問題解決は利他から始まる
問題解決においては「問題を適切に把握する」ことが最も重要
過去に「問題解決で重要なのは解決力ではなく理解力」という記事を書いた。関心があれば詳細はこちらの記事をご覧いただきたいが、ポイントは「問題解決は、そもそも問題の把握がズレていると意味がない」ということだ。いくら一生懸命に解決策を考えても、そもそも解決する対象である問題が間違っていたらゼロバリューである。
この「問題を適切に把握する」ということが、想像以上に難しい。まず、自分自身が直面している問題であっても、適切に言語化して誰かに伝えられる人はかなり少数派だ。多くの人は「何が問題なのかがわかっていないことが問題」という状態である。
私が子供のときに流行っていた松浦亜弥の「桃色の片思い」という曲で、「わかんない事がわかんないくらい好きみたいです」というフレーズがあったが、私達は多くの場合、問題に直面するとまさしく「わかんない事がわかんない」状態にある。
そのうえ、仕事における問題解決では自分だけの問題を扱うことはない。仕事は必ず他の誰かと行うものなので、自分の扱う問題は、他者の問題であり組織の問題であるからだ。自分の直面している問題ですらわからないのに、他者や組織の問題などもっとわからない。問題の適切な把握というのは、本質的に難しさをはらんでいる。
問題を適切に把握するには、「相手のニーズ」を捉えられなければならない
仕事における問題は、他者の問題、組織の問題であった。つまりその把握のためには、他者(組織も他者の集まりである)が何に困っているのか、何を欲しているのかを捉えられる必要がある。言い換えれば、「相手のニーズ」を掴めなければ、問題解決はできない。
相手のニーズを掴むには、自己視点から他者視点に切り替えることが求められる。自分がやりたいこと、自分がやるべきだと思っていることをやっても、相手のニーズを充足するわけではない。自分を括弧に入れて、相手がやるべきだと(深層で)思っていることを掘り起こし、そのニーズを充足するようなことに取り組まないといけない。
これは「利己」から「利他」への切り替えだ。自分が得することではなく、他者が得することをやる。つまり、問題解決は利他から始まる。
さらに問題解決のレイヤーを1つ上げることで、より高度な「利他」を実現する
しかしながら、もっと踏み込むと、「相手のニーズ」を掴んでそれを充足するだけでは、本当の意味で「利他的」であるとは言えない場合がある。なぜなら、「相手のニーズ」という場合、「特定の誰かのニーズ」にフォーカスしてしまっていることが多いからだ。
「特定の誰かのニーズ」だけを満たしてしまうと、それ以外の大勢のニーズが満たされないということはよく発生する。その時には、問題解決のレイヤーを1つ上に持っていく必要がある。つまり、「特定の誰か」ではなく、「その組織のニーズ」を捉えるのだ。
本来は「組織のニーズ」を満たすべきなのに、目の前にいる人のニーズだけを満たそうとしてしまう。これは、一見利他的に見えて実は利己的な振舞いである。相手と自分という閉じた世界で個別最適を考えてしまっているからだ。本当の利他は、問題解決のレイヤーを上げることで初めて姿を現す。もちろん、そのレベルの利他では不十分だとしたら、更にレイヤーを上げていく。
レベルを上げた利他を追求できれば、問題解決によるインパクトも大きくなる。この意味でも、やはり問題解決は利他から始まるのである。