合同誌企画「バーティミアス・ファンジン」に参加しました


合同誌企画「バーティミアス・ファンジン」に参加しました。楽しさしかない企画で、企画や参加作品について感想やら何やら書いていきたいと思います。

「バーティミアス・ファンジン」は、10/31に初版が公開されました!

バーティミアスとは

「バーティミアス」は、イギリスの小説家ジョナサン・ストラウドによるファンタジー小説です。翻訳は金原瑞人さん、松山美保さん。世界30カ国以上で翻訳されているベストセラーです。

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舞台は現代のロンドンです。歴史改変ものと言うのでしょうか、イギリスの政治を政治家ではなく、魔術師が牛耳っている、という設定です。魔術師は妖霊を呼び出し、罰と命令を与えて従わせますが、妖霊は常に魔術師の隙をうかがい、寝首をかこうとしています。

主人公は、ベテランの妖霊であるバーティミアスと、彼を召喚した新米魔術師であるナサニエル。この二人も例に漏れず、罰と命令による関係を築くわけですが、戦いに巻き込まれ、力をあわせて共闘する中で、単なる敵対関係ではなくなっていきます。

一癖も二癖もある登場人物たち、主人公二人の一筋縄ではいかない関係性、歴史改変ものの充実したディティール、そして豊富な脚注が魅力で、自分を読書の沼に引きずり込んだ本です。このへんは語り出すと切りがないので、ひとまずこのへんで…。

ファンジン企画!

今年の6月頃、ふっと企画のツイートが流れてきました。

企画書を見ると、バーティミアスのファンが集まり、小説・イラスト・漫画などを投稿しあって同人誌を作る企画とのことでした。バーティミアスの熱狂的なファンである自分としては「参加するしかねぇ」といったテンションで、さっそく参加させてもらいました。

もともと原作者の方がファンの創作活動に好意的で、過去に英語圏のファンたちによって、同様の同人誌が作成・公開されていました。公開されているファンジンをチラ見しましたが、量・質ともに充実していて、英語圏のファンたちの熱量を感じる内容でした。

今回のファンジン企画は、その企画を日本語圏でやろうという試みだそうです。

二次創作小説を書いて参加しました

自分はイラストや漫画は書けないので、二次創作の小説を書くことに。自分が書きたいことと書けることの公約数を考えて、第一部のラストシーンの直後の場面を妄想して書くことにしました。二次創作小説を書くのは初めてだったのですが、なんというか書き手のキャラへの理解と愛がにじみ出ますね、これ。

そもそも小説を書いた経験がほとんどなかったため、クオリティはお察しですが、原作のキャラクターが考えていそうなことをああでもないこうでもないと考える時間は不思議と楽しいものでした。

二次創作小説を書くにあたって、原作を読み返しました。原作愛が高じて、英語圏のバーティミアス・フォーラムを隅々まで見て、その内容を素人翻訳したりしました。

この翻訳や、小説の執筆を通して、また一段と原作への理解と愛が深まった気がします。また、改めて原作を通しで読み直して、子どものころには気づかなかったキャラの葛藤などが見えるようになっていたことも、嬉しい発見でした。

ファンジンに投稿された作品への感想

投稿作品はどれも原作への愛にあふれた面白いものばかりで、非常に楽しく読ませてもらいました。個人的な感想を書いていきます。

・表紙
全投稿作品の一部?をちりばめた表紙になっています。自分が投稿した小説も一部掲載されていて、参加した人間としては非常に嬉しい演出をしていただいた、素晴らしいデザインだなと。

・アラブの白鳥
メイクピースの舞台が来日したらポスターはきっとこんな感じになるでしょうね。原作の描写通りの見目うるわしき敬虔な娘と褐色のジン、再現度高いです。

・魔法のメガネ
拒否反応を起こすナサニエルと、興味しんしんのプトレマイオスの対比に笑いましたw プトレマイオスの時代って、第何の目まで見えるレンズがあったんだろうか…。ナサニエルの時代でも、魔術師は第7の目まで見えるメガネはほとんど使わないことを考えると、魔術師は妖霊の真の姿をほとんど知らないことになりますね。

・魔術師とその弟子
めっちゃ平和でハートフルな世界線が描かれていて、原作のややダークな雰囲気との落差にほっこりしました。とばっちりを受けるバーティミアスがちょっと不憫。プトレマイオスはきっと良い師匠になったでしょうね。あ、でも自分の研究に夢中で、弟子をほったらかす一面もあるかもしれませんw

・妖霊召喚
暗闇の中、ペンタクルの上にまたたく光。妖霊を召喚するときの緊張感が伝わってくるファンアートです。思えば、第一部の始まりもこの風景からでしたね。三部作を通して、召喚シーンはバーティミアスシリーズを象徴する場面です。

