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緑化の成果はこれからも大きくなります by 高見邦雄(GEN副代表)

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大同で植えた木のその後の生育ぶりを伝える写真が送られてきました。樹木は大きくなり、地元の人たちによってきちんと管理されています。再生した森林はこれからも育ち、時間とともに成果は大きくなるでしょう。
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 新しく制作するパンフレットに山西省大同市の緑化プロジェクトの現在の写真を収録したいと考え、緑色地球網絡大同事務所の司機(運転手)だった小郭(郭宝青さん)に撮影を頼んだところ、快諾してくれました。
 しばらく前まで司機は身近にいる最良の技術者だったのです。全員がプロの運転手で、道端に車を停め、分解修理をやっていたくらいですから。
 小郭にカメラの扱いに慣れてもらいました。それが今回、生きたのです。旧型ですけど、デジタルの一眼レフを使って、主要な場所の写真を撮り、WeChat(微信)で送ってくれました。
 
 いくつかに絞って、年代順に並べてみます。大同県(現雲州区)徐疃郷小王村。冊田ダムに接する浸食谷だらけの斜面(写真1)に1993年にマツを植えました。
 


あの浸食谷は松林に完全に覆われており(写真2)、土壌浸食も軽減されたことでしょう。冊田ダムは北京の水源であり、水質の向上にも役立ちます。
 


2014年に写真を撮っていると、「護林員」の腕章をした男がバイクで通りかかり、「ここの松は日本人が植えたんだ」とジマンそうに話してくれました。
 南郊区平旺郷の環境林センター。苗圃、温室、実験室、教室などを備えた協力拠点で、1995年に3.5haで建設をはじめ、2000年に20haまで拡張。2010年に大同市政府によって収用され、両隣の施設とあわせ67haの口泉植物園に生まれ変わりました。私たちの管理棟があった中心部が「友好苑」になり、大きな自然石の記念碑に協力の経緯が刻まれています。
 
 渾源県呉城村のアンズ。1997年から小学校付属果樹園の建設をはじめ、私たちの協力は一部ですが、地元では350ha、20万本まで拡大しました。アンズは雑穀に比べ面積あたり5~10倍の収入をもたらし、大学生を送り出すまでになりました。
 
 南天門自然植物園は86haの荒れ山を借りて1999年に起工し、北向きの日陰斜面ではナラ、シナノキ、カバノキなどの自生樹種を中心にみごとに森林が再生しました。南向きの日向斜面は困難でしたが、灌木を中心にほぼ緑で覆われ、植物の種類はこちらが豊富です。地元のスタッフによって、全体で82科523種が確認されています。
 
 大同県聚楽郷の采涼山プロジェクトは1999年から6年をかけて280haを植林しました。緑化の困難な日向斜面でしたが、地元の草の根の整地技術と、日本から持ち込んだ菌根菌活用の育苗によって、みごとに成功しました。成功モデルとして全国から見学者が訪れ、隣接地に広大な政府プロジェクトが建設されています。
 
 実験林場カササギの森はその隣接地で2001年に着工しました。多くは針葉樹ですが、試験的にナラ、シラカンバ、ハシバミなどの広葉樹も植え、育ち具合を見守っています。その隣接地にはタワー高100mもある風力発電機が林立しています。
 
 コロナ禍で2019年を最後に現地に行けないのですが、その後もちゃんと成長し、下枝打ちなどがほどこされ、きちんと管理されているのがわかります。再生した森林はこれからもしっかりと成長し、時間とともに成果を大きくしていくでしょう。
 
 燃料費の足しにとWeChatでいくらか送金したら、小郭は即座に送り返し、「自分たちの事業の成果を確かめて、ほんとに誇らしかった。これからも機会あるたびに行ってみたい」とのこと。
 2019年秋に、日本大使館主催のプレスツアーで大同にきた担当者が「国際協力といっても中断することだってあるんです。25年もつづいて、終了後もこんないい関係があるのは驚きです」と言っていたのを思いだしました。

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