生薬百選 55 梓実(キササゲ)
突然ですが、下の写真のような植物をご存知でしょうか?遠くから見ると少しキリ(桐)に似ていますが、花の色が異なり、秋になると棒状の房が垂れ下がっている点(写真右)で違うということがわかります。これは「キササゲ」という植物です。原産地は中国原南部で温暖な河原や谷筋などを好むとされていますが、ここ極寒の長野県でも河原などに見かけられます。
生薬としては果実(梓実:しじつ)、根皮(梓白皮:しはくひ)が用いられています。生薬名には何れも梓(あずさ)という漢字が使われていますが、これは中国における植物名で、日本で弓の材料として知られている梓(カバノキ科の落葉高木)ではありません。勿論、長野県の「梓川(地名)」や「特急あずさ(電車)」とは何の関係もありません。
公定書「日本薬局方」には、「キササゲ」という名前で「本品はキササゲCatalpa ovata G. Don 又は Catalpa bungei C.A.Meyer (Bignoniaceae)の果実である」という内容で収載されています。上の写真のように、果実は長さ20〜40cm、幅3〜5mmと細長く、中には両端に白い毛を着けた種子が詰まっています。薬理作用としては利尿作用が有名で、主要成分はイリドイド配糖体のカタルポシド(catalposide)等です。また、種子油には大腸癌抑制効果があるとの報告もあります。漢方薬としては使われず、日本で民間薬として単用されてきたそうです。
植物名の由来は「果実がササゲ(写真左下)に似ている木本植物」とのことですが、上に書きましたように中の種子の形は異なります。また、ササゲは食品ですが、キササゲは厚生労働省により出された通知により「専ら医薬品として使用される成分本質(原材料)」とされているため、食用として販売することはできません。ちなみに青い果実をかじってみましたが、苦渋くてとても食べられたものではありませんでした。なお、ササゲはマメ科の植物ですが、キササゲはノウゼンカズラ科(桐と同じ仲間/写真右下)です。
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