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風力発電機の林立にびっくり by 高見邦雄(GEN副代表)

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 中国のエネルギー源といえば石炭、というイメージが日本では強いと思います。でも、ほんとは再生可能エネルギーにも力を入れています。今回は風力発電を取り上げ、最初の緑化協力の現地、山西省大同市を例に紹介したいと思います。
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  ここ3年は中国にいっていませんので、いまもあるか不明ですけど、北京首都空港に「エネルギー革命は大同から」という大きなパネルがありました。中国の検索サイトで「能源革命」「大同」を入れると、大量の記事がヒットします(能源=エネルギー)。どういうことでしょう?

 前世紀に大同は「煤都」(煤=石炭)と呼ばれ、中国一の石炭産地でした。そして大同第二発電所(石炭火力)は数次の拡張をへて372万kWの発電能力をもち、その全量を北京に送り、大同の主要産業でもありました。
その一方で良質炭の埋蔵量減と環境問題に挟み打ちされて、転進を迫られたのが先ほどのスローガンです。
 スローガンだけでなく、実際にも進んでいます。今年の夏、北京の友人、李建華さんが大同を訪れ、実験林場カササギの森とその周辺を撮影した写真を送ってくれました。びっくりしました。道路が拡幅・舗装され、ものすごい数の風力発電機が建ち並んでいます(写真)。


 カササギの森は2001年に着工し、多くのみなさんの支援をえて、600haの敷地の大部分にさまざまな樹種を植えました。GoogleEarthで「雲州区聚楽郷鷹咀東村」を検索してください。そこから谷をはさんで800m西がカササギの森の中心部で、樹木が育っているようすをみていただけます。
 じつはこの場所、風口と呼ばれる風の吹き出し口で、モンゴリマツ(樟子松)は迷いなく伸びるけど、アブラマツ(油松)は風に揺さぶられると枝を横に広げ、なかなか上に伸びません。それをみて私は、ここは木を植えるより風力発電のほうがいいよ、などと愚痴っていました。大同には「一年に一度だけ風が吹く、春に吹き始めて冬まで吹く」という言い回しがあり、しかも西北からの一方向の風で、風力発電にはもってこい。
 そしたらまもなく、隣接の造林地に風速計とデータ送信を備えた鉄塔が建てられました。でも風力発電機の本体はなかなか出てきません。火力発電が主要産業だから簡単にはいかないのかな、と思っていました。

 カササギの森のずっと奥(東北)の稜線に風力発電機が遠望されたのは2013年で、大同-北京の飛行機の窓から30基ほどを数えました。それがずっと手前に迫ってきたのです。大同の友人の目測でタワーの高さが70mから100mもある巨大なもの。GoogleEarthPro(インストール版)で、過去画像をみる上部メニュー(時計と矢印のアイコン)で2021年8月を選び、さきほどの場所のちょっと西をみてください。南北に走る道路に沿って風車が並んでいるのがわかります。(Web版、Android版などでの設定はいまのところ不明)
 なかに寝かされている建設中のものがあり、定規を使ってブレード(羽根)の長さを測ると60mもあります。だとすると、タワーの高さは100mでしょう。人里からは離れているようで、低周波被害などは大きな問題にならないのかも。

 私たちになじみの場所なので取り上げたんですけど、大同市の県と県との境は山が多く、その稜線にはズラーッと風力発電機が並んでいます。新しい協力地の張家口市蔚県でもものすごい数です。
 2020年末の世界の風力発電導入量(陸上+洋上)は743GWで、中国39%、米国17%、ドイツ9%、インド5%、スペイン4%、日本は20位で0.6%。2020年の新規導入量は93GWで、中国56%、米国18%、ブラジル3%、オランダ、ドイツ、ノルウエー、スペイン2%でしたので、ますます中国が突出することでしょう。(風力ビジネスの情報サイトWIND Journalによる)

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