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「痴漢大国日本」で僕ができること

痴漢犯罪について最近、よく考える。痴漢は世界的には珍しく日本特有の性犯罪であり、女性の7割近くが一度は被害に遭った事があるという。

だが、痴漢の男はそんなにいない。というか多くの男達は痴漢ではない。
もちろん僕も痴漢ではない。けれど、頻発する痴漢の被害に遭った女性にとってその事実は遠いものになってしまっている。

そのギャップがとても苦しい。

ある日、こんなツイートを目にした。
痴漢抑止バッジ普及運動をしていらっしゃる松永弥生 @matunagayayoi さんのものだ。

8歳で初めて痴漢に遭ってから、ずっと痴漢やセクハラを経験してきたので、私はごく当たり前に「男は痴漢するもの」と信じ込んでしまった。

悲しみとともに驚愕した。
(全文脈は長いので省いたが、このツイートは痴漢しない男性の方が多いという事に気づいたという話題から始まる)

また別のある日、こんな記事を見つけた。
痴漢するエリート外国人が増加中、「Chikan」が国際語に!?
そこで「男が痴漢になる理由」という本の著者である精神保健福祉士の斉藤章佳さんが

ここ5年ほどは外国人も増えてきている。母国では性犯罪歴がないのに、長期滞在しているうちに日本特有の満員電車で痴漢行為を学習して、常態化してしまう。

という地獄のような話をしていた。

痴漢のほとんどは男だ。
そのせいで、日本人男性は日本人女性にすら男=痴漢と思われ、世界でも名高い痴漢大国となってしまっている。

このままでは海外の電車やバスで日本語を話したら捕まるような未来が来てしまうかもしれない(そんな事はさすがにないと思うけれど、国際的な目として日本人男性はChikan.Karoshi.Otakuのどれかなんでしょ?と言われたらショック過ぎる)

数値的なデータとしては、#WeToo Japanの2019年1月の調査で、「女性の70%、男性の32.2%が電車や道路で何らかのハラスメントを経験している。」という調査結果が出ている。(詳細はBUZZFEED JAPANさんの『女性の7割が電車や道路でハラスメントを経験。「実態調査」でわかったこと』を参照して欲しい)

3割は男性も痴漢被害にあっている。だがその頻度は女性被害の比ではない。男性は被害にあっても1回2回で終わるが、女性(特に10代~20代)はひどい時は1週間毎日、朝夕と被害に遭うときもある。
切実な環境改善を望むのは女性だが、もし娘(姪でも従姉妹でもいい)ができたなら、このままではその子は避けがたい確率で痴漢に遭うだろう。そして僕は誤解され、警戒される立場にいるのだ。

今僕に子供はいないけれど、周りの多くの友人には子どもがいる。話す子もいる。二つ離れたやんちゃな姉妹も、友人夫婦が目に入れても痛くなさそうな一人娘のあの子も、多分10年か15年か先の未来、痴漢に遭うのだ。

なぜそんな事になってしまうのか。
僕は、痴漢ではない。ほとんどの男が痴漢ではないはずなのに。

そんな当たり前が7割近い女性には、説得力を持たないのが今の日本なのだ。娘が8才から10才まで多重痴漢に遭っていたと知った父が、抱きしめようとすると、警戒し「お父さんは痴漢しないよね?」と言わせてしまっているかもしれない。正にディストピアそのものだ。

僕の声は小さいけれど、それでも未来のために何かしてみよう。
電車内で煙草を吸う人は今はもういない。車両の中にゴミが散乱していることはほとんどない。鞄を前背負いするのも徐々にこなれてきている。マナーの悪い人はいつの時代でもいるが、多くの人はかつての信じられない時代に戻らない良心も持ち合わせている。

ぜひ僕と同じ男性にこそ読んでもらいたい。そして、この被害に遭っている多くの女性と、無害で、そのせいで無関心な男性との間にできた意識の距離を多少なりとも埋める事ができれば幸甚である。

自分は痴漢ではない、しようとも思わない、けれど痴漢撲滅のためにできることをする。

僕は、ほとんどの男が痴漢ではない事を知っている。仮に満員電車に乗ったとしてもほとんどの男性はあなたに危害を加える気はない。それどころか、危機だと分かれば助けてくれる人ばかりだ。そのギャップを少しでも解消したい。
おそらく痴漢も「痴漢よくない止めよう」などと良心の皮を被っているけれど、自分からそれを発信するか、便乗するかでいえば自ら発信はしていかないのではないかと思う。痴漢が本当に発信したいのは自身の痴漢行為だろうから。(Twitterや5ちゃんでそういう輩は検索すると出てくる)

