見出し画像

植物を育てる(15)by立花吉茂

森林の多様性
 地球環境を護るために森林が大切なのはだれでも知っていることだが、人類生存のためということになるともうひとつ、資源としての重要性を忘れるわけにはゆかない。シベリヤとカナダには大面積の針葉樹林がある。これは地球の大きな炭素の蓄積場所である。そして現在、材木としての資源でもある。そこには恐竜のいた頃から生き残ってきた耐寒力の強い少数の針葉樹が延々と生い茂っている。その特徴は大々的な面積にきわめて少数の種類があることである。言い換えると多様性の少ない大森林である。これに反してアマゾンなどの熱帯雨林にはきわめて多数の種類の樹木があり、そこに住む動物の種類もけたはずれに多い。そこは多様性がきわめて大きい。
 シベリヤもアマゾンも、アフリカのサバンナなどと異なり、よく鬱閉した立派な森林である。しかし、その多様性となるとまったく異質で、後者には比較にならぬほどの多くの生物種があり、未来の遺伝資源としての重要性をもつ。森林の多様性は、そこにある植物と動物の種類数の豊富さにあるといえよう。それはまた、自然度の高低という表現もできる。自然の豊かさは、面積や量ではなく、種類数であると言える。
 
種の多様性
 豊富な種類数のある森林には、門→綱→目→科→属→種とすべてのグループに多様性があるわけだが、最下単位の種の場合、その多様性は進化論的にきわめて重要である。それは個体間の変異の多様性でもある。海洋で仕切られた列島や群島には島固有の種があったり、種を分けるほどでもない個体変異があったりする。ガラパゴス諸島がその良い例である。
 種の多様性は個体変異から始まるといって良いだろう。個体変異は「枝変り」のような突然変異でも起こるが、子孫を残す過程でまず発生する。種子をつくるための細胞分裂(減数分裂)でまず多様性のある配偶子をつくりだす(図1)。


さらに「受精」によって異質な遺伝子を取り込む。時には雑種もできる。これは大きな変異をもたらす。生物は純粋になることを避けて雑種生になろうと努めているようにみえる。このことが、生物進化の原点になったのである。
(『緑の地球』84号 2002年3月掲載)


この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?