資源リサイクル率日本一の町大崎町のゴミリサイクルシステム by 小倉亜紗美(GEN世話人、呉工業高等専門学校准教授)
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15回資源リサイクル率日本一の町、鹿児島県大崎町に行ってきました。ここではゴミは28品目に分別し、ゴミは資源として最大限リサイクルして、どうしてもリサイクルできないものだけ埋立処分場に埋め立てているそうです。ゴミを資源として売却したお金で奨学金制度もできたそうです。
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呉工業高等専門学校の小倉亜紗美です。
今回はゴミについて考えてみたいと思います。
昨年3月に、資源リサイクル率(2022年度実績84.0%)日本一の町、鹿児島県大崎町に行ってきました。
菜の花がきれいに咲いていて、黄色い花と黒い土のコントラストが印象的な町でした。
大崎町は農業が基幹産業の人口12,000人程度の町です。ここでは、ゴミを27品目(2024年度より28品目)に分別していると聞き、月に1回の資源回収の日に合わせて訪ねました。
朝7:00頃に地域のゴミステーション(回収所)に行くと、地域の人が次々にゴミを持って集まってきました。
「資源リサイクル率日本一の町だし、きっとゴミが少ないだろう」と思っていた私は、たくさん運び込まれるゴミを見てびっくりしました。
月に1回の回収なので、1カ月分の缶や瓶などが出てくるので当然なのですが、そのゴミを住民の皆さんがラベル付きのプラスチックの篭に、分別して入れていました。
ゴミは、空き缶、生きビン(リターナブルビン)、茶色ビン、無色透明ビン、ペットボトル、ダンボール、新聞紙・チラシ、雑誌・雑古紙、古着・布類、廃食油など細かく分かれていましたが、ゴミ分別の表を見ても、「可燃ゴミ」の文字が見つかりません。
なぜなら、大崎町にはゴミ焼却施設がないから、ゴミは一切燃やしていないのです。
大崎町では、ゴミは資源として最大限リサイクルして、どうしてもリサイクルできないものだけ埋立処分場に埋め立てているのです。
このような仕組みになったのは、焼却施設は建設費・維持費を払う予算がないため建設できず、埋立処分をしていたが、その処分場の残余年数が逼迫し、新しい処分場を建設しようにも周辺住民の理解が得づらいため、既存の埋立処分場を延命化するしかなくなったためだそうです。
そこで、できるだけ埋め立てるものを減らすために今の分別ルールが出来たそうです。
初めは、「なんでこんな面倒くさいこと……」という声もあったそうですが、この大崎リサイクルシステムによって、一人当たりのゴミ処理費用が全国平均(17,000円/人/年)の約2/3の11,700円/人/年(2021年度実績)と少なく、大崎町全体では約7,000万円/年が福祉・教育等他の分野の予算に使えているそうです。
子供の頃からこのシステムを勉強してきた「ゴミ分別ネイティブ」は既に大人になり、その世代がまた子育てを始めているそうです。他の市町に行った際に紙パックにストローが付いていることや(町内の紙パック飲料にはストローを付けていない)、ゴミを燃やすことに驚いたというエピソードも教えてもらいました。
また、集めたごみのうち約65%(生ごみと草木剪定くず、割り箸)は堆肥化されており、そのたい肥が町民に安く還元され、菜の花を育てて菜種油を作って販売し、廃食油をまた回収してごみ収集車の燃料(BDF)にするという「菜の花プロジェクト」が実施されていました。初めにきれいだと思った菜の花も資源リサイクル率日本一の取り組みによるものだったのです。
その他のゴミは素材別に分けて有料で売却できるものもあり、2021年度は約820万円、分別を始めた1999年以降の合計で約1億6,000万円が町の収入となっているそうです。その一部を活用して2018年度から「リサイクル未来創生奨学ローン」という奨学金制度も始まったそうです。
ゴミを捨てるところがないという消極的な理由から始まった大崎町のリサイクルシステムは、世界中から注目を集めるようになり、インドネシアにもゴミ処理システムが導入されているそうです。
2018年には第2回ジャパンSDGsアワード内閣官房長官賞を受賞するなど、今では世界の最先端を行く町になっています。
2024年の4月にはユニ・チャームがオムツをオムツにリサイクルするシステムの稼働を始め、埋立処分場の1/3を占めていたオムツもリサイクルできるようになったそうです。
高齢化が進む日本では大人用オムツのゴミが増加して、ごみ焼却場の効率が下がっているという話を聞きますが、ここでも世界に先駆けたリサイクルの仕組みが始まりました。
28分別と聞くと大変そうに思うかもしれませんが、スーパーマーケットの食品トレー回収BOXや市役所の電池回収BOXに自分で持って行くために分別していることを考えると、自分も同じくらい家では分別しているし、毎月ゴミステーションまで取りに来てくれるならそっちの方が便利そうという感想を持ちました。
そして、環境に優しい活動をするためには、高尚な目的が必要なわけではなく、現実から目を背けず、実直に対応していくこと、そしてみんなが得をする仕組みを作ることが大切だと思いました。
大崎町の循環型社会「サーキュラーヴィレッジ・大崎町」を体験できる宿泊施設GURURIが出来たそうなので、皆さんもぜひ体験しに行ってみて下さい。
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