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黄土高原史話 by 谷口義介

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書き手:谷口義介(GEN会員) 研究分野は東アジア古代史・日中比較文化。寄る年波、海外のフィールドはきつくなり、いまは滋賀の田舎町で里山保全の活動。会報に「史話」100回のあと、…
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2024年6月の記事一覧

黄土高原史話<52>北魏の初代道武帝 by 谷口義介

 GEN の黄土高原ツアーで緑化の作業とセットになっているのが、大同雲崗石窟の見学。いかに世界遺産とはいえ、リピーターには「毎度おなじみの」では、いささかもって…。  それはともかく、平城(大同)を北魏の都とした拓跋珪(たくばつけい)道武帝は、歴史に残る名君の一人。ただ彼の行なった大改革は、祖父什翼犍(じゅうよくけん)の施策をモデルに、その方向を徹底したところにあった、かと。  その第一は根拠地づくり。前回述べたごとく、什翼犍は338 年、漢の成楽故城の南8 里に壮大な規模の

黄土高原史話<51>興安嶺からやって来た by 谷口義介

 大同(平城)が最も栄えたのは、北魏(386~534)がここを首都とした約100年間のこと。  しかし、北魏大同は一日にして成らず。退屈でしょうが、今回はその前史ということで。  そもそも北魏とは、いわゆる五胡(ごこ)のうち鮮卑(せんぴ)の拓跋(たくばつ)部が建てた王朝ですが、鮮卑の原郷はモンゴル高原の東を限る大興安嶺(だいこうあんれい)の北部。1980年、内モンゴル自治区オロチョン族自治州の或る洞窟遺跡の調査で確認されました。興安嶺は古く大鮮卑山と呼ばれていたところから、そ

黄土高原史話<50> 旧大同市博物館 by 谷口義介

 毎年春・夏のワーキングツアーでは、だいたい最終日に雲崗石窟に行くのが定番。世界遺産に登録される以前を含め、私も6回ほど見学したことが。今春で17回目参加の石田和久氏、雲崗の方はもうウンザリと、このほど大同市博物館の参観を希望。もともと華厳寺内にあったのだが、市区の再開発にともなって、同寺外側の建物に移転したという次第。ところが今次ツアーは4月上旬に設定のため、清明節(中国の墓参り)と重なって、当日は休館。歴史好きの石田老、さぞガッカリされたことでしょう。  旧博物館の方は、