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第22話 岩井俊二の魔法と、上海映画祭

山田尚子監督と時間をかけて丁寧に作ってきた映画『きみの色』がいよいよ2カ月後、8月30日に公開となる。
先がけて上海映画祭にてアジアプレミアを果たし、アニメーション部門の最優秀作品賞を受賞することができた(めでたい)。

上海映画祭を訪れるのは映画『世界から猫が消えたなら』の中国プレミア以来、8年ぶりだったが、その規模も熱気もさらに増していて中国映画界の勢いを感じた。

受賞以外にも、幸運なことがあった。
映画『空の青さを知る人よ』で仕事をした吉沢亮くんに久しぶりに会えたこと。
そして映画『ラストレター』でご一緒した盟友、岩井俊二監督と期間中に何度も会えたことだ。

初日のパネルディスカッションから始まり、一緒に中華料理を食べたり、受賞後のお祝いに駆けつけてくれたりと、大好きな岩井さんと毎日会っていた。

『Love Letter』『スワロウテイル』『リリイ・シュシュのすべて』『花とアリス』そして最新作『キリエのうた』まで、岩井作品の中国での人気は凄まじく、岩井さんの行くところすべてにサインを求める長蛇の列ができる。

思い返せば、僕とRADWIMPSの野田洋次郎を会わせてくれたのは岩井俊二さんで、それが『君の名は。』に繋がった(ほんとに恩人)。

新海誠や山田尚子など日本のアニメーション映画にも岩井作品は大きな影響を与えていて、それが今の日本アニメのアジア人気の礎になっているようにも思う。

岩井作品には「アジアの感性」を刺激する魔法がある。
アジア人の共感性の秘密を、岩井さんはきっと突き止めている。
いつか「日本の感性」を超えて、アジアそして欧米の感性に到達してみたいと、隣で見ているといつも思う。

岩井さんと夜な夜な話していて、その魔法に触れる瞬間があった。

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