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黄土高原史話 by 谷口義介

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書き手:谷口義介(GEN会員) 研究分野は東アジア古代史・日中比較文化。寄る年波、海外のフィールドはきつくなり、いまは滋賀の田舎町で里山保全の活動。会報に「史話」100回のあと、…
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2024年1月の記事一覧

黄土高原史話<36>後漢時代の高柳県 by 谷口義介

 今夏予定していたワーキングツアーは、結局実現できず。GENで計画した日程だと、まだ前期末の試験中。自由に設定できる弊学単独のツアーは、04・06両年と実施したものの、今回は学生の応募者が少なく、中止のやむなきに。植林活動のあと、陽高県・天鎮県あたりの遺跡を探訪し、その知見を本稿に生かそうと目論んでいたのだが…。  具体的には、<34>の古城堡漢墓群、<35>の代郡西部都尉の項をうけ、当該の地、つまり高柳県のその後の運命を述べようかと。やむをえず、文献にもとづき、多少推測もま

黄土高原史話<35> 墓主は代郡西部都尉? by 谷口義介

 文学好きの通弊か否かは知らず、若い頃からどうにも制度史が苦手。歴史研究者としてのそんな欠陥を今更ながら実感したのは、本シリーズ〈1〉、特に前回を執筆中。具体的にいうと、前漢時代、平城(今の大同)は雁門郡東部都尉の、高柳県は代郡西部都尉の治所(政庁の所在地)だった、というあたり。そう書きながら、実は「東部都尉」「西部都尉」について、何の知識もあらばこそ。  そこで今回、その筋の専家に教えを乞うた。 〈34〉を同封し、聞いた相手は秦漢時代の郡県制・分封制の権威たる紙屋正和福岡大