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映画館で映画を観ると、その緊張感と没入感は他の比ではない

NTTデータコムの2018年の調査によると1年間で、映画館に行って映画を見る人は全体の35%。3人に1人らしい。そして年に観る本数が4本以上の人が65%、さらに半分だ。

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NTTコム リサーチ結『第7回 「映画館での映画鑑賞」に関する調査』https://research.nttcoms.com/database/data/002109/

私は、週に1本は映画館で観ているので、年に50本程度観ていることになる。そうなると素朴な疑問が湧いてくる。
「どうして皆、映画館で映画を観ないんだ!?映画館で観るのはいいことなのに。」
「いや、ひょっとして映画館で観る良さを知らないのではないか?」

そんな方のために、今日は映画館で映画を観るメリットについて存分に語ってみる。

映画館で映画で観る理由は、集中して映画を観ることができるから。

わざわざ足を運び対価を払うのは、その映画のためだけに特化し集中した時間を買っているのだ。
多くの映画作品は120分弱、約2時間。スクリーンしか見えず、作品の音響しか聴こえない部屋に入る。四六時中チェックしていた手持ちのスマホを無効化し、場合によっては3Dメガネをかけて、2時間を映画観賞だけに徹底的に費やす。この2時間の間、私に指示を出す者、頼みごとをする者、誘惑するものはいない。

1100円〜1800円のチケットを買って、私は2時間何にも囚われず集中できる環境を約束されるのだ。日頃の生活の中で、2時間脇目を振らずひとつのことに費やすのが、どれほど難しいか試したことのある方なら分かるだろう。

電話、メール、SNS、打合せ、会議、急な頼まれごと、世間話、ニュース、自分の生活に容赦無く割り込んでくる要素のなんと多いことか。そういった割込み要素全てを落とし、たった一つのことに集中する。

これほど身軽にあらゆるメッセージ、要素から圏外に身を置ける場所は映画館をおいて他にない。

・映画館は圏外地帯であること。
・集中できる環境。

という点は、どんどんアピールして行きたい。

その贅沢な集中時間が私に与えてくれる恩恵は、五つある。

・緊張感
・没入感
・解像度の高いディティールを心に残す
・余韻
・ストレス発散

では、具体的に語っていこう。

映画館で映画を観ると、その緊張感と没入感は他の比ではない。

画面の中の人が今まさに生死の境にいる極限状態で、グループLINEの通知が鳴り止まず、どこからかカレーの匂いがしてきたり、選挙カーが巡回してきては台無しだ。
前提条件として、必要情報外の全てをシャットダウンすることで、感覚を鋭くし、極限状態を共有できるまで感覚を高めるのが映画館という空間なのだ。
もちろん映画館は、シャットダウンする以上に、視覚効果、聴覚効果を最大限にして感覚をさらに高める技術を日々向上させている。

私はかつて映画館で「ゼロ・グラビティ(原題:Gravity)」という映画を観た。これほどに映画館で観て良かったと思った映画は未だない。宇宙船のトラブルに次ぐトラブルの中、地球に帰ろうとする宇宙飛行士の話だ。危機と緊迫のオンパレード、身体を強張らせ続けて観た91分だった。
そしてそれほど緊張していたということは、それだけ作品世界に入り込んでいたということでもある。

ディティール(詳細)の解像度を高め、自分の心に取り込むことが出来る。

私はこの「ディティールの解像度を上げる」ということに重きを置いている。ディティールの解像度が高い作品は、映画らしい映画と記憶されやすく、また心にも残る。とても満足感の高い作品であることが多いからだ。

具体的なディティールとは、色調の彩やかさ、声の抑揚による緊張感、表情のこわばりや、ゆるみ。メタリックな輝きや劣化した風合い、細部まで作り込まれた背景の美しさなどである。
これらはとても繊細な部分である。見逃してしまってもそこまで損をするものではない。ストーリーには関係ないものも多い。そして、観る環境によって感じ方が異なるものだ。
例えば、1950年代のベトナムの街並みや自然、湿度を感じる映画を観たとき、視界に生活感あふれるティファール、秒針がうるさい置き時計、定期的にポップアップするスマホ、換気扇の音などに囲まれた中では、時間と国と季節を超えた世界に感覚を置くことはとても難しい。きっと家の中で観たとき何かは欠けた状態で観ていると思う。

近年では「シェイプオブウォーター」という映画を、映画館で観た。
たった一度の観賞だが、多くの印象的なパーツを思い起こす映画だ。暗く毒々しい緑色の街の外観、ファンタジックな屋内、トイレの清潔感、卵の殻、半魚人の唇、鱗の艶やかさ、瞳、水の青さ、メイン劇伴の音の粒。
別の媒体で観たとき、私はこれほど心に多くの印象を残すことは出来なかっただろう。

個人的には、映画は後になって何でも良いのでたった一つだけ心に残っていればそれで十分だと考えているが、観た時、確かに印象に残った思い出まで日常によって一瞬で薄める必要はないと思う。
映画館以外では、映画の世界から現実に徐々にソフトランディングしていくことはとても難しい。こんな話をする私だが、配信動画で観るときは、エンドクレジットを大抵観ない。
だが映画館では、逆にエンドクレジットを見ずに立ち上がることはほとんどない。正直なところ、主要なキャスト以外ほとんどの名前は見ていない。余韻を味わっている。

「この映画はなんだったのか?」という根源的な問いに自ら答えるために情報を整理している。この時間があるから映画館に行くと言っても過言ではないほど大切な時間だが、自分では確保しづらい時間だ。

自分でも気づかない中で、爽快感を感じながら映画館を後にする。

この爽快感の正体は、ストレスを感じる物事から解放されていたからだと私は考えている。ストレスは、主に金銭問題、病気、人間関係について考えているとき感じやすい。だが映画館にこれらを持ち込むことは難しい。
たった2時間でも、それらのストレスの原因から離れ、別の刺激を脳に上書きするで、ストレスは溜め込まれず発散されている。

2時間座っていることがそもそもストレスとなってしまう人は話が別だが、案外と語られることが少ないが、ストレス発散に映画館はとても良いと思う。

まとめ

・緊張感
・没入感
・解像度の高いディティールを心に残す
・余韻
・ストレス発散

一つでも体感したい方はぜひ、映画館へ足を運んでみてほしい。

映画を映画館で観るとき、みんなで観ながらも、どんな時よりも一人で観ている。

と感じたことはないだろうか?
それは集中し、映画に浸っているからだ。

これが絶対などと言う気はないが、一つの考え方として映画を楽しんでもらえたらこれ以上ない喜びである。

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