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釈放されたばかりのタレントが、ラジオにゲスト出演した場合の台本を書いてみました

【登場人物】
チャリー・ヌスムキー(50)
・・・ラジオパーソナリティー、コラムニスト、随筆家、文筆家、書道家、茶道家、華道家、家具屋

かんた・はしぐち(39)
・・・フリーのタレント。以前は‘はしぐち・かんた‘名義で活動していた。



〇某コミュニティFM局(深夜)

毎週必ず番組冒頭に

「このラジオはフィクションであり、実在の人物・団体・出来事とは一切関係がありません」

が入る(また、CMを挟む度にも入る)

管楽器のみで作られた同ラジオのテーマ曲『和楽器だけのバンドを作りたい!』が流れる。

チャリー「はじまりました!『チャリー・ヌスムキーの自分本位だよ4,50代!』。今日のゲストは、はしぐち・かんたさんです!」

かんた「かんた・はしぐちです。お願いします」

チャリー「あ、かんた・はしぐちさんですね。すみません、改名されたんですね」

かんた「そうなんすよ。芸能活動復帰のタイミングで改名して、苗字と名前、逆にしたんですよね…。なんか分かりずらい改名ですいません…」

チャリー「いえいえ。改めてかんた・はしぐちさんですね!これ、やっぱり事件の影響ですか?」

かんた「まあそうですね。世間の印象もだいぶ悪くなってしまったので、改名してイメージ払拭というか、心機一転と言うか」

チャリー「知らないリスナーもいると思いますので、改めてかんたさん?はしぐちさん? あ、どっちで呼んだ方がいいすかね?」

かんた「じゃあ…はしかんで」

チャリー「はしかんさんですね!了解です!
かんたさんは俳優業をしていた 2014年、当時住んでいた港区のマンションの住人に水曜日がプラスチックごみの収集日なのに、1週間前の木曜日にごみを出していることを注意され、それに逆上し、同マンションの住人18 人に重軽傷を負わせ、逮捕。
その後 2016年釈放され、ラッパー業に転身したが、同年11月『音楽をなめるな』、『即興ラップはちゃんと基礎を学んだうえでやれ』とライブハウスにいたお客に言われたことから逆上。店にいた23人に暴行し逮捕。
そして2019年2月に再び釈放されましたが、その2時間後。
地下鉄の乗り換えが逮捕前より複雑になっていたことから、頭に血が上り、当時乗っていた8号車でしたっけ?8号車にいた乗客全員に暴行をし、逮捕。そして2日前に釈放され、今日に至るんですよね…?」

かんた「そうですね。改めて今のを聞いて、とんでもないことをしてしまったんだなと…すいません」

チャリー「…やはりリスナー、ファンの方も思ってることだと思いますが、今回は大丈夫なんでしょうか?」

かんた「はい。その為に3度の懲役刑を頂いて刑務所にいたわけですし、また刑務所の更生プログラムも年々進歩していて、今回二度と頭に血が上らないプログラムを組んで頂き、取り組みました」

チャーリー「そうなんですね。2回目の釈放後に番組に来て頂いた際、スタッフがオープニングでカーペンターズを流した時に、突然スタッフの小山さんにでしたっけ?」

かんた「…大河内さんです」

チャーリー「ディレクターの大河内さんに掴みかかってしまって…」

かんた「すいません。カーペンターズ聞くと、昔を思い出してしまって、逆に頭に血が上ってしまって…」

チャリー「びっくりしましたよ。穏やかなカントリーソング聞くと、逆に血が上るって、珍しいですよね」

かんた「でもカーペンターズさんを聴いても、頭に血が上らないようなプログラムを看守さんたちが作って下さって、今ではエブリシャラララって口づさんじゃうくらい好きになったので、今回はガンガン流してもらって大丈夫です」

チャリー「あ、よかった!でも今回はMrs. GREEN APPLEを流します」

かんた「え!?…あの、カーペンターズは…?」

チャリー「いや、私たちも流したいのは山々なのですが…」

かんた「だめなんですか…?」

チャリー「勿論私たちはかんたさんの事信じてますよ!ただ一個人の想いだけでは、カーペンターズは流せないというか…。世間の目もありますし…。例えば事件を起こしてしまい、出演を降板して、そのあと黒い関係を断ち切って完全に復帰したとしても、まだ大河ドラマには呼べないですよね?」

