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壺を買わせる手口

知人の紹介で、生命保険の勧誘をがっつり受けたときのやり取りが印象的だったのでメモ。

端的に言って、ひたすら脅された。

日本人の平均寿命は右肩上がり、人生100年時代で老後の蓄えがないと悲惨ですよ、日本人の二人に一人はガンになって治療費がうん百万かかりますよ、大怪我して高度機能障害になったときの入院費は一日いくらかかりますよ、そのとき保険がないと、あなたの家族が肩代わりして借金して、あなたの見ていないところで身を粉にして働くはめになるんですよ…。

それは嫌でしょう?

そこで保険です。わずかな掛け金で、あなたに安心をお届けします。

…とまぁ、こんな調子だった。もちろんこんなに直接的には話していなかったけれど、いろんな数字を出して、遠回しに散々不安を煽ってきた。

それを聞いている途中で、あ、これは壺を買わせる霊感商法と同じ手口だな、と思った。霊感商法というのは、あなたに悪霊や祟りが付きまとっていると脅して、壺や掛け軸を売りつける詐欺だ。

もちろん、保険は霊感商法とは違う。基準を満たせばきちんと保険金が支払われるし、まっとうなビジネスモデルだと認識している。

それでも、話の持っていき方という一点で、これは壺を買わせる手口だな、と感じてしまった。まず相手の不安をかき立てて、それから安心(有料)を提供する。それが適正な程度だったらいいけれど、そこは商売だから必要以上の保険を売り込もうとしてくる。

実際、イエスともノーとも言わずに、はぁとかふーんとか言いながら聞いていたら、相手はこちらが興味を示したと誤解したらしく、毎月三万円払う保険のプランを提示してきた。自分は保険の専門家ではないけれど、それが過剰なプランだということくらいは内容を見て分かった。

自分は毎月三万円をぽんと出せるような金持ちではないし、そこまでの必要性があるとも思えなかったし、だいいち相手が信用ならなかったので断った。お互いWin-Winな関係になれる誠実な取引ではなく、とにかく売り込もうという魂胆が透けて見えてしまった。

営業ってのは、客にその商品を買う理由を作ってあげるのが仕事なんだな、と思った。その理由は、ガンでも事故でも、悪霊でも祟りでもなんでもいい。ようは相手に必要性を感じさせることが肝心なんだ。

それにしても、あんなゴリ押しで、保険を買う人がいるんだろうか…。新宿アルタ前でナンパすると数百人に一人は釣れるらしいから、それと同じ、数撃ちゃ当たる理論で特攻してるんだろうか。もう少しスマートなやり方がありそうなものだけれど、あの営業スタイルが実際に存在しているんだから、きっと客の性格とか金銭感覚しだいでは売れるのだろう。

世の中には色んな仕事がある、少なくとも自分はあの営業をやるのは無理だな、と思った。きっと鋼のメンタルと流水のようなトークスキルを持っていないと勤まらないに違いない。

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