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インクルージョン×防災セッション報告(1)井筒節先生のお話から by 原裕太(GEN世話人、東北大学助教)

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セッション内容をご紹介する3回シリーズの1回目。3月に開催されたWorld BOSAI Forumの雰囲気をお伝えするとともに、メンタルヘルス・精神障害を専門とする井筒節先生のお話をご紹介します。
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World BOSAI Forum 2023、会場では延べ約5000名の方に参加頂き、大ホールの様子は世界に向けてLIVE配信されました。ご参加頂いた皆さま、ありがとうございました。閉会式では防災分野の国連機関トップを務める水鳥真美・国連事務総長特別代表兼国連防災機関(UNDRR)長にスピーチ頂いたほか、歌手のMay J.さんによるパフォーマンス、中学生による合唱、東北大学管弦楽団の演奏等も披露され、大いに盛り上がりました。また開会中には、今年5月にニューヨーク国連本部で開催予定の「仙台防災枠組」中間評価会合の議論への貢献も念頭に、世界初の試みとして私と研究室メンバーらが仙台市と共同で取り組んだ、仙台市における仙台防災枠組の進捗評価の成果を、仙台市長からご発表頂きました。その他にも、国連組織や国内外の産官学民・メディアによる多くのセッション、展示、高校生の発表等があり、様々な意見交換が行われました。

これまでのメールマガジンで数度にわたってお知らせした主催セッション「インクルージョン×防災:全ての人が自分らしく生きられる世界の実現を目指して」は、3月11日(土)に日英同時通訳、手話通訳、日本語要約筆記を入れて開催し、大ホールとオンライン配信を合わせて200名以上の方にご参加頂きました。東京大学や国連人口基金(UNFPA)駐日事務所とも連携して広報を行い、会場入口ではUNFPAの活動資料、オリジナルグッズも配布しました。

今日はこのセッションの内容のうち、井筒節・東京大学准教授の講演をご紹介したいと思います。セッションの趣旨説明を兼ねて、ディズニーアニメーションのキャラクターから話を始められた井筒先生。耳が他の象よりも大きいとからかわれながらも、それを強みにして活躍していくダンボ、水中の世界ではお姫様だけど生きづらさを感じていて、人間の世界では認めてもらえるのではないかと希望を抱くアリエル、周囲から本ばかり読んでいる変わり者として扱われ、どこか別の世界に行きたいと願う『美女と野獣』のベル、幼い時に両親を亡くし、盗みを働きながら生活する青年・アラジン…。主人公たちは実に多様で、インクルージョンに繋がる作品がたくさんあること、インクルージョンは決して特別なことではなく、私たち一人一人の様々な側面と関連する身近なイシューであることを強調されていたのが印象的でした。そのうえで、インクルージョンを考える際に重要な枠組みとして、日本を含む185か国が批准し法的拘束力をもつ障害者権利条約をご紹介頂きました。

2006年に締結されたこの条約によって、障害の概念は大きく変わったといいます。「障害」とは「不自由な身体」といった医学的なコンディションのことではなく、不自由さを感じさせる社会の側のバリア(障壁)だと規定されたのです。具体的には車椅子ユーザーが段差で移動できないような「環境のバリア」、手話通訳等がないために情報を得られないような「情報のバリア」、盲導犬を連れてレストランに入れないような「制度上のバリア」、先入観や間違った認識で障害者やLGBTIの方等に接する「態度のバリア」があり、これら種々のバリアを平時から無くすことがインクルージョンに繋がり、災害時により多くの命を救うことにも繋がると指摘されました。

では何をしていけばよいのでしょうか。最も簡単なことは計画から事後評価までのPDCAの各プロセスにおいて、より多様な人たちと一緒に考えていくことです。SDGsのGoal-17に当たるパートナーシップや、「Nothing about us without us(私たちのことを私たち抜きで決めないで)」の実践、協働によって新たな気づきが得られ、課題が抽出され、見落としていた重要なニーズが明らかになっていくはずだと述べられました。

協働によって、どのような気づきが得られるのか、次回以降のメールマガジンで各講演者のお話をご紹介しながら、考えたいと思います。

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