かんた「ん、何のことですか?」

チャリー「なにかあったら怖いので、万が一の事を考えて…。今回はMrs. GREEN APPLEを流させてください!」

かんた「…わかりました」

チャリー「…さっそくメール来てるので呼んでいきましょう!
ラジオネーム第三者の目さん!
かんたさんはこれからお掃除タレントで頑張っていくと言ってましたが、お掃除タレントを選んだ理由はなんですか?との事。確かに、俳優、ラッパー、クイズ王と来てなんでまた?」

かんた「やっぱり刑務所生活の時に自分と向き合って、心も身体も整理できたって言うのが大きいですね。整理する事って、どの仕事や環境にいてもすごく大切なことで、それに気づいたというか。
お掃除タレントになったら世間の人に自分のこれまで歩んできた事が、役に立つんじゃないかなと思ったからですかね…」

チャリー「なるほど。その時見つめ直した事で自分の天職というか、やりたいことが明確になったという事なんですね!ちなみにここで紹介できる自宅掃除テクとかあります?」

かんた「すいません。そもそも僕まだ、自分の家を見つけてなくて。今はホテルを転々としていて…。 それに芸能界でしか働いたことないので、家の掃除はしたことなくて…。だからこれから自宅でできる掃除テクは学んでいこうと思ってます…!」

チャリー「ああ…。まあでも、本人がそれを天職と解釈しているなら、是非頑張っていただきたいですね!コーナー行きましょう!
『お悩み解決寺―解消寺!』」

コーナーSE、流れる。  

チャリー「このコーナーはゲストが解消寺の和尚となって、リスナーの悩みを解決するコーナ―です。
かんたさん、お悩み解決の自信どうですか?」

かんた「僕なんかが何を言えるんだという立場ですが、心込めて答えられればと思います」

チャリー「大丈夫です!リスナーもかんたさんの状況を踏まえた上で送って下さってると思うので、真剣にメールなんか送ってないですよ!」

かんた「…そうですよね」

チャリー「…あ、冗談ですよ!真剣に受け止めないでくださいよ!そんな風に受け止めたらこっちが悪いみたいじゃないですか!
メールいきますよ!ラジオネーム・24時間監視中さん。
最近、オラはFXで負けてしまいました。その前から仮想通貨にも手を出していて、わては上場企業やデイトレーダーの方と密に動向は見てきたんですが、世界情勢も数時間で変わる状況なので、先が見えません。
和尚、解決策教えて下さいという煩悩。いかがでしょうか?」

かんた「あ、えっと…。FX…デイトレード?ちょっと、厳しいな…。
すいません。最近のことは分からなくて…」

チャリー「…そうですよね。リスナー考えて送れよ!」

かんた「…すいません」

チャリー「謝んないでください!謝ったら負けですよ!次いきましょう!」

かんた「…はい」

チャリー「和尚だって、解決できる煩悩と、解決できない煩悩がありますからね!」

かんた「…はい」

チャリー「続いてラジオネーム・反省の誠意は永遠の謹慎さん。ラジオネーム、すごいなあ。
あたいはいつも朝、手作りおにぎりを作って仕事へ行くのですが、途中のコンビニで自分で作ったおにぎりとコンビニのおにぎりを店員さんにばれないように交換してしまうというクセがあります。
やめたいとは思っているのですが、もう15年ほど前からやっていて、だけど一度もバレたことがないので、止めることが出来ません。
和尚どうすればよいでしょうか?という煩悩。
かんたさんどうですか?」

かんた「ん?どういうことですか?」

チャリー「自分でおにぎり作ったのに、通勤中にやっぱりコンビニのおにぎり食べたくなっちゃって、でももったいないから、じゃあばれないようにコンビニのおにぎりと自分が作ったおにぎりを交換しちゃうって事ですよね?」

かんた「…え、そんなことあります?ってかこのメール大丈夫ですか!?」

チャリー「あの…。このメールを扱うことに対しての心配じゃなく、どうすれば解決できるかを考えましょうよ。かんたさんの言葉ってリスナーより、ご自身の保身を心配してますよね?」

かんた「いや、まあ…。でもそういう投稿を扱ってしまっては番組自体も…」

チャリー「番組は聴いて下さる方の為にあるものですから」

かんた「はい。…でも15年も続けてて、罪の意識はあるのにしてしまうなら、もう自首するしか方法はないんじゃ…」

チャリー「かんたさんは自首できたんですか?」

かんた「え?」

チャリー「これまでの逮捕、3度とも取り押さえられてですよね?自首できてないですよね?」

かんた「僕は…。はい…」

チャリー「反省の誠意は永遠の謹慎さんも、自首が一番なんてことは分かってると思うんです。
でもそれが出来ないから、こうやってメール送って下さって、かんたさんにすがってるんじゃないですか?」