だから、案外男が自分から「俺は痴漢なんかじゃないし、痴漢撲滅のためにできる事をする」と言っていくのは意味のある事なんじゃないかと思う。

では、被害者でも加害者でもない僕にはどんな事ができるだろうか。すぐにできそうなものを少しまとめてみた。

もし女性とこういった話になっても痴漢冤罪の話などでさえぎらない
 

これをやると「話聞く気ないよ」と同義だから純粋に男に話が回ってこなくなるので、社会としての理解が一向進まない。

可愛いからしょうがない、どんな格好してたの、いや君はされないでしょ、などと言わない

今やどれもベタな分かりやすいセクハラワードだが、僕は痴漢やナンパの話で、こう返した事が何度かある。(ナンパと痴漢は随分違うけど、かつての過ちを分析すると性的な対象として行動する点では似たものだと感じていた。かたや性犯罪だ。)今は意識してるので、そうはならないけれど、意識しないとこう返事してしまう男は少なくないのではないだろうか。フォローしているとすら思っている男もいるかもしれないが、これをセカンドレイプというのだと知ったのは30才を超えてからのことだ。いやいや大げさな!とこれまた男子(僕)は返答していた。本当に無知で無神経で申し訳ない事をしていた。
首を絞められて殺されかけた男が、その後ネクタイをするとその時の死の恐怖を思い出して吐き気やめまいがし、ネクタイが出来ず普通のサラリーマン生活ができない。そんな男に「男ならネクタイの一つくらいビシッとしろ。情けない」と言うようなものなのだ。

通り魔的な被害なのに、自分のせいだと責められ、つけられた傷がいつまでも癒えない上に、いざその時になっても自分が我慢すれば良いと思い逮捕アクションに繋がらない。

女性の前後には女性がいる状態にする(&むやみに女性の前後に立たない、立たせない)

冤罪阻止的な意味もあるけど、鞄前掛けスタイルが定着できたなら、前後に女性がいたら場所を譲ろう。位はゆるいマナーになってもいいような気がする。

(前後を防げると、一般的な痴漢行為である臀部や胸部などの撫で、擦りつけはある程度防止できる。グループ痴漢だった場合は、それで他の被害を防げる可能性もある。それでも変則的な、手を握ってくる、息を吹きかけてくる、卑猥な言葉を囁いてくるなどはちょっとまだ対処法が思いつかない)

もし痴漢してるのを見つけて、そうなのかよく分からないなら対象女性と「場所変わりましょうか?」とだけ聞いて変わる

上の項目ともリンクするけど、もっとカジュアルにちょっとでも怪しかったら「場所変え」が女性からも男性からも言えて、できる環境は今よりずっとセイフティだなぁと思う。

っていうか純粋にカッコよくない。
「場所変わりましょうか?」スッ
って、カッコいいよ。

「監視カメラ作動中」とシールが貼ってある車両に乗る


最後に、女性の話になってしまうけれど今は多くの電車に監視カメラが付いている。「監視カメラ作動中」と目立たぬところに灰色や赤色のシールが貼ってある。目立ちはしないが、これは多少の抑止にはなるだろう。痴漢は捕まる事が最も怖いので、監視カメラはもちろんチェックしている。写っていたら言い逃れは何の意味もないのだから。そもそもカメラがない車両の方を選ぶだろう。

余談だが、この記事のために、監視カメラが導入されている線や監視カメラの視野に入る場所がどこかを調査していたが全く分からなかった。こういった情報があれば安心するのにと思ったが、痴漢からしたら穴場を教えてもらえるようなものだからだ。第三者の男性用に痴漢抑止を応援する趣旨のバッジ案もあったらしいが、これも痴漢に悪用されるという理由から取り止めたそう。

手をつかみ捕まえる。

一般人でも明らかな現行犯の場合は駅の鉄道警察もしくは、駅員に引き渡すまで拘束する事ができる。しかし撲滅をうたっておきながら、現状の日本の風土、システム的に一番ハードルが高い。
もちろんそうするのが一番だ。痴漢にとって最も怖い人種である事は間違いないだろう。しかし、精神に異常をきたしている人間もいる。痴漢は逃げるためには何だってするかもしれない。あまりの労力に被害者は示談を受けてしまうかもしれない。せっかく裁判に持ち込んだのに無罪になってしまうかもしれない。家族や会社に迷惑をかけるかもしれない。

痴漢者同士が情報交換する掲示板があると調べたら5ちゃんねるでリアルタイムな板があった。JC(女子中学生の隠語)、JS(女子小学生の隠語)、生マン(直に性器に触れるの隠語)、こすりつける、発射という単語が何度も出てくる。そういった時に良い材質のズボンの紹介までしている。(全て偽物のいわゆるつりかもしれないが、そうも思えないものが時々ある)絶句するとともに抑止では生ぬるいと怒りが湧き上がってくる。

捕まえなければ、被害は増え続ける。しかし、捕まえても示談や無罪で放免されてしまう事も多い。今、日本全国に広がっているフラワーデモのきっかけとなったのは性暴力被害の裁判で立て続けに4件の無罪判決が出たことだ、それでもお前を見ているぞと声を上げる事の意義はある。

痴漢は制服を着ている人間をターゲットにする。それは、制服が従順の証だと考えているからだ。大人しく声をあげないような相手を選び犯行に及ぶ。何も言われないからやるとほざくなら、周りが声をあげる事も十分な効果があるのだ。

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