグ下位”として降格争いを続けるWBA。今回の対象は偶然か必然か。彼らの実力は本物か。

上位争いだけでは無く、降格争いも楽しみになる1戦だった。

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