かんた「…すいません」

チャリー「こんな場で言いたくないですけど、今のかんたさんの状況を踏まえてメール選んだり、キャスティングして呼んでるんですよ。
そこは汲み取りましょうよ。仕事しましょうよ~」

かんた「…一度何かしてしまったら、それを引き合いに出演しなくてはいけないんですかね?」

チャリー「んん?僕、そんな事してます?でも犯した事を全くなかったことにして進行するのも、不自然じゃないですか?」

スタッフら、チャリーの言葉に頷いている。

かんた「それはそうなんですけど、皆さんが電波を使って僕を吊るしあげてるような…」

チャリー「なに言ってるんですか???」

かんた「リスナーさんのメールも、ラジオネームの匿名性を使って、僕を追い込もうとしてる気が…」

チャリー「いやいや!!おにぎりの交換犯罪、今多いですから!令和ですから!」

かんた「番組も僕を『求められてるのはこっちの態度だから』とか、『こういうコメント言え』みたいな印象を操作しようとしてる感じがして…」

チャリー「そんなわけないじゃないですか!〇〇(放送規制音流れる)の番組じゃないんですから!」

かんた「…僕、以前あるインタビューで
『夜にサングラスかける奴、嫌いなんすよ。だって日除けのために使用するモノなのにする必要あります?ただキザな振る舞いしたいだけでしょって思ってたんです。
でも夜にサングラスをする人も、フライトジャケット用のMA-1をおしゃれとして着るのと同じ感覚だし、あと自身のコンプレックスを隠したかったり、事情で隠さなければいけなかったり、ほんと様々な用途があるって事に気づいたんです。MA‐1は女子高生も着てて浸透も人気も出てるのに、夜サングラスはなんでいつでも一律で批判意見出るのかおかしくないですか?
出る杭に見えるからって嫌う僕たちこそ、嫌な奴なのかもしれないです』
って言ったんです。

そしたら後日、あるネット記事の見出しが『かんた、夜にサングラスをかける芸能人とは共演NG!』って書かれてたんです。
そんなこと言ってないし、夜サングラスが嫌いって言ったのも以前の事なのに…。

後日、サングラス好きの芸能人しか出ないドラマの現場に行った時、出演者全員に無視されたんですよ。
それは過去の考えで今は違うんですよ!
だって今、僕が付き合ってる彼女、庶民派アイドルグループのあるメンバーなんですけど、夜のサングラスは勿論、全身ハイブランドで、バッグなんて160万の使ってますからね。バラエティでアイドルはタバコ吸いませんって言ってるくせに、僕とシーシャデートめちゃくちゃしますからね」

チャリー「…大丈夫ですか??」

かんた「まあ僕も一時期、芸能人の結婚報道のネット記事に『誰、こいつ?見たことねえわ』とかのコメント書き込んでたんです。匿名で。ずるいっすよね。
やっと分かりました…。傷付きますよ。
知らないなら、書かなければいいのに。馬鹿っすね。
ってかその人の事、知ってたんですけどね」

チャリー「え、最悪…。というか、かんたさんこそ、そんな事言って大丈夫…」

かんた「お掃除タレントになる前に、まずその夫婦に直接謝らないと」

チャリー「はい??」

かんた「今日はありがとうございました」

かんた、立ち上がる。

チャリー「ん?帰られる?」

かんた「はい」

チャリー「あれれ。まあいいか。あ、ありがとうございました」

かんた「ありがとうございました。がんばります」

チャリー「またいつでも遊びに来てくださいね!」

かんた「あの、こういう時のまた遊びに来てくださいねって本当にいつ来てもいいんですか?」

チャリー「人によりますね。次出ようとした時にそのタレントの旬が過ぎ去ってたら、出れないと思いますよ。個人の考えですが」

かんた、ブースから出ていく。

チャリー「辞めちゃうんですかね?勿体ないですね。皆さん熱いうちに決断をしてはだめですよ!
冷静に、冷静に。冷めてから大事な決断はしましょうね!あ、来週のゲストはママタレントで華麗なる復活を遂げたモンシロチョウさんです!
ここからゲストどんどん豪華になりますからね!楽しみにしてて下さい!
次のコーナーは…」

番組はかんたが最初からいなかったように進んでいく。

おわり

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