言稿
青い部屋、いかなる切断された瞬間にも青ではない 明と暗、明と暗との交流の、いわばあわいの速度なのだ 天井には半熟の洋梨 レンズ・シャッターの連写によって薄く輪切りにされており 断面から零れる果汁の気体 たちまち空間を充溢し、また霧散する 一連の呼吸はあまりにすばやく ほとんど窒息と区別がつかない 八分の一秒おきのレントゲンは 風船の中身をそのたびごと詳らかにする 印字されることのないカルテ コーヒー・カップの中で溺死した角砂糖の行方 きわめてすみやかに朝たちは滅んでいく
薔薇のオル・ドーヴル また嘔吐する あなたの音がする 海の音がする スモッグに抱かれ 微睡む幼虫 鉄塔に枝垂れ 流れる葡萄酒 ムーンウォーク 重力に逆らい踊るスパンコール どうだったって染みったれて 澱むアンコール あなた、きっとストロボで瞬く幽霊 シャッターを切れば、消える残像だけ エンドロールを吐き戻して、再生 ああ、こんな日々でさえ あのね ライラ ライラ 墜ちて行け あなたの声に再び会えるように そんじゃ ばいばい ばいばい また会いましょう 口付けたグラスの縁
風然の売女、凱歌を歌って 私を通り過ぎていった 悄然の博徒、酔いを引き摺って 今日も良い日になりそうだ 驕慢の愛は凶器を掴んで 私に振り下ろしてきた 茫然の博徒、酔いも冷め切って 今日も良い日になりそうだ 青白く醜い手 そっと私の奥に触れて そうだ、あなたを欺いて 胃と愛を裏返す日まで プレタポルテの群れが吸い込んだ 目眩うばかりの欲望が がなるマイクに高層の電波 (愚かなる売婦に妄想の伝播) 其処退け、凱旋がアンプを抱えて さあ行こうかチャリオット 轍に潰れたパトリ
部屋の隅で壊れた空き缶が喧しい。蓋を開けると隠元豆の匂いがする。爪を整えたボトルがこの中身を血眼になって探しているようだ。その透き通った身体で屈折された太陽が街を埋め尽くしつつある。プリズムという検閲を通過した虹どもの氾濫だ。ここには爪切りがないので擬態することが出来ない。仕方がない。死んだ牛に砂嵐を食ませる。それが世界に発見されないための唯一の方法なのだ。密通するスケープゴート、読後速やかに咀嚼せよ。果たして名を誕り、正しい宛先を避妊する。細断された手紙で爆弾を作る。小さ