・再現料理
この発想めちゃくちゃ好きですw こうして見てみると、作中で出てくる料理はまともなもののほうが少ない。第一部の終盤で例のカナッペが「おもしろい味だな。とても新鮮だ」って評価されるシーンは笑いました。実は重要アイテムだったアルルカンのホットドッグの再現度が高すぎる!全部食べられる材料で作ってあるのもすごいです。

・いつものこと
やっぱりファイキアールは厨房が似合いますね。本当の姿は触手が多すぎて…って原作の脚注を生かした調理シーン。和装のフェイキアールとクィーズルが新鮮です。ジンたちは長いキャリアを持っているので、昔、日本の屋敷でこんなふうに働いていて…なんて想像が膨らませやすいですね。

・ある時代のある魔術師の家
魔術師の家の外観、書斎、ペンタクルのある召喚部屋、あとはフラスコ?でしょうか。たしかに妖霊たちに聞いたのでは、どこまで真実か怪しいでしょうね。vol.5000って、どれだけ長期連載なんでしょうかw

・妖霊が見た世界史
世界史に詳しくないため、100%理解できていないかもしれませんが、世界史に妖霊たちを絡めたサイドストーリー的な内容、楽しく拝見しました。原作にも確か、バーティミアスがチンギス・ハーンの暗殺に加担していた、なんて描写があったりしましたね。

・おもかげ
人使いの荒いナサニエルと、妖霊に惜しみなく自由を与えたプトレマイオス。似ても似つかない二人がかぶって見える瞬間が、まさか来ようとは。死に際して妖霊を解放する二人の最期を思い出して、少し感傷的になりました。

・His Way
マンドレイクの墓を挟んで向かい合うナサニエルとバーティミアス…でしょうか?第三部の終盤で、ナサニエルは権力に堕したマンドレイクの名を捨てて、己の道を決めていましたが、そのあたりをイメージした絵なのかと思います。まったく見当違いだったら申し訳無いです。ナサニエルがバーティミアスになにか思いを伝えているようにも見えますが…。

・プトレマイオスの言葉
プトレマイオスが妖霊たちから得た知識を書き残した著作、それが後世の魔術師たちに影響を与えている。バーティミアスが、かつての主人の言葉を思い出すシーンがじんと来ました。原作さながらの脚注があるのが嬉しいですね。「(★6 ん? やたら脚注の多い本ならよく知ってるって?)」と原作ファンの思いを見透かすような脚注があったり。

・プトレマイオスの門
映画のポスター。「この旅が成功したら、妖霊と人間の新しい時代が来る」…良いキャッチフレーズですね。第三部が映画化されるときは、ぜひキティとバーティミアスの関係性に焦点を当ててほしいものです。それにしても、初めて映画化の話を聞いて、期待に胸を膨らませてからもう10年以上たつのですが…。映画化はよ。

・誓い―紀元前124年―
プトレマイオスが<門>を超えて、異世界に行って戻ってきた後の場面ですね。確かに、バーティミアスは、異世界に長居して現実の肉体が衰えたプトレマイオスに対して、責任を感じていたのかもしれません。二人の、互いに対する敬意がある関係性が素敵です。余談ですが、一緒に収穫祭に行こう、と誘うシーン、まるでデートのお誘いのように見えてしまいました…。

・Bartimaeus!
不敵な笑みを浮かべるバーティミアス、アミュレットを首にかけたキティ、<杖>を持ったナサニエル。三部作を振り返れるオールスターのような最高のイラストです。右手とロウソクだけ参戦してるアルルカンに笑いました。あと、個人的にラッチェンズ先生が入っているのが嬉しいです。

・特集 ファンが語る『バーティミアス』の魅力
正直、この特集が読んでいて一番楽しいまでありますね。赤ん坊インプをガイド役にしたのは名案!「作中で好きなシーン」は読んでいて原作のシーンが目に浮かんできましたし、「バーティミアス好きにおすすめしたい作品」のコーナーには魅力的なファンタジー小説が並んでいて、読みたい本がめちゃくちゃ増えました。

まとめ

全体を見て、プトレマイオスが登場する作品が多かったなと。人気がどうこうではなく、たまたまだと思いますが、キティを描いた小説はひとつもなかったですね。これは自分が書いた小説も含めてですが。

いずれにしても、二次創作に参加する楽しさを知ることができた企画でした。バーティミアスが本当にファンに愛されている物語であること、また自分自身もバーティミアスをこよなく愛する一人であることを再発見した気がします。この企画に参加できて、本当に良かったです。

今回公表されたのは第一陣の作品で、第二陣の方々がどんな作品を作ってくださるか、今から楽しみです。最期になりましたが、参加された方々、また日本のバーティミアスファンに声をかけ、取りまとめをしてくださった主催者のゆうだいさんに心からの感謝を!

最後までお読み頂きありがとうございました!